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竜の国
竜の帰還(2)
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「無事だったようだな」
「は、はい。あの……ファイさんの方は……」
「私か? 私はピンピンしている。ちなみにこれはただの返り血だ」
「返り血……」
ファイドラスが大怪我を負っていない事は純に良かったと思う。ただそれ以上に、べっとりと纏わりつかせるほどの血を流した竜はどれほどの傷を負ったのかが気になった。
もしかするとその竜は生きていないのかもしれない。思えば火竜は2匹いたはずなのに、飛び去った姿は1匹だけ。可能性としては十分にあり得る。
リーシャは恐る恐るファイドラスに訊ねた。
「ファイさん。こっちは水竜を氷に閉じ込めて、残りの風竜2匹は逃がしたんですけど、ファイさんの方はどうだったんですか? ファイさんが連れて行った竜、1匹しか飛んで行く姿が見えなかったんですけど……2匹、いましたよね?」
「気にくわない方は消した」
「消した?」
「ああ。私から国を奪ったことを多少なりとも後悔していたなら、大怪我くらいで済ませてやろうかとも思ったのだけれど、後悔どころか私を馬鹿にしてきたからな。私は既に国を追われた身だ。同族を傷つけてはならないという掟を守る義理もないので、少しばかり本気を出したら呆気なく死んでしまった」
「そう、ですか……」
自分と同じ竜を殺したというのに、あまりにも何とも思っていないような口ぶりで淡々と話すため、聞いていたリーシャはゾッとした。
執着心は強いけれど、興味が無い者に対する竜の情は薄い。それが浮き彫りになったように感じた。
リーシャが言葉を失っていると、ファイドラスが何か思い出したように口を開いた。
「ああ、そういえば」
「どうしたんですか?」
「たしか人間は殺した魔物の体を持ち帰る習性があるんだったかな? 欲しいならば、アレの死体はくれてやろう。壁の向こうに放っているから、好きにするといい」
「え? えっと……ありがとう、ございます?」
たしかに人間は戦利品として使える部位を持ち帰るけれど、それを習性と言われると微妙な気持ちになる。間違ってはいないのだけれど。
モヤモヤした気分になっていると、シャノウがリーシャに語りかけてきた。
「は、はい。あの……ファイさんの方は……」
「私か? 私はピンピンしている。ちなみにこれはただの返り血だ」
「返り血……」
ファイドラスが大怪我を負っていない事は純に良かったと思う。ただそれ以上に、べっとりと纏わりつかせるほどの血を流した竜はどれほどの傷を負ったのかが気になった。
もしかするとその竜は生きていないのかもしれない。思えば火竜は2匹いたはずなのに、飛び去った姿は1匹だけ。可能性としては十分にあり得る。
リーシャは恐る恐るファイドラスに訊ねた。
「ファイさん。こっちは水竜を氷に閉じ込めて、残りの風竜2匹は逃がしたんですけど、ファイさんの方はどうだったんですか? ファイさんが連れて行った竜、1匹しか飛んで行く姿が見えなかったんですけど……2匹、いましたよね?」
「気にくわない方は消した」
「消した?」
「ああ。私から国を奪ったことを多少なりとも後悔していたなら、大怪我くらいで済ませてやろうかとも思ったのだけれど、後悔どころか私を馬鹿にしてきたからな。私は既に国を追われた身だ。同族を傷つけてはならないという掟を守る義理もないので、少しばかり本気を出したら呆気なく死んでしまった」
「そう、ですか……」
自分と同じ竜を殺したというのに、あまりにも何とも思っていないような口ぶりで淡々と話すため、聞いていたリーシャはゾッとした。
執着心は強いけれど、興味が無い者に対する竜の情は薄い。それが浮き彫りになったように感じた。
リーシャが言葉を失っていると、ファイドラスが何か思い出したように口を開いた。
「ああ、そういえば」
「どうしたんですか?」
「たしか人間は殺した魔物の体を持ち帰る習性があるんだったかな? 欲しいならば、アレの死体はくれてやろう。壁の向こうに放っているから、好きにするといい」
「え? えっと……ありがとう、ございます?」
たしかに人間は戦利品として使える部位を持ち帰るけれど、それを習性と言われると微妙な気持ちになる。間違ってはいないのだけれど。
モヤモヤした気分になっていると、シャノウがリーシャに語りかけてきた。
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