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竜の国
採掘場の奥に(2)
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さらに奥へと進むと、上から垂れ下がる白い糸のようなものが見られるようになった。それは進むにつれ、垂れ下がる糸から見覚えある形に変わっていく。あまり使われない倉庫などの隅でよくみられる形と同じものではあるけれど、桁違いな大きさをしていて、あちらこちらに作られている。
「蜘蛛の巣がすごいね、ここ」
エリアルが周りを見渡しながら言った。
蜘蛛であれ蜘蛛型の魔物であれ、さすがにここまで所狭しと糸を張り巡らせるような種はほとんどいない。群れを成す種だとしても珍しい。
そうなると、あの魔物が巣くっているのかもしれない。
「……もしかしてアラクネ系統の魔物が住み付いてるのかも」
「アラクネ?」
エリアルが首を傾げた。
「蜘蛛と人間の姿を併せ持った魔物の事だよ。蜘蛛型の魔物から稀に生まれる知能が高い変異体なの。あんまり相手したくはないなぁ」
「ねぇさんでも倒すの大変なの?」
「大変ってわけじゃないけど、アラクネのいる群れは規模が大きくて、場合によっては出会い頭にいっぺんに倒さないとたくさん寄って来て面倒くさい事になるから。あと、蜘蛛型の大半はあんまり魔法を使ってこないし、すばしっこいから的にするのも大変なんだよね。早打ちの練習にはなるけど」
「ふーん、そっか」
エリアルはリーシャが嫌がる所以を完全に理解したらしい。
話しながら先へと進んでいると、ちらほらと蜘蛛形の魔物が姿を見せるようになってきた。白い体の蜘蛛で、サイズはリーシャの胴体ほどの大きさがある。
ここまできてようやく、この奥に巣くっている魔物の正体が見えた。
「……はぁ」
「ねぇさん、どうしたの?」
「ここ、チュリワイトっていう蜘蛛型の魔物の巣みたい。私も実際には初めて見るんだけど、キモチワルイくらいの数で群れを作って、大型のアラクネを頂点として複数のアラクネが小型蜘蛛に指示を出してるから統率力が高いの。他の蜘蛛の群れとは比べ物にならないくらい」
「それじゃあ、2人だけは危険かな? 引き返す?」
「そうだなぁ……」
リーシャはじっと足元の跡を見つめた。
この跡はおそらくチュリワイトたちが獲物を捕まえ、巣へ持ち帰る時に引きずった跡なのだろう。
かなり大きな生き物を引きずった跡だ。そして、最近できたように新しい跡。妹竜が捕らわれた可能性はとても高い。
かといって無策で巣へ飛び込むのは自殺行為。戦闘にならずに済むのならその選択肢を選びたい。
そのためにはこの道の先の状況を知る必要がある。
「……エリアル」
「なぁに?」
「エリアルは魔法を使ってない状態でも、その人が持ってる魔力は見える?」
「うん、近い人のは見えるよ。見ようと思えばだけど」
「じゃあ、ここからこの奥にいる魔物の魔力が見えたりとかは?」
「やってみる」
エリアルの瞳が縦に鋭い竜の瞳に変わった。その瞳でじっと奥を見つめる。
上手く魔力を捉えられないのか、しんとした時間が流れた。
「あっ、見えたよ」
「じゃあ、スコッチさんみたいに、その魔物たちが得意な属性を見分けることは?」
「うーん、たぶん。なんか色が違って見えるから、それが属性なのかも」
「……羨ましい能力だね」
「えへへ。ねぇさんに羨ましがられるの、なんか照れちゃうな」
エリアルは恥ずかしそうに頭を手でこすった。
ここからこの先にいる魔物が持つ魔力を見ることができるのなら、戦闘無しで妹竜が捕らわれているか確認できる。いなければこのまま撤退すればいいし、いるようならばチュリワイトの様子を窺って作戦を練ればいい。
「蜘蛛の巣がすごいね、ここ」
エリアルが周りを見渡しながら言った。
蜘蛛であれ蜘蛛型の魔物であれ、さすがにここまで所狭しと糸を張り巡らせるような種はほとんどいない。群れを成す種だとしても珍しい。
そうなると、あの魔物が巣くっているのかもしれない。
「……もしかしてアラクネ系統の魔物が住み付いてるのかも」
「アラクネ?」
エリアルが首を傾げた。
「蜘蛛と人間の姿を併せ持った魔物の事だよ。蜘蛛型の魔物から稀に生まれる知能が高い変異体なの。あんまり相手したくはないなぁ」
「ねぇさんでも倒すの大変なの?」
「大変ってわけじゃないけど、アラクネのいる群れは規模が大きくて、場合によっては出会い頭にいっぺんに倒さないとたくさん寄って来て面倒くさい事になるから。あと、蜘蛛型の大半はあんまり魔法を使ってこないし、すばしっこいから的にするのも大変なんだよね。早打ちの練習にはなるけど」
「ふーん、そっか」
エリアルはリーシャが嫌がる所以を完全に理解したらしい。
話しながら先へと進んでいると、ちらほらと蜘蛛形の魔物が姿を見せるようになってきた。白い体の蜘蛛で、サイズはリーシャの胴体ほどの大きさがある。
ここまできてようやく、この奥に巣くっている魔物の正体が見えた。
「……はぁ」
「ねぇさん、どうしたの?」
「ここ、チュリワイトっていう蜘蛛型の魔物の巣みたい。私も実際には初めて見るんだけど、キモチワルイくらいの数で群れを作って、大型のアラクネを頂点として複数のアラクネが小型蜘蛛に指示を出してるから統率力が高いの。他の蜘蛛の群れとは比べ物にならないくらい」
「それじゃあ、2人だけは危険かな? 引き返す?」
「そうだなぁ……」
リーシャはじっと足元の跡を見つめた。
この跡はおそらくチュリワイトたちが獲物を捕まえ、巣へ持ち帰る時に引きずった跡なのだろう。
かなり大きな生き物を引きずった跡だ。そして、最近できたように新しい跡。妹竜が捕らわれた可能性はとても高い。
かといって無策で巣へ飛び込むのは自殺行為。戦闘にならずに済むのならその選択肢を選びたい。
そのためにはこの道の先の状況を知る必要がある。
「……エリアル」
「なぁに?」
「エリアルは魔法を使ってない状態でも、その人が持ってる魔力は見える?」
「うん、近い人のは見えるよ。見ようと思えばだけど」
「じゃあ、ここからこの奥にいる魔物の魔力が見えたりとかは?」
「やってみる」
エリアルの瞳が縦に鋭い竜の瞳に変わった。その瞳でじっと奥を見つめる。
上手く魔力を捉えられないのか、しんとした時間が流れた。
「あっ、見えたよ」
「じゃあ、スコッチさんみたいに、その魔物たちが得意な属性を見分けることは?」
「うーん、たぶん。なんか色が違って見えるから、それが属性なのかも」
「……羨ましい能力だね」
「えへへ。ねぇさんに羨ましがられるの、なんか照れちゃうな」
エリアルは恥ずかしそうに頭を手でこすった。
ここからこの先にいる魔物が持つ魔力を見ることができるのなら、戦闘無しで妹竜が捕らわれているか確認できる。いなければこのまま撤退すればいいし、いるようならばチュリワイトの様子を窺って作戦を練ればいい。
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