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ネクロノーム家

光の有無(2)

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「実際にどんな生き物がその魔力を保持しているかがわからないと、何を探して動けばいいのかわからないし、文献があるのが本当に王都の図書館だっていうなら、現状じゃあその生き物について調べられないでしょ? 出会わない事には刻印すら作れない。それなら可能性のある説をより多く立てて、試していった方が有益だと私は思うんだけど、どうだろう」
「たしかに……」

 魔力刻印とは、魔法を発動させようとした時に体内で作られる魔力のイメージを図にした物。過去の優れた魔道具技師たちが実際に魔力を感じ、イメージを模様へと転写したものだ。長年技師をしているとそういう能力が身につくらしい。
 もしシャノウを解放するために光の魔力刻印が必要だというのなら、まずは実際にその属性の魔力を持つモノを探すところから始めなければならない。そしてそのモノによって作られる光の魔力を元に、優れた魔道具技師が新たな刻印を作り出す必要がある。
 リーシャは納得し、肩を落とした。

「そうですね。本当に光の魔力刻印が必要なのかもわかりませんし、今は他を考えた方が良さそう……っ痛!」

 ただ話をしていただけだというのに、突然リーシャは手に針で刺されたような強い痛みを感じ、驚いた。

「先生? 大丈夫ですか?」
「あ、うん。いま一瞬手にピリッとした感覚が……」

 痛みを帯びた箇所に視線を落とした。
 そこはちょうどカルディスの指輪がはめられている指だった。考えられることといえば、魔力を抑制されている状態にもかかわらず、シャノウがリーシャに干渉してきたといったところ。先日の竜の襲撃の際にも、シャノウが指輪内から干渉してきたのではないかと思われる出来事もあった。
 リーシャがじっと指輪を見つめていると、どこからともなく頭に響くような声が聞こえてきた。

『小娘』
「えっ?」

 ハンナもマークレンも誰かに話し掛ける時、小娘などという言葉は使わない。それに直前に走った指の痛みに、あの戦場でも聞いたような聞き覚えのある声。やはりシャノウが干渉してきている。
 リーシャの不審な動きに、ハンナは心配そうな顔をした。

「先生。本当に大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫。ちょっと、今指輪の中にいる竜が話しかけてきたような気がして」
「指輪? そうなのですか? 私には何も聞こえませんでしたけど。マークレン兄様は?」

 マークレンは首を横に振った。

「私も聞こえなかったよ」

 2人に聞こえていないという事はシャノウが魔力を使ってリーシャの脳に直接語りかけてきたという事なのだろう。
 ただ、今のリーシャは魔力を抑制されている。魔力は体内にあるけれど、コントロール不可という状態。その魔力をシャノウが勝手に使えているのかは怪しいところだ。
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