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ネクロノーム家
思いがけない再会(1)
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ネクロノームの別邸に誘拐、軟禁されて1週間。リーシャは書庫に入り浸り読書に明け暮れていた。
調べ物を頼んでいたマークレンからの音沙汰は今のところは無し。転移魔法を使って即本邸に戻るのかと思いきや、マークレンは馬車に揺られ、丸1日かけて戻ったようだ。どうやら転移の魔道具が使えるシリウスもそう頻繁にその魔道具を発動することはできず、本邸に連れ帰ってほしいとは頼めなかったようだ。
手持無沙汰になってしまったリーシャは、書庫に籠って知識を得るくらいしかする事がなかった。
脱出計画のための散策も試みたけれど、屋敷内外ともに警備が厳重で、魔法を使えないリーシャでは警備を潜り抜けるのは不可能だと早々に断念してしまった。
今日もリーシャは、朝から書庫に籠って新たな知識を頭の中へ叩き込んでいた。
「なるほど。それなら魔法で雨を呼べるかも。帰ったら試してみよっかな」
何気なく呟いた“帰る”というワードで、リーシャの脳裏にふとノアたち兄弟の顔が思い浮かんだ。考えると寂しさや不安が沸き上がってくるため、考えないようにしていたというのに。
リーシャは壁の高い位置に作られた窓から見える青空を、切なげに見上げた。
「ノア。ルシア。エリアル……今頃どうしてるんだろ……暴れたりしてないよね?」
リーシャはノアたちの動向が気になり、メリッサに各地で起こっている竜の襲来の情報を集めてほしいと依頼していた。
一番最近だと数日前に風竜が南方の国に現れ、周辺のギルドによって撃退に成功したという情報を手に入れてきてくれた。リーシャが一番気にしていた黒竜の出現情報はなかったらしい。
その話を聞いた時は今のところノアたちが我を忘れて探し回ってはいない事に安心したけれど、この状況が続けば今後どうなるかはわからない。
以前竜王から聞いた話によると、竜という種族は番が死んだら自身も後を追ってしまうほど、執着心の強い生き物という事だ。
リーシャとノアたちの今の関係に、はっきりとした名称はない。けれど彼らの執着は、既に番に向けるものと同じくらい強くなっているはずだ。日頃から「番ってほしい」というくらいなのだから。
故にノアたちの事を思い出す度リーシャは、自分を助け出すために取り返しのつかない事態を引き起こすのではないかと、不安に襲われていた。
コンコンー
リーシャが物思いにふけっていると、書庫の扉が叩かれる音がし、廊下の方からメリッサの声が聞こえてきた。
「リーシャ様。今よろしいですか?」
「はい。大丈夫です」
「失礼いたします。リーシャ様、お客様がお見えです」
リーシャは勢いよく立ち上がった。やっと待ち人が現れたのかと期待で胸を膨らませた。
「マークレン様ですか⁉」
「いえ。マークレン様ではございません」
「そうですか……」
リーシャは来訪者が待ち人ではなかった事に落胆した。
しかし、マークレンではないというのならいったい誰がやってきたのか。
今のリーシャを訪ねてくる人間など、マークレンか会いたくもないシリウスくらいしか思い当たらない。マークレンではないというのなら選択肢はシリウスに絞られる。けれど、彼の場合はわざわざメリッサがここまで案内してくるとも思えない。
リーシャが誰だろうと考えていると、悪戯に拗ねたような口調の声が聞こえてきた。
調べ物を頼んでいたマークレンからの音沙汰は今のところは無し。転移魔法を使って即本邸に戻るのかと思いきや、マークレンは馬車に揺られ、丸1日かけて戻ったようだ。どうやら転移の魔道具が使えるシリウスもそう頻繁にその魔道具を発動することはできず、本邸に連れ帰ってほしいとは頼めなかったようだ。
手持無沙汰になってしまったリーシャは、書庫に籠って知識を得るくらいしかする事がなかった。
脱出計画のための散策も試みたけれど、屋敷内外ともに警備が厳重で、魔法を使えないリーシャでは警備を潜り抜けるのは不可能だと早々に断念してしまった。
今日もリーシャは、朝から書庫に籠って新たな知識を頭の中へ叩き込んでいた。
「なるほど。それなら魔法で雨を呼べるかも。帰ったら試してみよっかな」
何気なく呟いた“帰る”というワードで、リーシャの脳裏にふとノアたち兄弟の顔が思い浮かんだ。考えると寂しさや不安が沸き上がってくるため、考えないようにしていたというのに。
リーシャは壁の高い位置に作られた窓から見える青空を、切なげに見上げた。
「ノア。ルシア。エリアル……今頃どうしてるんだろ……暴れたりしてないよね?」
リーシャはノアたちの動向が気になり、メリッサに各地で起こっている竜の襲来の情報を集めてほしいと依頼していた。
一番最近だと数日前に風竜が南方の国に現れ、周辺のギルドによって撃退に成功したという情報を手に入れてきてくれた。リーシャが一番気にしていた黒竜の出現情報はなかったらしい。
その話を聞いた時は今のところノアたちが我を忘れて探し回ってはいない事に安心したけれど、この状況が続けば今後どうなるかはわからない。
以前竜王から聞いた話によると、竜という種族は番が死んだら自身も後を追ってしまうほど、執着心の強い生き物という事だ。
リーシャとノアたちの今の関係に、はっきりとした名称はない。けれど彼らの執着は、既に番に向けるものと同じくらい強くなっているはずだ。日頃から「番ってほしい」というくらいなのだから。
故にノアたちの事を思い出す度リーシャは、自分を助け出すために取り返しのつかない事態を引き起こすのではないかと、不安に襲われていた。
コンコンー
リーシャが物思いにふけっていると、書庫の扉が叩かれる音がし、廊下の方からメリッサの声が聞こえてきた。
「リーシャ様。今よろしいですか?」
「はい。大丈夫です」
「失礼いたします。リーシャ様、お客様がお見えです」
リーシャは勢いよく立ち上がった。やっと待ち人が現れたのかと期待で胸を膨らませた。
「マークレン様ですか⁉」
「いえ。マークレン様ではございません」
「そうですか……」
リーシャは来訪者が待ち人ではなかった事に落胆した。
しかし、マークレンではないというのならいったい誰がやってきたのか。
今のリーシャを訪ねてくる人間など、マークレンか会いたくもないシリウスくらいしか思い当たらない。マークレンではないというのなら選択肢はシリウスに絞られる。けれど、彼の場合はわざわざメリッサがここまで案内してくるとも思えない。
リーシャが誰だろうと考えていると、悪戯に拗ねたような口調の声が聞こえてきた。
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