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竜の国
囮作戦(3)
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エリアルは人の体に竜の翼を生やした姿のまま、水竜に向けて魔法攻撃を始めた。小さいのが功を奏しているのか、小回りの利くすばしっこいエリアルは難なく水竜の攻撃をかわしている。そしてリーシャの真似をして氷の魔法を放ち続けた。
魔力を数秒かけて手に集めているところから、おそらくかなりの魔力を1回の魔法に注ぎ込んでいる。けれどそれはリーシャの全力の魔法に比べるとまだまだ足元には及ばない。エリアルの氷の魔法は水竜の顔に被弾するも、やはりあまり効果を得られていないようだった。どうやらエリアルは先ほどと同じように竜の目に氷をぶつけようとしているようだ。
リーシャは水竜の周りを飛び回るルシアの背の上で、ここだというタイミングが来るのを、作り出した氷の矢に魔力を込めながら待ち続けた。
(これくらいならいけるかな。これ以上魔力を消費したら風竜たちと戦えなくなっちゃう。けど、これで動きを止められなかったら……やっぱり、仕留める覚悟じゃないとダメなのかな)
不安を抱きながら待っていると、これまでずっとだんまりを決め込んでいたシャノウの声が突然頭の中に響いてきた。
『その程度であの水のガキを本当にどうにかできると思っているのか?』
「! シャノウさん⁉ あっ、いえ、わかりません」
驚き思わず上げたリーシャの声にルシアが反応した。
「何か言ったか?」
「ううん。シャノウさんが話しかけてきただけ。あの、シャノウさん。これであの竜を殺せるとは思ってはないんですけど、動けなくさせる事も無理そうですか?」
その問いに、シャノウは鼻で笑い見下したような声を出した。
『その手を抜いた力でか? 笑わせるな。本気で止めたいというのなら、そうだな。闇を混ぜてみろ。水と風と闇の3つの力。小僧にはできなくとも、貴様ならそれくらいの芸当はできるだろう?』
「出来ますけど……けど、そんなことしたらあの水竜が……それに、闇の魔力を使ったら、私の魔力がなくなって……」
『フン。使わないならそれはそれでいい。出し惜しみをしたところで、あの水のガキをどうにかしない事には次などないのだからな。俺は貴様に手を出さない約束をしただけで、これ以上手を貸してやる義理はない。好きにしろ』
シャノウが同族であるあの水竜を殺させるような助言をするようには思えなかった。きっとそれくらいしなければあの水竜は止められないのだろう。
「……わかりました」
『なに、相手が相手だ。そう簡単には死にはせん』
リーシャは大きく深呼吸すると闇の魔力を氷の矢に注ぎ始めた。矢は段々黒く染まっていき、リーシャの残っていた魔力をどんどん吸い込んでいく。完全に黒く染まりきった頃には、矢は禍々しい冷気のような黒いオーラを纏っていた。
リーシャはどうにか魔力が空になる寸前で魔力の供給を断ち切った。ルシアの上に留まるための魔力と矢を放つための魔力をわずかに残し、体からほぼ全ての魔力を出し切ってしまった。
崩れ落ちそうになるのをぐっとこらえ、リーシャは水竜の方に視線を向けた。
「グアァァアアァァァァ‼」
リーシャが顔を上げた瞬間、ついにエリアルの攻撃が水竜の目に直撃した。痛みで水竜の動きが鈍くなった。目も閉じられているため、狙うのに絶好のタイミングだ。
「行っけぇぇぇぇ‼」
リーシャは残りの魔力を使い、黒い氷の矢を水竜めがけて全力で送り出した。
矢は狙い通り水竜の腹へと刺さり、そこから一気に氷の膜が広がっていく。膜は厚みを増していき、最後には水竜を中に閉じ込めた氷の結晶になった。
氷はそのまま落下していった。けれど、地面に突き刺さるだけで割れる事はなかった。
魔力を数秒かけて手に集めているところから、おそらくかなりの魔力を1回の魔法に注ぎ込んでいる。けれどそれはリーシャの全力の魔法に比べるとまだまだ足元には及ばない。エリアルの氷の魔法は水竜の顔に被弾するも、やはりあまり効果を得られていないようだった。どうやらエリアルは先ほどと同じように竜の目に氷をぶつけようとしているようだ。
リーシャは水竜の周りを飛び回るルシアの背の上で、ここだというタイミングが来るのを、作り出した氷の矢に魔力を込めながら待ち続けた。
(これくらいならいけるかな。これ以上魔力を消費したら風竜たちと戦えなくなっちゃう。けど、これで動きを止められなかったら……やっぱり、仕留める覚悟じゃないとダメなのかな)
不安を抱きながら待っていると、これまでずっとだんまりを決め込んでいたシャノウの声が突然頭の中に響いてきた。
『その程度であの水のガキを本当にどうにかできると思っているのか?』
「! シャノウさん⁉ あっ、いえ、わかりません」
驚き思わず上げたリーシャの声にルシアが反応した。
「何か言ったか?」
「ううん。シャノウさんが話しかけてきただけ。あの、シャノウさん。これであの竜を殺せるとは思ってはないんですけど、動けなくさせる事も無理そうですか?」
その問いに、シャノウは鼻で笑い見下したような声を出した。
『その手を抜いた力でか? 笑わせるな。本気で止めたいというのなら、そうだな。闇を混ぜてみろ。水と風と闇の3つの力。小僧にはできなくとも、貴様ならそれくらいの芸当はできるだろう?』
「出来ますけど……けど、そんなことしたらあの水竜が……それに、闇の魔力を使ったら、私の魔力がなくなって……」
『フン。使わないならそれはそれでいい。出し惜しみをしたところで、あの水のガキをどうにかしない事には次などないのだからな。俺は貴様に手を出さない約束をしただけで、これ以上手を貸してやる義理はない。好きにしろ』
シャノウが同族であるあの水竜を殺させるような助言をするようには思えなかった。きっとそれくらいしなければあの水竜は止められないのだろう。
「……わかりました」
『なに、相手が相手だ。そう簡単には死にはせん』
リーシャは大きく深呼吸すると闇の魔力を氷の矢に注ぎ始めた。矢は段々黒く染まっていき、リーシャの残っていた魔力をどんどん吸い込んでいく。完全に黒く染まりきった頃には、矢は禍々しい冷気のような黒いオーラを纏っていた。
リーシャはどうにか魔力が空になる寸前で魔力の供給を断ち切った。ルシアの上に留まるための魔力と矢を放つための魔力をわずかに残し、体からほぼ全ての魔力を出し切ってしまった。
崩れ落ちそうになるのをぐっとこらえ、リーシャは水竜の方に視線を向けた。
「グアァァアアァァァァ‼」
リーシャが顔を上げた瞬間、ついにエリアルの攻撃が水竜の目に直撃した。痛みで水竜の動きが鈍くなった。目も閉じられているため、狙うのに絶好のタイミングだ。
「行っけぇぇぇぇ‼」
リーシャは残りの魔力を使い、黒い氷の矢を水竜めがけて全力で送り出した。
矢は狙い通り水竜の腹へと刺さり、そこから一気に氷の膜が広がっていく。膜は厚みを増していき、最後には水竜を中に閉じ込めた氷の結晶になった。
氷はそのまま落下していった。けれど、地面に突き刺さるだけで割れる事はなかった。
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