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竜の国

旧友(2)

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「グァウ……」
「やはりお前か……ひどい姿になったものだな」

 ファイドラスの瞳には憐みがありありと浮かんでいた。どうやら彼らは昔馴染みだったようだ。

「なあ、人間のお嬢さん。これはどういうことなのか、説明いただけるかな?」

 ファイドラスの瞳の奥に怒りが宿った。その怒りはもしかするとリーシャへと狙いを定めるかもしれない。けれど話さなければそれはそれで彼の怒りを買ってしまう。そんな瞳だ。

「長くなると思いますが、いいですか?」
「かまわない。帰る場所を無くし、行く場所もない私には時間などいくらでもある。そんな事よりも、旧友がなぜこんな姿に成り果てているのかの方が重大な問題だ」
「でしたら私が知っている事、全てお話します。とりあえず、座りませんか?」
「……わかった」

 4人と1匹は部屋にL字型で置かれたソファに腰を下ろした。リーシャの両隣りはルシアとエリアルが固める。
 全員が座ると、リーシャは順を追ってファイドラスに説明した。
 なぜ暗黒竜だったシャノウが死竜の姿になってしまったのか、なぜ指輪から漏れ出す光から姿を現したのか、そしてその事にリーシャの祖先が関わっている事、全てありのままに話した。
 ファイドラスは最後まで口を挟まず、耳を傾けていた。けれど話が終わるとおもむろに立ち上がり、リーシャの前まで来ると首を掴んだ。

「リーシャ!」
「ねぇちゃん!」

 突然のリーシャの危機にルシアとエリアルが手を出しかけたけれど、リーシャはやめてと手で制止した。2人でかかっても返り討ちにされるだけだ。
 ファイドラスの冷たく見下ろす瞳に貫かれ悪寒が走る。

「そういうことか。以前からどこか懐かしい気配がする娘だとは思っていたが、お前の中にコイツと同じ魔力が流れていたからだったとはな」
「うっ……!」

 さらに強く絞められ、苦しくて意識が飛びそうになった。ルシアとエリアルはリーシャのファイドラスに飛びかかりたい衝動を必死に抑えているけれど、もはや限界だろう。強い怒りに呼応して、体の所々に竜の鱗が出はじめている。
 リーシャの意識が飛ぶ寸前にシャノウの鳴き声が聞こえた。

「グァウ……グルルルルルル……」
「……それもそうか。お前がよいなら私が手を下すのはよしておこう」

 手を放され、ようやく空気を取り込めるようになったリーシャは咳き込み、大きく呼吸を繰り返した。

「リーシャ! 大丈夫か? テメェ、リーシャによくも!」

 ファイドラスに飛びかかろうとするルシアの袖をリーシャは掴んで制止した。

「や、めて、ルシア」
「けどよ、リーシャがやった事じゃねぇのにこんな仕打ち!」
「私じゃないけど、私の先祖がやったことだもん。シャノウさんの闇の魔力を使えるのも、事実だから」

 まだ苦しさが残る中リーシャがそう告げると、ファイドラスはソファへと座り直した。
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