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ネクロノーム家
見え始めた可能性(1)
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叫んだ直後、人に聞こえてしまってはまずい内容だったと気がついたリーシャは手で口元を覆った。
今さらこんなことをしても遅いのはわかっている。もし聞いていた人がいるならば、何わけの分からない事を言っているのだと気に留めないでもらえる事を祈るしかない。
竜であるシャノウには人間の事情などどうでもよい事のようで、変わらない様子でリーシャにだけ聞こえる言葉を送り続けた。
『ああ。アイツが得意としているのは光の力だ。だが、貴様たちが考えていたように、アイツの光の力と俺の闇の力に優劣という関係は存在していない。魔力差により光が闇を食うか、闇が光を食うかが決まる』
「そうなんですか。竜王様が光の……だからどの竜とも違う体の色をして……あっ! ってことはスコッチさんが言ってた異質さって……」
ようやくリーシャが竜王に対して抱いていた謎が解けた。あの竜王の珍しい体の色、白い体は光属性の魔力を持っているから。そして以前スコッチが言っていた、カルディスの指輪が池に落ちて来た時に感じた異質な魔力と言うのは、戦場に現れた竜王が放った光の力だったのだろう。
召喚獣にされ意思を奪われたシャノウの存在に気がついた竜王は、このままの姿で生きながらえさせるよりも魔道具ごと消し去った方が良いと判断し、カルディスの指輪とその使用者、そしてその周囲一帯の人間を光の魔法を使って一瞬で消し去った。その様子をスコッチは池の底から感じ取っていたのだ。
改めてそう考えると、穏やかそうに見えても竜王は危険な存在。絶対に敵に回してはならない相手だと再認識させられた。話を聞く限り、リーシャが操れる中で最も強力で凶悪な闇の魔力も、竜王の光の魔力には歯が立たないだろう。
今の竜王は人間の領土に攻め出る気は無いようだけれど、もし事態が一変して竜王が出てくるようなことになれば人間はひとたまりもない。考えただけで背中にぞわぞわとした感覚に襲われる。
リーシャが状況を整理し終えて身震いすると、ハンナが心配そうな表情をした。
「先生、大丈夫ですか?」
「あ、うん、大丈夫だよ」
「でしたら、先ほど言われていた竜王様と言う方についてご説明いただけますか?」
既にかなりの機密事項レベルの情報を教えてしまっている。知りたそうにしているハンナに、わざわざ隠す理由はない。
リーシャは頷いた。
「うん、いいよ。竜王っていうのはその竜が名前を教えてくれなかったからそう呼んでるだけなんだけど、名前の通り竜たちをまとめてる竜の王様。その竜が光の魔法を使えるみたいなの」
「まあ! 先生はそのような竜ともお知り合いなのですね。すごいです!」
「知り合いと言えば知り合いなんだけど、親しくはないからね」
リーシャとノアたちとの関係を良く知るハンナは、どこか知り合いのレベルを高く見積もっているようだった。おそらく友達くらいには思っていそうだ。
マークレンの方はどう捉えているかわからないけれど、光明が見えたようで口元に弧を描いていた。
今さらこんなことをしても遅いのはわかっている。もし聞いていた人がいるならば、何わけの分からない事を言っているのだと気に留めないでもらえる事を祈るしかない。
竜であるシャノウには人間の事情などどうでもよい事のようで、変わらない様子でリーシャにだけ聞こえる言葉を送り続けた。
『ああ。アイツが得意としているのは光の力だ。だが、貴様たちが考えていたように、アイツの光の力と俺の闇の力に優劣という関係は存在していない。魔力差により光が闇を食うか、闇が光を食うかが決まる』
「そうなんですか。竜王様が光の……だからどの竜とも違う体の色をして……あっ! ってことはスコッチさんが言ってた異質さって……」
ようやくリーシャが竜王に対して抱いていた謎が解けた。あの竜王の珍しい体の色、白い体は光属性の魔力を持っているから。そして以前スコッチが言っていた、カルディスの指輪が池に落ちて来た時に感じた異質な魔力と言うのは、戦場に現れた竜王が放った光の力だったのだろう。
召喚獣にされ意思を奪われたシャノウの存在に気がついた竜王は、このままの姿で生きながらえさせるよりも魔道具ごと消し去った方が良いと判断し、カルディスの指輪とその使用者、そしてその周囲一帯の人間を光の魔法を使って一瞬で消し去った。その様子をスコッチは池の底から感じ取っていたのだ。
改めてそう考えると、穏やかそうに見えても竜王は危険な存在。絶対に敵に回してはならない相手だと再認識させられた。話を聞く限り、リーシャが操れる中で最も強力で凶悪な闇の魔力も、竜王の光の魔力には歯が立たないだろう。
今の竜王は人間の領土に攻め出る気は無いようだけれど、もし事態が一変して竜王が出てくるようなことになれば人間はひとたまりもない。考えただけで背中にぞわぞわとした感覚に襲われる。
リーシャが状況を整理し終えて身震いすると、ハンナが心配そうな表情をした。
「先生、大丈夫ですか?」
「あ、うん、大丈夫だよ」
「でしたら、先ほど言われていた竜王様と言う方についてご説明いただけますか?」
既にかなりの機密事項レベルの情報を教えてしまっている。知りたそうにしているハンナに、わざわざ隠す理由はない。
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「うん、いいよ。竜王っていうのはその竜が名前を教えてくれなかったからそう呼んでるだけなんだけど、名前の通り竜たちをまとめてる竜の王様。その竜が光の魔法を使えるみたいなの」
「まあ! 先生はそのような竜ともお知り合いなのですね。すごいです!」
「知り合いと言えば知り合いなんだけど、親しくはないからね」
リーシャとノアたちとの関係を良く知るハンナは、どこか知り合いのレベルを高く見積もっているようだった。おそらく友達くらいには思っていそうだ。
マークレンの方はどう捉えているかわからないけれど、光明が見えたようで口元に弧を描いていた。
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