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竜の国
囮作戦(1)
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魔法使いたちが作り出している結界をすり抜け外へ出ると、スコッチは水竜を解き放った。
水竜は人間に王都襲撃を妨害されるとは思っていなかっただろう。リーシャたちが向かってくる姿を捉えると、怒り狂い、迷いなく襲い掛かった。
リーシャは怯まず水竜に向けて魔法を放った。
「氷よ!」
多量の氷の礫が水竜めがけて放たれた。先ほどの戦闘で、風竜にあまりダメージが通っていなかった事を考慮し、リーシャは威力重視で氷を放った。けれどそのせいで礫の数は先ほどよりも少なく、水竜は間を縫うように避け、飛行した。リーシャの攻撃はほとんど当たっていない。
氷の大群を抜けた水竜は水の咆哮をリーシャとルシアに向けて放った。ルシアも動きは負けていない。襲い来る攻撃を易々とかわしている。
そんな2匹と1人の戦闘は時間を追うごとに徐々に激しさを増していった。ルシアの飛行速度は今までに出した事はないくらいに上がっている。
その結果1つ、リーシャの想定外の事が起きてしまった。突然リーシャの攻撃の手が止まった。
「リーシャ、どうしたんだよ! まさか、もう魔力切れか⁉」
「違う。魔力はまだまだ残ってるけど、ルシアたちが早すぎて狙いが定まらないの!」
水竜の動きが速すぎるという事だけでも、姿を捉え、予測して魔法を放つのが難しいというのに、相手からの攻撃をかわすのも、猛スピードで飛び回るルシア任せ。自分の意志が伴わない動きがさらに加わっているせいで余計に狙いが定まらないのだ。
リーシャの周りには行き先の指示を待つ氷の大群がふよふよと浮かんでいた。
「まじか。つっても、これ以上ゆっくりは飛べねぇぞ」
「わかってる。何か方法を考えないと……」
狙いを定めようとするけれど、やはりなかなか水竜の姿は攻撃範囲内に収まらない。
リーシャは真剣な表情で魔法を打つタイミングを探し続けた。がむしゃらに打っても良いのだけれど、水竜の後にどうにかしなければならない竜がまだあと2体も待っている。リーシャとしては無駄に魔力を使い続けるのは避けたかった。
(このまま私が魔力を温存してたらルシアが……いくらルシアが黒竜で身体能力に優れてるからって、こんな激しい動きを続けてたら体力が持たないかもしれない……)
そんな焦りが浮かび始めた時、ようやく標準が合わさる瞬間が訪れた。
リーシャはその瞬間を逃さないよう、水竜に向けて礫たちを放とうとした。けれど氷へと指示がいきわたる前に、視界の端から水竜めがけて飛んで行く何かが見えた。その何かは竜の顔の側面に直撃した。
「グウアァァァァァ‼」
守りの薄い目に直撃し、水竜はたまらず絶叫した。
閉じられた瞼は白くなっていて、そこから湯気のようなものが上がっている。飛ばされた物はおそらく氷。しかもリーシャが使っていた、接触した物を凍結させる氷の魔法だ。
水竜は人間に王都襲撃を妨害されるとは思っていなかっただろう。リーシャたちが向かってくる姿を捉えると、怒り狂い、迷いなく襲い掛かった。
リーシャは怯まず水竜に向けて魔法を放った。
「氷よ!」
多量の氷の礫が水竜めがけて放たれた。先ほどの戦闘で、風竜にあまりダメージが通っていなかった事を考慮し、リーシャは威力重視で氷を放った。けれどそのせいで礫の数は先ほどよりも少なく、水竜は間を縫うように避け、飛行した。リーシャの攻撃はほとんど当たっていない。
氷の大群を抜けた水竜は水の咆哮をリーシャとルシアに向けて放った。ルシアも動きは負けていない。襲い来る攻撃を易々とかわしている。
そんな2匹と1人の戦闘は時間を追うごとに徐々に激しさを増していった。ルシアの飛行速度は今までに出した事はないくらいに上がっている。
その結果1つ、リーシャの想定外の事が起きてしまった。突然リーシャの攻撃の手が止まった。
「リーシャ、どうしたんだよ! まさか、もう魔力切れか⁉」
「違う。魔力はまだまだ残ってるけど、ルシアたちが早すぎて狙いが定まらないの!」
水竜の動きが速すぎるという事だけでも、姿を捉え、予測して魔法を放つのが難しいというのに、相手からの攻撃をかわすのも、猛スピードで飛び回るルシア任せ。自分の意志が伴わない動きがさらに加わっているせいで余計に狙いが定まらないのだ。
リーシャの周りには行き先の指示を待つ氷の大群がふよふよと浮かんでいた。
「まじか。つっても、これ以上ゆっくりは飛べねぇぞ」
「わかってる。何か方法を考えないと……」
狙いを定めようとするけれど、やはりなかなか水竜の姿は攻撃範囲内に収まらない。
リーシャは真剣な表情で魔法を打つタイミングを探し続けた。がむしゃらに打っても良いのだけれど、水竜の後にどうにかしなければならない竜がまだあと2体も待っている。リーシャとしては無駄に魔力を使い続けるのは避けたかった。
(このまま私が魔力を温存してたらルシアが……いくらルシアが黒竜で身体能力に優れてるからって、こんな激しい動きを続けてたら体力が持たないかもしれない……)
そんな焦りが浮かび始めた時、ようやく標準が合わさる瞬間が訪れた。
リーシャはその瞬間を逃さないよう、水竜に向けて礫たちを放とうとした。けれど氷へと指示がいきわたる前に、視界の端から水竜めがけて飛んで行く何かが見えた。その何かは竜の顔の側面に直撃した。
「グウアァァァァァ‼」
守りの薄い目に直撃し、水竜はたまらず絶叫した。
閉じられた瞼は白くなっていて、そこから湯気のようなものが上がっている。飛ばされた物はおそらく氷。しかもリーシャが使っていた、接触した物を凍結させる氷の魔法だ。
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