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ネクロノーム家
迎える者(1)
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空を飛ぶエリアルは、ネクロノームの別邸があるベルディア内では着地せず、どこか別の場所に向かって移動を続けた。リーシャを抱えて飛び続けたことで普段重たいものを抱えて飛ぶことのない体は悲鳴を上げているようで、泣きそうな表情をして飛行している。
リーシャは心配で仕方なかった。純にエリアルがつらそうで心配だという意味もあるけれど、もう1つ、このままでは墜落するのではないかという恐怖による心配があった。腕に着けられた魔道具さえなければと、さらにシリウスの事が憎くなっていく。
「エリアル、無理しないで。地上を歩いて行こう?」
「ダメ! もうちょっとだから! 空を飛んだ方が早く着くし、下は魔物がいっぱいいて危ないから! ねぇちゃん今魔法使えないんでしょ!」
「そうだけど……」
これ以上言ったところで、リーシャに危険が及びそうな選択肢をエリアルが容認する事はないだろう。強制的に下りるように誘導しようにもこの高さだ。下手に動けば、エリアルの手から滑り落ちてしまうかもしれない。
それにあまり無理をしている事を指摘し続けては、自分でやりたがるエリアルのプライドを傷つけてしまいそうだ。きっとここは応援した方がいいのだろう。
リーシャは腕をエリアルの首に回し、ギュッと抱きしめた。
「わかった。じゃあ頑張って、エリアル」
「‼ うん、僕頑張る‼」
エリアルのリーシャを抱える腕に力がこもった。エリアルの顔を見ると嬉しさを噛みしめているような顔をしていて、途端にこれまでよりも速い速度で飛び始めた。
10分程経った頃だろうか。暗い森の中に光る何かが見えた。
「着いた‼」
エリアルの飛ぶ高度を徐々に下げ始めた。おそらくあの光の元に向かっているのだろう。
近づくにつれ、その光が小屋の中から漏れ出す光だとわかった。
エリアルは小屋の上空へ到達すると、側にある開けた地に降下を始めた。
窓が揺れる音でもしたのだろう。小屋の中から4人の人影が現れた。
「リーシャ‼」
1番に駆け出してきたのはルシアだった。
ルシアは2人の元へと駆け寄ると、リーシャとエリアルをまとめて抱きしめた。
「よくやったなエリアル‼ 兄ちゃんはお前ならやれるって信じてたぞ! リーシャも元気そうでよかった!」
ルシアの腕の力が痛いくらいに強くなった。それほどリーシャの事を心配していたのだろう。
それにしても、骨が砕けそうなほどに痛い。さすがは身体能力に長けた黒竜と言ったところだった。同じ黒竜のエリアルも、兄弟一の力を持つルシアの抱きしめる力は耐えられないようだ。
「にっにぃちゃん……ギブ……放して……死ぬ……」
エリアルのとぎれとぎれの声にルシアはバっと手を放した。
「わるい。嬉しすぎて加減が……」
「ほんとに死ぬかと思った……」
「いや、マジですまねぇ」
エリアルはしばらく苦しそうな呼吸を続けていたけれど、絞められた痛みが引いたのか丸くしていた背をぴんと伸ばした。リーシャはそれを見てある事に気がついた。
リーシャは心配で仕方なかった。純にエリアルがつらそうで心配だという意味もあるけれど、もう1つ、このままでは墜落するのではないかという恐怖による心配があった。腕に着けられた魔道具さえなければと、さらにシリウスの事が憎くなっていく。
「エリアル、無理しないで。地上を歩いて行こう?」
「ダメ! もうちょっとだから! 空を飛んだ方が早く着くし、下は魔物がいっぱいいて危ないから! ねぇちゃん今魔法使えないんでしょ!」
「そうだけど……」
これ以上言ったところで、リーシャに危険が及びそうな選択肢をエリアルが容認する事はないだろう。強制的に下りるように誘導しようにもこの高さだ。下手に動けば、エリアルの手から滑り落ちてしまうかもしれない。
それにあまり無理をしている事を指摘し続けては、自分でやりたがるエリアルのプライドを傷つけてしまいそうだ。きっとここは応援した方がいいのだろう。
リーシャは腕をエリアルの首に回し、ギュッと抱きしめた。
「わかった。じゃあ頑張って、エリアル」
「‼ うん、僕頑張る‼」
エリアルのリーシャを抱える腕に力がこもった。エリアルの顔を見ると嬉しさを噛みしめているような顔をしていて、途端にこれまでよりも速い速度で飛び始めた。
10分程経った頃だろうか。暗い森の中に光る何かが見えた。
「着いた‼」
エリアルの飛ぶ高度を徐々に下げ始めた。おそらくあの光の元に向かっているのだろう。
近づくにつれ、その光が小屋の中から漏れ出す光だとわかった。
エリアルは小屋の上空へ到達すると、側にある開けた地に降下を始めた。
窓が揺れる音でもしたのだろう。小屋の中から4人の人影が現れた。
「リーシャ‼」
1番に駆け出してきたのはルシアだった。
ルシアは2人の元へと駆け寄ると、リーシャとエリアルをまとめて抱きしめた。
「よくやったなエリアル‼ 兄ちゃんはお前ならやれるって信じてたぞ! リーシャも元気そうでよかった!」
ルシアの腕の力が痛いくらいに強くなった。それほどリーシャの事を心配していたのだろう。
それにしても、骨が砕けそうなほどに痛い。さすがは身体能力に長けた黒竜と言ったところだった。同じ黒竜のエリアルも、兄弟一の力を持つルシアの抱きしめる力は耐えられないようだ。
「にっにぃちゃん……ギブ……放して……死ぬ……」
エリアルのとぎれとぎれの声にルシアはバっと手を放した。
「わるい。嬉しすぎて加減が……」
「ほんとに死ぬかと思った……」
「いや、マジですまねぇ」
エリアルはしばらく苦しそうな呼吸を続けていたけれど、絞められた痛みが引いたのか丸くしていた背をぴんと伸ばした。リーシャはそれを見てある事に気がついた。
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