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ネクロノーム家
夜明けのとき(2)
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「アッハッハッハッハッ‼ 負けるとも思っていませんでしたが、まさかこんな結末になるなんて! いいでしょう。僕の手持ちの魔道具は、これ以外に戦闘向きのものはありません。それに情けをかけられたというのに、このまま物理戦に持ち込むというのも気が引けますし、大人しく負けを認めましょう」
エリアルはキョトンとして首を傾げた。
「情け?」
「魔道具を消し去った先ほどの黒い炎で私を消すこともできたでしょう? けれど君はそうはしなかった。あの魔物たちも一切魔法を使いませんでしたしね」
「だって、にぃちゃん、というか、人間、殺しちゃったら、ねぇちゃんに、嫌われるかも、しれないもん。にぃちゃんの、ためじゃない」
「フフッ。素晴らしいほどの忠誠心ですね」
再びシリウスはエリアルの頬に手を伸ばした。
エリアルはその手を振り払いたいようなのだけれど、魔力を使い切った体は思うように動かないようだ。
「何する、気?」
「火傷を治して差し上げるだけですよ。少し痛みますけど我慢してくださいね」
「うっ……!」
回復の光が舞い始めると、エリアルのひどい火傷がみるみるうちに消えていった。
けれど1番酷かった喉元の火傷は少し跡が残ってしまっていた。エリアルが中途半端に治したことで、上手く魔法が作用しなかったのかもしれない。
エリアルの火傷が治るとシリウスは立ち上がり、リーシャの方を向いた。
「あとは約束ですね。リーシャ。あなたの腕の魔道具を外します」
シリウスはリーシャに近づき手を取ると、片手を拘束具にかざして魔力を送り始めた。すると拘束具はカチャンと音を立ててリーシャの腕から外れ落ちた。
シリウスは拘束具を回収すると、今度はノアに向けて手をかざした。
ノアの周りに白い光が舞い始める。どうやらノアにも回復の魔法をかけているようだ。
リーシャは内心苦々しく思いながらも、ノアのためだと割り切ってシリウスに問いかけた。
「あの。ノアの翼、治せますか?」
「……見た感じでは、僕の持つ魔道具では無理ですね。あなたこそ治せないのですか? もう魔法は使えるでしょう?」
「回復系は……練習はしてるんですけど、そこまでは……」
シリウスはノアの背に生えた翼の残骸をしげしげと眺めた。
しばらくすると難題にぶち当たったかのような表情をした。
「これは回復では無理でしょうね。治癒能力を高めた程度では治りません。治したいのなら再生魔法でないと」
「そんな……」
再生魔法は回復魔法を極めた者が習得するような魔法だ。失った腕すらも元の状態に戻してしまう、究極の回復魔法と言っても過言ではない。
必要魔力量が膨大なのはもちろんの事、魔力刻印も複雑。元々使用できる人間がほとんどいないため、作るのも難しい再生の魔道具はほとんど世に出回っていない。
回復魔法が苦手なリーシャがそんな高度な魔法を扱えるわけがない。
リーシャが絶望に苛まれている間にシリウスはノアのただれた翼の治療を終えていた。飛ぶための形には戻せてはいなかったけれど、残っていた骨格部分からは火傷の跡が消えていた。
「それでは、僕はここで失礼しますよ」
シリウスが魔法を使おうとしている気配をリーシャは感じ取った。転移の魔道具を使い、この場からベルディアの別邸へと戻ろうとしているのだ。
これだけ他人を振り回しておいてこのまま黙って帰すなどできるわけがない。
エリアルはキョトンとして首を傾げた。
「情け?」
「魔道具を消し去った先ほどの黒い炎で私を消すこともできたでしょう? けれど君はそうはしなかった。あの魔物たちも一切魔法を使いませんでしたしね」
「だって、にぃちゃん、というか、人間、殺しちゃったら、ねぇちゃんに、嫌われるかも、しれないもん。にぃちゃんの、ためじゃない」
「フフッ。素晴らしいほどの忠誠心ですね」
再びシリウスはエリアルの頬に手を伸ばした。
エリアルはその手を振り払いたいようなのだけれど、魔力を使い切った体は思うように動かないようだ。
「何する、気?」
「火傷を治して差し上げるだけですよ。少し痛みますけど我慢してくださいね」
「うっ……!」
回復の光が舞い始めると、エリアルのひどい火傷がみるみるうちに消えていった。
けれど1番酷かった喉元の火傷は少し跡が残ってしまっていた。エリアルが中途半端に治したことで、上手く魔法が作用しなかったのかもしれない。
エリアルの火傷が治るとシリウスは立ち上がり、リーシャの方を向いた。
「あとは約束ですね。リーシャ。あなたの腕の魔道具を外します」
シリウスはリーシャに近づき手を取ると、片手を拘束具にかざして魔力を送り始めた。すると拘束具はカチャンと音を立ててリーシャの腕から外れ落ちた。
シリウスは拘束具を回収すると、今度はノアに向けて手をかざした。
ノアの周りに白い光が舞い始める。どうやらノアにも回復の魔法をかけているようだ。
リーシャは内心苦々しく思いながらも、ノアのためだと割り切ってシリウスに問いかけた。
「あの。ノアの翼、治せますか?」
「……見た感じでは、僕の持つ魔道具では無理ですね。あなたこそ治せないのですか? もう魔法は使えるでしょう?」
「回復系は……練習はしてるんですけど、そこまでは……」
シリウスはノアの背に生えた翼の残骸をしげしげと眺めた。
しばらくすると難題にぶち当たったかのような表情をした。
「これは回復では無理でしょうね。治癒能力を高めた程度では治りません。治したいのなら再生魔法でないと」
「そんな……」
再生魔法は回復魔法を極めた者が習得するような魔法だ。失った腕すらも元の状態に戻してしまう、究極の回復魔法と言っても過言ではない。
必要魔力量が膨大なのはもちろんの事、魔力刻印も複雑。元々使用できる人間がほとんどいないため、作るのも難しい再生の魔道具はほとんど世に出回っていない。
回復魔法が苦手なリーシャがそんな高度な魔法を扱えるわけがない。
リーシャが絶望に苛まれている間にシリウスはノアのただれた翼の治療を終えていた。飛ぶための形には戻せてはいなかったけれど、残っていた骨格部分からは火傷の跡が消えていた。
「それでは、僕はここで失礼しますよ」
シリウスが魔法を使おうとしている気配をリーシャは感じ取った。転移の魔道具を使い、この場からベルディアの別邸へと戻ろうとしているのだ。
これだけ他人を振り回しておいてこのまま黙って帰すなどできるわけがない。
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