300 / 419
竜の国
旧友(2)
しおりを挟む
「グァウ……」
「やはりお前か……ひどい姿になったものだな」
ファイドラスの瞳には憐みがありありと浮かんでいた。どうやら彼らは昔馴染みだったようだ。
「なあ、人間のお嬢さん。これはどういうことなのか、説明いただけるかな?」
ファイドラスの瞳の奥に怒りが宿った。その怒りはもしかするとリーシャへと狙いを定めるかもしれない。けれど話さなければそれはそれで彼の怒りを買ってしまう。そんな瞳だ。
「長くなると思いますが、いいですか?」
「かまわない。帰る場所を無くし、行く場所もない私には時間などいくらでもある。そんな事よりも、旧友がなぜこんな姿に成り果てているのかの方が重大な問題だ」
「でしたら私が知っている事、全てお話します。とりあえず、座りませんか?」
「……わかった」
4人と1匹は部屋にL字型で置かれたソファに腰を下ろした。リーシャの両隣りはルシアとエリアルが固める。
全員が座ると、リーシャは順を追ってファイドラスに説明した。
なぜ暗黒竜だったシャノウが死竜の姿になってしまったのか、なぜ指輪から漏れ出す光から姿を現したのか、そしてその事にリーシャの祖先が関わっている事、全てありのままに話した。
ファイドラスは最後まで口を挟まず、耳を傾けていた。けれど話が終わるとおもむろに立ち上がり、リーシャの前まで来ると首を掴んだ。
「リーシャ!」
「ねぇちゃん!」
突然のリーシャの危機にルシアとエリアルが手を出しかけたけれど、リーシャはやめてと手で制止した。2人でかかっても返り討ちにされるだけだ。
ファイドラスの冷たく見下ろす瞳に貫かれ悪寒が走る。
「そういうことか。以前からどこか懐かしい気配がする娘だとは思っていたが、お前の中にコイツと同じ魔力が流れていたからだったとはな」
「うっ……!」
さらに強く絞められ、苦しくて意識が飛びそうになった。ルシアとエリアルはリーシャのファイドラスに飛びかかりたい衝動を必死に抑えているけれど、もはや限界だろう。強い怒りに呼応して、体の所々に竜の鱗が出はじめている。
リーシャの意識が飛ぶ寸前にシャノウの鳴き声が聞こえた。
「グァウ……グルルルルルル……」
「……それもそうか。お前がよいなら私が手を下すのはよしておこう」
手を放され、ようやく空気を取り込めるようになったリーシャは咳き込み、大きく呼吸を繰り返した。
「リーシャ! 大丈夫か? テメェ、リーシャによくも!」
ファイドラスに飛びかかろうとするルシアの袖をリーシャは掴んで制止した。
「や、めて、ルシア」
「けどよ、リーシャがやった事じゃねぇのにこんな仕打ち!」
「私じゃないけど、私の先祖がやったことだもん。シャノウさんの闇の魔力を使えるのも、事実だから」
まだ苦しさが残る中リーシャがそう告げると、ファイドラスはソファへと座り直した。
「やはりお前か……ひどい姿になったものだな」
ファイドラスの瞳には憐みがありありと浮かんでいた。どうやら彼らは昔馴染みだったようだ。
「なあ、人間のお嬢さん。これはどういうことなのか、説明いただけるかな?」
ファイドラスの瞳の奥に怒りが宿った。その怒りはもしかするとリーシャへと狙いを定めるかもしれない。けれど話さなければそれはそれで彼の怒りを買ってしまう。そんな瞳だ。
「長くなると思いますが、いいですか?」
「かまわない。帰る場所を無くし、行く場所もない私には時間などいくらでもある。そんな事よりも、旧友がなぜこんな姿に成り果てているのかの方が重大な問題だ」
「でしたら私が知っている事、全てお話します。とりあえず、座りませんか?」
「……わかった」
4人と1匹は部屋にL字型で置かれたソファに腰を下ろした。リーシャの両隣りはルシアとエリアルが固める。
全員が座ると、リーシャは順を追ってファイドラスに説明した。
なぜ暗黒竜だったシャノウが死竜の姿になってしまったのか、なぜ指輪から漏れ出す光から姿を現したのか、そしてその事にリーシャの祖先が関わっている事、全てありのままに話した。
ファイドラスは最後まで口を挟まず、耳を傾けていた。けれど話が終わるとおもむろに立ち上がり、リーシャの前まで来ると首を掴んだ。
「リーシャ!」
「ねぇちゃん!」
突然のリーシャの危機にルシアとエリアルが手を出しかけたけれど、リーシャはやめてと手で制止した。2人でかかっても返り討ちにされるだけだ。
ファイドラスの冷たく見下ろす瞳に貫かれ悪寒が走る。
「そういうことか。以前からどこか懐かしい気配がする娘だとは思っていたが、お前の中にコイツと同じ魔力が流れていたからだったとはな」
「うっ……!」
さらに強く絞められ、苦しくて意識が飛びそうになった。ルシアとエリアルはリーシャのファイドラスに飛びかかりたい衝動を必死に抑えているけれど、もはや限界だろう。強い怒りに呼応して、体の所々に竜の鱗が出はじめている。
リーシャの意識が飛ぶ寸前にシャノウの鳴き声が聞こえた。
「グァウ……グルルルルルル……」
「……それもそうか。お前がよいなら私が手を下すのはよしておこう」
手を放され、ようやく空気を取り込めるようになったリーシャは咳き込み、大きく呼吸を繰り返した。
「リーシャ! 大丈夫か? テメェ、リーシャによくも!」
ファイドラスに飛びかかろうとするルシアの袖をリーシャは掴んで制止した。
「や、めて、ルシア」
「けどよ、リーシャがやった事じゃねぇのにこんな仕打ち!」
「私じゃないけど、私の先祖がやったことだもん。シャノウさんの闇の魔力を使えるのも、事実だから」
まだ苦しさが残る中リーシャがそう告げると、ファイドラスはソファへと座り直した。
0
お気に入りに追加
214
あなたにおすすめの小説
純潔の寵姫と傀儡の騎士
四葉 翠花
恋愛
侯爵家の養女であるステファニアは、国王の寵愛を一身に受ける第一寵姫でありながら、未だ男を知らない乙女のままだった。
世継ぎの王子を授かれば正妃になれると、他の寵姫たちや養家の思惑が絡み合う中、不能の国王にかわってステファニアの寝台に送り込まれたのは、かつて想いを寄せた初恋の相手だった。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました
平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。
騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。
そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる