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竜の国
竜の家族と3兄弟(3)
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「ルシアは?」
「俺はやっぱリーシャが1番だけど、兄貴とエリアルがいない生活は考えられねぇかなぁ。4人でいる時が1番好きだ」
ルシアがニカッと笑うと、突然エリアルがルシアの表情を隠すかのように勢いよく間に入り込んできた。
「僕も僕も! ねぇさんが1番だけど、にぃさんたちの事も大好き! ねぇさんを独り占めしたいって思う事はあるけど、にぃさんたちが悲しいって思う事はしたくないから、ずっとみんなでいるんだ」
3人から愛しむ視線を同時に向けられ、リーシャの心臓は勢いよく熱を全身に巡らせる。同時にむず痒くも感じた。
リーシャは照れ混じりに微笑んだ。
「ありがと」
「えへへ」
エリアルは嬉しそうにはにかむと、リーシャの事をギュッと抱きしめた。体は大きくなり、大人に見せる努力もしてはいるものの、やはりエリアルはエリアルだ。
リーシャがエリアルの背中をポンポンと軽く叩くと、竜王が再び口を開いた。
「まあ、そういう事だよ。ちなみに、私がシャノウに対して積極的にかかわっているのは、親しい友人だから。それでも彼が生きていた頃は何をしようがどこにいようがさほど心配はしていなかったよ。死んだと知った時は多少気が動転したけれど、すぐに受け入れられたし、その後もたまに懐かしむ事がある程度だった。ただね、憎い相手が友だった彼をこんな姿にした上に、しかも無理やり従わせているってわかればさすがに腹立たしく思うよ」
憎い相手の姿を思い起こした竜王の瞳が冷たく凍り付いた。
リーシャに向いた感情ではないとわかってはいても足がすくんでしまう。
「……たぶん竜王様の言った事の意味はわかりました」
「ふふっ。理解が早くて助かるよ。さて、じゃあそろそろ探しに行ってこようかな。たぶん時間を忘れて欲しい物を探しているだけだとは思うけど、万が一という事があるし。それにあの子が死んでしまったら、少々不都合なこともあるからね」
「不都合ですか?」
重い腰を上げた竜王は、身内としての心配もしてないのにいったい何を思って探そうとしているのか。わからないリーシャは思わず聞き返していた。
「うん。私があの子の事を気に掛けているのは、妹だからというより種の存続のためなんだ。あの子が死んでしまうと、この色の竜は途絶えてしまう」
「途絶えるって?」
「竜の能力は母親から受け継ぐ。今この国に残っている白い竜は私と妹だけだから、妹が子を成さずに死んでしまうと私たちと同じ種の竜はもう生まれない。もしかしたら外の世界にいるかもしれないけれど、この色の竜は力と体の弱い者がほとんどだから可能性はかなり低い。ここまで生き続けられている私が例外なんだよ」
安否を心配される理由が、妹竜の身を案じてではなく種の存続のため。こんな関係性では行方不明の妹竜がもし動けないような大怪我を負ってしまっていたら、助けが来るわけはないと早々に生きる事を諦めてしまっているかもしれない。
(そんなの、かわいそうだよ……)
リーシャはある決心をし、竜王の前へ一歩進み出た。
「あの、私も探すのをお手伝いしてもいいですか?」
「いいのかい? 君には全く関係のない子だけど」
「はい。話を聞いてしまった以上、放っておくのは心苦しいので」
「そう。それは助かるよ。けど、もし見つけても近づいてはいけないよ? あの子も人間嫌いだから。すぐに私を呼びに来るんだ。君が怪我をしてしまうかもしれないからね」
「わかりました」
竜王はのそのそとねぐらの外へ向かって歩き始めた。
光の中に立つとリーシャたちの方へ振り向く。
「それじゃあ、よろしく頼むよ」
そう言って飛び立った竜王を、リーシャはノアとエリアルと共にルシアの背に乗って追いかけた。
「俺はやっぱリーシャが1番だけど、兄貴とエリアルがいない生活は考えられねぇかなぁ。4人でいる時が1番好きだ」
ルシアがニカッと笑うと、突然エリアルがルシアの表情を隠すかのように勢いよく間に入り込んできた。
「僕も僕も! ねぇさんが1番だけど、にぃさんたちの事も大好き! ねぇさんを独り占めしたいって思う事はあるけど、にぃさんたちが悲しいって思う事はしたくないから、ずっとみんなでいるんだ」
3人から愛しむ視線を同時に向けられ、リーシャの心臓は勢いよく熱を全身に巡らせる。同時にむず痒くも感じた。
リーシャは照れ混じりに微笑んだ。
「ありがと」
「えへへ」
エリアルは嬉しそうにはにかむと、リーシャの事をギュッと抱きしめた。体は大きくなり、大人に見せる努力もしてはいるものの、やはりエリアルはエリアルだ。
リーシャがエリアルの背中をポンポンと軽く叩くと、竜王が再び口を開いた。
「まあ、そういう事だよ。ちなみに、私がシャノウに対して積極的にかかわっているのは、親しい友人だから。それでも彼が生きていた頃は何をしようがどこにいようがさほど心配はしていなかったよ。死んだと知った時は多少気が動転したけれど、すぐに受け入れられたし、その後もたまに懐かしむ事がある程度だった。ただね、憎い相手が友だった彼をこんな姿にした上に、しかも無理やり従わせているってわかればさすがに腹立たしく思うよ」
憎い相手の姿を思い起こした竜王の瞳が冷たく凍り付いた。
リーシャに向いた感情ではないとわかってはいても足がすくんでしまう。
「……たぶん竜王様の言った事の意味はわかりました」
「ふふっ。理解が早くて助かるよ。さて、じゃあそろそろ探しに行ってこようかな。たぶん時間を忘れて欲しい物を探しているだけだとは思うけど、万が一という事があるし。それにあの子が死んでしまったら、少々不都合なこともあるからね」
「不都合ですか?」
重い腰を上げた竜王は、身内としての心配もしてないのにいったい何を思って探そうとしているのか。わからないリーシャは思わず聞き返していた。
「うん。私があの子の事を気に掛けているのは、妹だからというより種の存続のためなんだ。あの子が死んでしまうと、この色の竜は途絶えてしまう」
「途絶えるって?」
「竜の能力は母親から受け継ぐ。今この国に残っている白い竜は私と妹だけだから、妹が子を成さずに死んでしまうと私たちと同じ種の竜はもう生まれない。もしかしたら外の世界にいるかもしれないけれど、この色の竜は力と体の弱い者がほとんどだから可能性はかなり低い。ここまで生き続けられている私が例外なんだよ」
安否を心配される理由が、妹竜の身を案じてではなく種の存続のため。こんな関係性では行方不明の妹竜がもし動けないような大怪我を負ってしまっていたら、助けが来るわけはないと早々に生きる事を諦めてしまっているかもしれない。
(そんなの、かわいそうだよ……)
リーシャはある決心をし、竜王の前へ一歩進み出た。
「あの、私も探すのをお手伝いしてもいいですか?」
「いいのかい? 君には全く関係のない子だけど」
「はい。話を聞いてしまった以上、放っておくのは心苦しいので」
「そう。それは助かるよ。けど、もし見つけても近づいてはいけないよ? あの子も人間嫌いだから。すぐに私を呼びに来るんだ。君が怪我をしてしまうかもしれないからね」
「わかりました」
竜王はのそのそとねぐらの外へ向かって歩き始めた。
光の中に立つとリーシャたちの方へ振り向く。
「それじゃあ、よろしく頼むよ」
そう言って飛び立った竜王を、リーシャはノアとエリアルと共にルシアの背に乗って追いかけた。
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