309 / 419
竜の国
ひとやすみ(3)
しおりを挟む
「ねー、僕も眠い。にぃちゃん、一緒に寝ていい?」
「んー……いいぞぉ……」
エリアルは焦るリーシャの横に寝転び、すぐに寝息を立て始めた。
(こんな状態で寝られるわけないじゃない!)
エリアルに抱き付き癖がなかったのが幸いだった。
今下手に動くと腕がさらに締まるため、リーシャは甘んじて抱擁を受け入れた。大人しくしていれば抜け出すチャンスは来るはずだ。実際、これまで寝ている隙に抱き付かれても、朝目覚めた時簡単に抜け出すことはできていたのだから。
ルシアが完全に寝入ると案の定、抱きしめている腕の力が緩んだ。リーシャは優しい温もりを背に感じながら、モソモソと脱出を試みた。
緩んだ腕から抜け出すのは簡単だった。リーシャはルシアを起こさないようにそーっと起き上がると、ファイドラスとノアが腰を下ろして話をしている所へと寄って行った。リーシャの足音にノアが振り返る。
「なんだ。結局寝なかったのか」
「あんな状況で寝られるわけないでしょ」
「普段は寝ているだろう」
「あれは……寝た後で抱き付かれてるだけで……」
リーシャが恥ずかしげにぼそぼそ言うとファイドラスが目を丸くした。
「なんだ。やはり陥落したのか」
「陥⁉ いや、あの、その……」
「ははっ。少年の粘り勝ちといったところか」
「もう! からかわないでください!」
リーシャはノアの隣へ腰を下ろし、ノアへと視線を向けた。
「それで? 何の話をしてたの?」
「竜の国とはどういう場所なのか聞いていた」
「それ、私も聞きたい! 噂とか全く聞いたことないんですけど、人間にバレそうになった事とかはないんですか?」
リーシャは好奇心の強い目でファイドラスの事を見た。
「まあ、場所が場所だからな。人間には到底来られないところにあるのさ」
「ここからでもまだ遠いんですよね?」
「そうだな。もう半日もかからないくらいでは到着するだろう」
「遠いんですね」
「気合いを入れて一直線に飛べばたいした時間かかりはしないんだが、人間を連れてではそんな速度は出せないからな」
「竜ってそんなに早いんですか?」
「ああ、早いぞ。ただ滅多にそんな速度は出さないが。人間云々の前に、アレは疲れすぎる。ここから国まででも疲れるほどだ」
「そっか。そんなに……竜の国、いったいどんなところなんだろう……」
リーシャはこの辺りにすら足を延ばした事はない。だからこの先にどんな光景が広がっているのか全く知らない。
人間が行けない場所とはいったいどんなところなのだろう。広い海にぽつんと浮かぶ島なのか、それとも断崖絶壁の崖下なのか。リーシャは想像を膨らませた。
考えている事を無意識にブツブツと口から出していると、ファイドラスはさらにリーシャへ情報を与えた。
「んー……いいぞぉ……」
エリアルは焦るリーシャの横に寝転び、すぐに寝息を立て始めた。
(こんな状態で寝られるわけないじゃない!)
エリアルに抱き付き癖がなかったのが幸いだった。
今下手に動くと腕がさらに締まるため、リーシャは甘んじて抱擁を受け入れた。大人しくしていれば抜け出すチャンスは来るはずだ。実際、これまで寝ている隙に抱き付かれても、朝目覚めた時簡単に抜け出すことはできていたのだから。
ルシアが完全に寝入ると案の定、抱きしめている腕の力が緩んだ。リーシャは優しい温もりを背に感じながら、モソモソと脱出を試みた。
緩んだ腕から抜け出すのは簡単だった。リーシャはルシアを起こさないようにそーっと起き上がると、ファイドラスとノアが腰を下ろして話をしている所へと寄って行った。リーシャの足音にノアが振り返る。
「なんだ。結局寝なかったのか」
「あんな状況で寝られるわけないでしょ」
「普段は寝ているだろう」
「あれは……寝た後で抱き付かれてるだけで……」
リーシャが恥ずかしげにぼそぼそ言うとファイドラスが目を丸くした。
「なんだ。やはり陥落したのか」
「陥⁉ いや、あの、その……」
「ははっ。少年の粘り勝ちといったところか」
「もう! からかわないでください!」
リーシャはノアの隣へ腰を下ろし、ノアへと視線を向けた。
「それで? 何の話をしてたの?」
「竜の国とはどういう場所なのか聞いていた」
「それ、私も聞きたい! 噂とか全く聞いたことないんですけど、人間にバレそうになった事とかはないんですか?」
リーシャは好奇心の強い目でファイドラスの事を見た。
「まあ、場所が場所だからな。人間には到底来られないところにあるのさ」
「ここからでもまだ遠いんですよね?」
「そうだな。もう半日もかからないくらいでは到着するだろう」
「遠いんですね」
「気合いを入れて一直線に飛べばたいした時間かかりはしないんだが、人間を連れてではそんな速度は出せないからな」
「竜ってそんなに早いんですか?」
「ああ、早いぞ。ただ滅多にそんな速度は出さないが。人間云々の前に、アレは疲れすぎる。ここから国まででも疲れるほどだ」
「そっか。そんなに……竜の国、いったいどんなところなんだろう……」
リーシャはこの辺りにすら足を延ばした事はない。だからこの先にどんな光景が広がっているのか全く知らない。
人間が行けない場所とはいったいどんなところなのだろう。広い海にぽつんと浮かぶ島なのか、それとも断崖絶壁の崖下なのか。リーシャは想像を膨らませた。
考えている事を無意識にブツブツと口から出していると、ファイドラスはさらにリーシャへ情報を与えた。
0
お気に入りに追加
215
あなたにおすすめの小説
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる