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竜の国
空中の戦い(1)
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エリアルを見送った丁度その時、ルシアが騎士に連れられてやって来た。
リーシャを見つけると、ルシアは目を見開いた。
「リーシャ!」
「ルシア!」
駆け寄るとリーシャをギュッと腕の中に閉じ込めた。リーシャも反射的にルシアの背に両腕を回した。
これだけ近づいても鉄のような臭いはしてこない。服が砂っぽくなっているだけで、怪我はしてはいないようだ。
「無事でよかった」
リーシャが安堵で微笑む顔を見せると、ルシアも安心したように笑った。
「リーシャこそ。無事に会えてよかった。なあ、兄貴とエリアルは?」
「ノアはまだ森。私はエリアルに抱えてもらって空から帰ってきたから」
「じゃあ、エリアルは?」
「エリアルはスコッチさんのところ。竜の動きを封じられないか相談しに行ってくれてるの」
「そっか、ってことは2人も無事なんだな。ならよかった」
互いに全員の無事に安堵していると、フェンリルが2人の方へ近づいて来た。
「思ったより早かったな。工房まで距離あるし、まだかかると思ってたんだがな」
「ん? ああ。俺もアンタを探して、この辺を走り回ってたんだよ」
「そうか。それなら、さっそくお前もこの戦いに参加してほしいんだが、いいか?」
「最初からそのつもりだったからな。問題ない」
「合流早々わるいな」
「へーきだ。で? 俺は何をしたらいいんだ?」
ルシアが訊ねると、フェンリルはリーシャに視線を向けた。
「どうする? お前が決めてくれ」
普段指揮を執っているのはフェンリルだ。いつもならどう立ち回るかはフェンリルが決めている。
けれど、これからの戦いはリーシャがメインに動くことになる。リーシャの良いように配置してくれという事なのだろう。
「じゃあルシア、背中貸してくれる?」
「背中? 背中貸すって?」
「竜に戻って、私を背中に乗せて。そしてあの竜たちの周りを飛んでほしいの」
「竜の周りって……何言ってんだよ! 3体もいんだぞ、危ないだろ! そんなところに、リーシャ乗せて行けるかよ!」
ルシアならそう言うだろうとわかっていた。けれど自分の安全のために王都を見捨てるような事などできないリーシャは、焦るルシアに詰め寄った。
「いいから! 今は王都の一大事なんだよ! ギルドのみんなも、騎士団の人も頑張ってくれてる。私たちもできる事はやらないと!」
「けどさ……」
「ルシア! うだうだ言ってると、ルシアの事嫌いになっちゃうよ!」
「はあっ⁉」
ルシアの表情が強張った。リーシャの言葉に、かなりの衝撃を受けたようだ。
日ごろからいろいろと気に掛けてくれているルシアにとって、かなり酷な選択を突きつけているという事は、リーシャにも自覚はある。けれどこの緊急事態を乗り切る方法が、今はそれしか思いつかなかった。
もしかしたらルシアに嫌われてしまうかもしれない。それはつらいけれど、それでもリーシャは自分を受け入れてくれたシルバーやアメリア、そしてフェンリル、王都の人たちを、その暮らしをどうしても守りたかった。
ルシアは葛藤するような顔をした。けれど、最後には腹をくくってくれたようで、不満そうに頭をガシガシとこすっていた。
「あーもう、わかったよ‼ 竜に戻ればいいんだな‼」
「うん。小回りが利くようにあんまり大きくはならなくていいから」
「わかった」
ルシアはリーシャの指示通り竜の姿になると、乗りやすいように地に伏せた。
「リーシャ」
「ありがと。問題が片付いたら何かお願い聞いてあげるから」
「ほんとか⁉」
「……私の許容範囲内の事なら」
「そういう事なら、やる気が出てきた! 全力でリーシャを守んねぇとな!」
「……現金なんだから」
リーシャはぼそりとそう言い、苦笑した。きっとルシアには聞こえてはいなかっただろう。
リーシャを見つけると、ルシアは目を見開いた。
「リーシャ!」
「ルシア!」
駆け寄るとリーシャをギュッと腕の中に閉じ込めた。リーシャも反射的にルシアの背に両腕を回した。
これだけ近づいても鉄のような臭いはしてこない。服が砂っぽくなっているだけで、怪我はしてはいないようだ。
「無事でよかった」
リーシャが安堵で微笑む顔を見せると、ルシアも安心したように笑った。
「リーシャこそ。無事に会えてよかった。なあ、兄貴とエリアルは?」
「ノアはまだ森。私はエリアルに抱えてもらって空から帰ってきたから」
「じゃあ、エリアルは?」
「エリアルはスコッチさんのところ。竜の動きを封じられないか相談しに行ってくれてるの」
「そっか、ってことは2人も無事なんだな。ならよかった」
互いに全員の無事に安堵していると、フェンリルが2人の方へ近づいて来た。
「思ったより早かったな。工房まで距離あるし、まだかかると思ってたんだがな」
「ん? ああ。俺もアンタを探して、この辺を走り回ってたんだよ」
「そうか。それなら、さっそくお前もこの戦いに参加してほしいんだが、いいか?」
「最初からそのつもりだったからな。問題ない」
「合流早々わるいな」
「へーきだ。で? 俺は何をしたらいいんだ?」
ルシアが訊ねると、フェンリルはリーシャに視線を向けた。
「どうする? お前が決めてくれ」
普段指揮を執っているのはフェンリルだ。いつもならどう立ち回るかはフェンリルが決めている。
けれど、これからの戦いはリーシャがメインに動くことになる。リーシャの良いように配置してくれという事なのだろう。
「じゃあルシア、背中貸してくれる?」
「背中? 背中貸すって?」
「竜に戻って、私を背中に乗せて。そしてあの竜たちの周りを飛んでほしいの」
「竜の周りって……何言ってんだよ! 3体もいんだぞ、危ないだろ! そんなところに、リーシャ乗せて行けるかよ!」
ルシアならそう言うだろうとわかっていた。けれど自分の安全のために王都を見捨てるような事などできないリーシャは、焦るルシアに詰め寄った。
「いいから! 今は王都の一大事なんだよ! ギルドのみんなも、騎士団の人も頑張ってくれてる。私たちもできる事はやらないと!」
「けどさ……」
「ルシア! うだうだ言ってると、ルシアの事嫌いになっちゃうよ!」
「はあっ⁉」
ルシアの表情が強張った。リーシャの言葉に、かなりの衝撃を受けたようだ。
日ごろからいろいろと気に掛けてくれているルシアにとって、かなり酷な選択を突きつけているという事は、リーシャにも自覚はある。けれどこの緊急事態を乗り切る方法が、今はそれしか思いつかなかった。
もしかしたらルシアに嫌われてしまうかもしれない。それはつらいけれど、それでもリーシャは自分を受け入れてくれたシルバーやアメリア、そしてフェンリル、王都の人たちを、その暮らしをどうしても守りたかった。
ルシアは葛藤するような顔をした。けれど、最後には腹をくくってくれたようで、不満そうに頭をガシガシとこすっていた。
「あーもう、わかったよ‼ 竜に戻ればいいんだな‼」
「うん。小回りが利くようにあんまり大きくはならなくていいから」
「わかった」
ルシアはリーシャの指示通り竜の姿になると、乗りやすいように地に伏せた。
「リーシャ」
「ありがと。問題が片付いたら何かお願い聞いてあげるから」
「ほんとか⁉」
「……私の許容範囲内の事なら」
「そういう事なら、やる気が出てきた! 全力でリーシャを守んねぇとな!」
「……現金なんだから」
リーシャはぼそりとそう言い、苦笑した。きっとルシアには聞こえてはいなかっただろう。
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