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ネクロノーム家

後日談(5)

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「どーした、エリアル。また怖い夢見たのか? 兄ちゃんがぎゅってしてやろうか?」

 ルシアは両手を広げて受け入れ態勢で待った。けれど、エリアルは首を全力で横に振った。

「いらない。にぃちゃんにギュッてされると痛いんだもん」

 リーシャと再会できた日、力加減を忘れたルシアに抱きしめられたのがよほど苦しかったのだろう。そっぽを向いてしまった。
 ルシアは断られると思っていなかったのか、かなり焦っている。

「いや、あの時はさ、感極まってってやつだったから。今ならちゃんと加減できるから。な?」
「ほんと?」
「おう!」

 エリアルはルシアのところに行こうか迷い始めたようでソワソワし始めた。本当に仲の良い兄弟だ。良すぎる気もするけれど、執着の強い竜の事。ずっと一緒に育った兄弟とはこんなものなのかもしれない。

「うーん、やっぱり今日はいい。ねぇちゃん見てほっとしたらお腹すいちゃった。ご飯作る」
「……そっか……」

 エリアルを安心させようというより、どちらかと言うとエリアルに構いたいという思いが強かったようで、機嫌が直ったエリアルに放置されたルシアはしょぼくれていた。

「グルゥ、グアウ」

 エリアルに引き続いてルシアの事も宥めていると、シャノウがリーシャの足を鼻先で突いた。

「どうしたの、シャノウさん?」

 シャノウは何も言わず廊下の方を見た。鳴き声では伝わらないと思ったのだろう。視線で伝えようとしているようだけれど、リーシャは視線の意味が読み取れなかった。
 首をかしげているとルシアが口を開いた。

「外に出たいからドアを開けろってさ」

 するとシャノウの頭蓋骨がコクンと上下に小さく揺れた。

「朝ご飯もうすぐできるのに?」
「好きにさせとけばいいんじゃね? 腹減ったら帰ってくるだろ」
「そうだね」

 リーシャが出入り口の方へ行こうとすると、ルシアが軽く肩に手を触れた。

「いいよ。俺が開けてくる。リーシャは座ってろよ」
「あ、うん。ありがとう」
「おっさん、行くぞー」
 
 ルシアの態度が気にくわなかったのか、シャノウはルシアの背中に軽い頭突きをかました。見るからにいたそうだった。

「痛って! 何すんだよ! 俺、何もしてねぇだろ⁉」
「グゥアウグルルルル」
「はぁ? そんなことで頭ついたのかよ! 意味わかんねぇ! そもそも俺らに手を出すなって竜王に言われてんじゃねぇのか、よっ‼」

 1人と1匹は喧嘩を初めてしまった。喧嘩と言ってもルシアが仕返しをしようとするけれど、シャノウがヒラリとかわし続けているだけ。傍観していても問題ない程度の喧嘩だった。
 それぞれが自由気ままに生活し、時々騒がしい。
 そんな日常が戻ってきたと実感したリーシャ顔からは笑みがこぼれ、声を出して笑った。
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