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竜の国
竜の帰還(1)
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ルシアが地面に足をつけると、リーシャはすぐさまその背から飛び降り、スコッチのところへとかけていった。
「スコッチさん!」
水の球の中からスコッチがプチンと顔を出した。
「おつかれ、リーシャちゃん。そんなに急いで、どうかしたのかい?」
「あのね、残りの2匹の竜の結界を解いてほしいの。今すぐ!」
周りがザワリと騒めいた。何を言っているのかよく聞こえないけれど、状況を全く理解できていない彼らは何を言っているのだと思っているに違いない。
スコッチも理解はしていないはずだけれども、たいした問題ではないような口調でリーシャに尋ねた。
「いいよ。けど、大丈夫かい? あの竜たちこっちに向かって、また攻撃を始めてくるんじゃないのかい?」
「ううん。たぶん先に飛んで行った竜を追っていくと思うから大丈夫だと。けど一応、解放する前にこの王都を守るための結界を張ってもらいたいんだけど、いい?」
「わかったよ。それくらいならお安い御用さ」
スコッチはすぐに王都を包み込むような半球の形をした結界を張り、代わりに2匹の竜を包んでいる結界を解いた。
おそらく風竜2匹はこのまま火竜を追って行くはず。そうは思えない騎士たちの動揺の色は濃くなった。
2匹の竜は解放されると王都の方を一睨みし、予想通り先に飛び去った火竜の後を追って去って行った。
「よかった!」
「あっ、ねぇちゃん。火のにぃちゃんがこっちに来るよ」
エリアルが指差す空を見上げると、大きな竜の翼を持つ人影があった。ファイドラスはそのまま立ち去らず、律儀に挨拶でもしに来たのだろうか。
彼が第2の襲来者にならない事を祈るばかりだった。
「リーシャちゃん、アレは通しても大丈夫なのかい?」
ファイドラスの事を知らないスコッチが警戒して尋ねた。
スコッチは魔力を使用していない相手の魔力を感じ取れる能力を持っている。そして警戒心が強い。竜であるファイドラスの魔力の大きさを感じ取り、警戒しないはずがなかった。
目的を果たし終えたファイドラスが王都を襲わないという保証がなかったため、リーシャもはっきりと答える事はできなかった。
「えっと、大丈夫なはず、だと」
「はずかぁ。うーん……わかった。まあ、リーシャちゃんが大丈夫そうって思うなら。じゃあ、彼が通る道を開けるよ」
スコッチはあまり近づけたくはない様子だった。
結界によって違和感があるように見えていた空の一部が鮮明になり、そこからファイドラスは悠々と舞い降りてきた。姿がはっきりするにつれ、ファイドラスの全身に赤い液体が纏わりついているのまでもはっきりと見えてくる。警戒したのか騎士たちの後退る音が聞こえた。
ファイドラスは何食わぬ態度でリーシャの前に降り立った。
「スコッチさん!」
水の球の中からスコッチがプチンと顔を出した。
「おつかれ、リーシャちゃん。そんなに急いで、どうかしたのかい?」
「あのね、残りの2匹の竜の結界を解いてほしいの。今すぐ!」
周りがザワリと騒めいた。何を言っているのかよく聞こえないけれど、状況を全く理解できていない彼らは何を言っているのだと思っているに違いない。
スコッチも理解はしていないはずだけれども、たいした問題ではないような口調でリーシャに尋ねた。
「いいよ。けど、大丈夫かい? あの竜たちこっちに向かって、また攻撃を始めてくるんじゃないのかい?」
「ううん。たぶん先に飛んで行った竜を追っていくと思うから大丈夫だと。けど一応、解放する前にこの王都を守るための結界を張ってもらいたいんだけど、いい?」
「わかったよ。それくらいならお安い御用さ」
スコッチはすぐに王都を包み込むような半球の形をした結界を張り、代わりに2匹の竜を包んでいる結界を解いた。
おそらく風竜2匹はこのまま火竜を追って行くはず。そうは思えない騎士たちの動揺の色は濃くなった。
2匹の竜は解放されると王都の方を一睨みし、予想通り先に飛び去った火竜の後を追って去って行った。
「よかった!」
「あっ、ねぇちゃん。火のにぃちゃんがこっちに来るよ」
エリアルが指差す空を見上げると、大きな竜の翼を持つ人影があった。ファイドラスはそのまま立ち去らず、律儀に挨拶でもしに来たのだろうか。
彼が第2の襲来者にならない事を祈るばかりだった。
「リーシャちゃん、アレは通しても大丈夫なのかい?」
ファイドラスの事を知らないスコッチが警戒して尋ねた。
スコッチは魔力を使用していない相手の魔力を感じ取れる能力を持っている。そして警戒心が強い。竜であるファイドラスの魔力の大きさを感じ取り、警戒しないはずがなかった。
目的を果たし終えたファイドラスが王都を襲わないという保証がなかったため、リーシャもはっきりと答える事はできなかった。
「えっと、大丈夫なはず、だと」
「はずかぁ。うーん……わかった。まあ、リーシャちゃんが大丈夫そうって思うなら。じゃあ、彼が通る道を開けるよ」
スコッチはあまり近づけたくはない様子だった。
結界によって違和感があるように見えていた空の一部が鮮明になり、そこからファイドラスは悠々と舞い降りてきた。姿がはっきりするにつれ、ファイドラスの全身に赤い液体が纏わりついているのまでもはっきりと見えてくる。警戒したのか騎士たちの後退る音が聞こえた。
ファイドラスは何食わぬ態度でリーシャの前に降り立った。
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