276 / 419
ネクロノーム家
後日談(5)
しおりを挟む
「どーした、エリアル。また怖い夢見たのか? 兄ちゃんがぎゅってしてやろうか?」
ルシアは両手を広げて受け入れ態勢で待った。けれど、エリアルは首を全力で横に振った。
「いらない。にぃちゃんにギュッてされると痛いんだもん」
リーシャと再会できた日、力加減を忘れたルシアに抱きしめられたのがよほど苦しかったのだろう。そっぽを向いてしまった。
ルシアは断られると思っていなかったのか、かなり焦っている。
「いや、あの時はさ、感極まってってやつだったから。今ならちゃんと加減できるから。な?」
「ほんと?」
「おう!」
エリアルはルシアのところに行こうか迷い始めたようでソワソワし始めた。本当に仲の良い兄弟だ。良すぎる気もするけれど、執着の強い竜の事。ずっと一緒に育った兄弟とはこんなものなのかもしれない。
「うーん、やっぱり今日はいい。ねぇちゃん見てほっとしたらお腹すいちゃった。ご飯作る」
「……そっか……」
エリアルを安心させようというより、どちらかと言うとエリアルに構いたいという思いが強かったようで、機嫌が直ったエリアルに放置されたルシアはしょぼくれていた。
「グルゥ、グアウ」
エリアルに引き続いてルシアの事も宥めていると、シャノウがリーシャの足を鼻先で突いた。
「どうしたの、シャノウさん?」
シャノウは何も言わず廊下の方を見た。鳴き声では伝わらないと思ったのだろう。視線で伝えようとしているようだけれど、リーシャは視線の意味が読み取れなかった。
首をかしげているとルシアが口を開いた。
「外に出たいからドアを開けろってさ」
するとシャノウの頭蓋骨がコクンと上下に小さく揺れた。
「朝ご飯もうすぐできるのに?」
「好きにさせとけばいいんじゃね? 腹減ったら帰ってくるだろ」
「そうだね」
リーシャが出入り口の方へ行こうとすると、ルシアが軽く肩に手を触れた。
「いいよ。俺が開けてくる。リーシャは座ってろよ」
「あ、うん。ありがとう」
「おっさん、行くぞー」
ルシアの態度が気にくわなかったのか、シャノウはルシアの背中に軽い頭突きをかました。見るからにいたそうだった。
「痛って! 何すんだよ! 俺、何もしてねぇだろ⁉」
「グゥアウグルルルル」
「はぁ? そんなことで頭ついたのかよ! 意味わかんねぇ! そもそも俺らに手を出すなって竜王に言われてんじゃねぇのか、よっ‼」
1人と1匹は喧嘩を初めてしまった。喧嘩と言ってもルシアが仕返しをしようとするけれど、シャノウがヒラリとかわし続けているだけ。傍観していても問題ない程度の喧嘩だった。
それぞれが自由気ままに生活し、時々騒がしい。
そんな日常が戻ってきたと実感したリーシャ顔からは笑みがこぼれ、声を出して笑った。
ルシアは両手を広げて受け入れ態勢で待った。けれど、エリアルは首を全力で横に振った。
「いらない。にぃちゃんにギュッてされると痛いんだもん」
リーシャと再会できた日、力加減を忘れたルシアに抱きしめられたのがよほど苦しかったのだろう。そっぽを向いてしまった。
ルシアは断られると思っていなかったのか、かなり焦っている。
「いや、あの時はさ、感極まってってやつだったから。今ならちゃんと加減できるから。な?」
「ほんと?」
「おう!」
エリアルはルシアのところに行こうか迷い始めたようでソワソワし始めた。本当に仲の良い兄弟だ。良すぎる気もするけれど、執着の強い竜の事。ずっと一緒に育った兄弟とはこんなものなのかもしれない。
「うーん、やっぱり今日はいい。ねぇちゃん見てほっとしたらお腹すいちゃった。ご飯作る」
「……そっか……」
エリアルを安心させようというより、どちらかと言うとエリアルに構いたいという思いが強かったようで、機嫌が直ったエリアルに放置されたルシアはしょぼくれていた。
「グルゥ、グアウ」
エリアルに引き続いてルシアの事も宥めていると、シャノウがリーシャの足を鼻先で突いた。
「どうしたの、シャノウさん?」
シャノウは何も言わず廊下の方を見た。鳴き声では伝わらないと思ったのだろう。視線で伝えようとしているようだけれど、リーシャは視線の意味が読み取れなかった。
首をかしげているとルシアが口を開いた。
「外に出たいからドアを開けろってさ」
するとシャノウの頭蓋骨がコクンと上下に小さく揺れた。
「朝ご飯もうすぐできるのに?」
「好きにさせとけばいいんじゃね? 腹減ったら帰ってくるだろ」
「そうだね」
リーシャが出入り口の方へ行こうとすると、ルシアが軽く肩に手を触れた。
「いいよ。俺が開けてくる。リーシャは座ってろよ」
「あ、うん。ありがとう」
「おっさん、行くぞー」
ルシアの態度が気にくわなかったのか、シャノウはルシアの背中に軽い頭突きをかました。見るからにいたそうだった。
「痛って! 何すんだよ! 俺、何もしてねぇだろ⁉」
「グゥアウグルルルル」
「はぁ? そんなことで頭ついたのかよ! 意味わかんねぇ! そもそも俺らに手を出すなって竜王に言われてんじゃねぇのか、よっ‼」
1人と1匹は喧嘩を初めてしまった。喧嘩と言ってもルシアが仕返しをしようとするけれど、シャノウがヒラリとかわし続けているだけ。傍観していても問題ない程度の喧嘩だった。
それぞれが自由気ままに生活し、時々騒がしい。
そんな日常が戻ってきたと実感したリーシャ顔からは笑みがこぼれ、声を出して笑った。
0
お気に入りに追加
214
あなたにおすすめの小説
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる