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竜の国
巨大な蜘蛛の群(1)
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リーシャとエリアルは採掘場の奥にあるチュリワイトの巣へ向け、これからの行動の打ち合わせをしながら足を進めた。途中、チュリワイトを見かける度、それに向けて炎の魔法を飛ばし、1匹ずつ確実に仕留めていく。水の魔力を持っていない限り、虫の形をした魔物には火の魔法が有効だ。
「ねぇ。こうやって1匹ずつ倒していってるけどさ、これ意味あるの?」
エリアルが小さい声で訊ねてきた。声で感づかれるかもしれないという配慮なのだろうが、近距離ではない限りチュリワイトはさほど音には反応しない。何故かは巣の本体を見ればわかる。
リーシャはいつも通りの声で返した。
「すれ違いざまに襲われるのは避けたいし。この魔物、魔法は使えないけど、体内で作った毒を飛ばしてくるから」
「うえぇぇ……」
「あとは、竜王様の妹さんを連れて逃げる時、邪魔されないためだね」
さらに奥へ進んで行くと、先の方に開けた空間が見えてきた。その場所へ近づくほどにカサカサと、大量の何かが動くような音が聞こえてくる。その音は進むほどに大きさを増していく。リーシャは存在をできるだけ感づかれないために、明かりにしていた火の魔法をフッと消した。
「エリアル。いったんあの陰に隠れるよ」
「うん」
広い空間の入口に辿り着くと、2人は側にあった手押し車の影に隠れ、目をじっと凝らす。巣の本体がどうなっているのかがうっすらと見えてきた。
中心部の巨大な蜘蛛の柱に巨大なアラクネ。これがこの巣のリーダー格だろう。そして残りの5つの柱それぞれに、それよりも小さいアラクネが。
チュリワイトが大きなうごめき音を立てる中、リーシャは細心の注意を払い、小さな声でエリアルに話し掛けた。
「エリアル。さっき話した通り、私がチュリワイトたちの気を引くから、エリアルは急いで妹さんが入った繭のところに行って、助け出して。そうしたら私もすぐそこに向かうから」
「うん」
チュリワイトはエサを蜘蛛の糸でくるんで繭を作り、保存する。暗い中でよく見えないけれど、エリアルの「いっぱいある」の表現からして10や20という数ではないのだろう。リーシャでは1つずつ繭を裂いて中を確認していかなければならないところだけれど、エリアルなら最短時間で竜王の妹を見つけることができる。
リーシャはそのサポートをするため、この場にいる全てのチュリワイトを出会いがしらに一掃する。そういう作戦を事前に立てていた。実際に綺麗に倒すことはできないだろうけれど、かなりの数は減らせるはずだ。
「いくよ」
「うん」
リーシャとエリアルは同時に手押し車の影から飛び出した。
「ねぇ。こうやって1匹ずつ倒していってるけどさ、これ意味あるの?」
エリアルが小さい声で訊ねてきた。声で感づかれるかもしれないという配慮なのだろうが、近距離ではない限りチュリワイトはさほど音には反応しない。何故かは巣の本体を見ればわかる。
リーシャはいつも通りの声で返した。
「すれ違いざまに襲われるのは避けたいし。この魔物、魔法は使えないけど、体内で作った毒を飛ばしてくるから」
「うえぇぇ……」
「あとは、竜王様の妹さんを連れて逃げる時、邪魔されないためだね」
さらに奥へ進んで行くと、先の方に開けた空間が見えてきた。その場所へ近づくほどにカサカサと、大量の何かが動くような音が聞こえてくる。その音は進むほどに大きさを増していく。リーシャは存在をできるだけ感づかれないために、明かりにしていた火の魔法をフッと消した。
「エリアル。いったんあの陰に隠れるよ」
「うん」
広い空間の入口に辿り着くと、2人は側にあった手押し車の影に隠れ、目をじっと凝らす。巣の本体がどうなっているのかがうっすらと見えてきた。
中心部の巨大な蜘蛛の柱に巨大なアラクネ。これがこの巣のリーダー格だろう。そして残りの5つの柱それぞれに、それよりも小さいアラクネが。
チュリワイトが大きなうごめき音を立てる中、リーシャは細心の注意を払い、小さな声でエリアルに話し掛けた。
「エリアル。さっき話した通り、私がチュリワイトたちの気を引くから、エリアルは急いで妹さんが入った繭のところに行って、助け出して。そうしたら私もすぐそこに向かうから」
「うん」
チュリワイトはエサを蜘蛛の糸でくるんで繭を作り、保存する。暗い中でよく見えないけれど、エリアルの「いっぱいある」の表現からして10や20という数ではないのだろう。リーシャでは1つずつ繭を裂いて中を確認していかなければならないところだけれど、エリアルなら最短時間で竜王の妹を見つけることができる。
リーシャはそのサポートをするため、この場にいる全てのチュリワイトを出会いがしらに一掃する。そういう作戦を事前に立てていた。実際に綺麗に倒すことはできないだろうけれど、かなりの数は減らせるはずだ。
「いくよ」
「うん」
リーシャとエリアルは同時に手押し車の影から飛び出した。
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