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撃退任務
竜の能力(1)
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リーシャと第1部隊の騎士たちはフェンリルの指揮の元、すぐさま戦闘準備を開始した。
ノアは戦闘に集中しているようで、リーシャたちの事など見向きもせずに火竜に向かって飛びかかっている。
けれどその動きに、どこか躊躇いがあるように感じられた。それに気がついたのはリーシャだけではないようだ。
フェンリルがもどかしそうにノアの事を見上げていた。
「ノアのヤツ、なに迷ったような動きしてやがんだよ。今になって同じ種族に手を出すのに気が引けてきたとでもいうのかよ」
今のノアの動きは、いつものような黒竜が持つ特化した能力、優れた身体能力を十分に活かすことのできる近距離戦を自ら避けているような動きだった。
リーシャも何故ノアがその様な戦い方をしているのか違和感を持っていた。
けれどその違和感の原因はすぐに推測でき、リーシャはハッとした。
ノアが物理攻撃を仕掛けそれが直撃した後、ノアの手から煙が上がっていた。表情もわずかに苦痛で歪んでいるようにも見える。
リーシャは空中で繰り広げられる戦いを見上げながら、独り言を呟くように言った。
「違う。手を抜いてるとかそういう事じゃないと思う」
「それなら、なんでノアはあんな無様な戦いをしてんだよ」
「たぶん、火竜の持つ特殊な能力が原因だと思う。一握りの竜が持つ、特殊な能力があったはず」
「特殊な能力? なんだそれは。俺は聞いた事がない」
リーシャは張り詰めた表情で困惑するフェンリルの方を向くと、自身の頭の整理の意を込めて考えた事を口に出した。
「稀になんだけど、力のある竜の中には、得意とする属性ごとに身体に何らかのある特徴が現れる個体がいるって、本で読んだことがあるの」
「特徴……あの火竜には特にそれらしい特徴なんて見当たらないが」
「うん。でもたしか、その特徴って目に見える物だけじゃなかったはずなんだ。ただ、竜の生態はあんまりわかってない事だから、読んだ本に竜が持つ能力の全てが書かれてたわけじゃないし、その強い火竜の特殊な能力っていうのも、私のただの推論なんだけど……」
「それでもいい。リーシャ、お前はあの竜の能力をどう見立てたんだ?」
「今のあの火竜の体、かなりの高温になってるんじゃないかな。ノアが火竜の体に触れた直後に、その部分から焼けたような煙が上がってるでしょ?」
リーシャが読んだ文献には、火竜の中には臨戦態勢時に炎を纏う個体がいたという記述しかなかった。
けれど別の個体、雷竜についての記載の中には、竜の体にとまった鳥が地面に墜落したのを目撃したというものがあった。調べたところ、その鳥は感電したようなのだけれど、目撃した人間はその雷竜が雷を発生させているようには見えなかった述べていたとあった。
故に高温を発する火竜がいてもおかしくはないのではないだろうか。
フェンリルもリーシャのその推論を聞いて納得した様子だった。
「なるほどな。高温過ぎて物理攻撃だと自分がダメージを喰らうってわけか」
「黒竜には分が悪い相手なんだと思う」
「だな。リーシャ、すぐに攻撃に打って出るぞ!」
「うん!」
フェンリルは騎士団第1部隊の騎士たちの方へ向きを変えた。
「お前ら! すぐにいけるか!」
「はい‼」
戦闘準備は整ったようだ。騎士達は5人ずつで1つにまとまり、適度な距離を空けて待機していた。
「リーシャ、頼む」
「うん」
リーシャは大きく息を吸い込んだ。
ノアは戦闘に集中しているようで、リーシャたちの事など見向きもせずに火竜に向かって飛びかかっている。
けれどその動きに、どこか躊躇いがあるように感じられた。それに気がついたのはリーシャだけではないようだ。
フェンリルがもどかしそうにノアの事を見上げていた。
「ノアのヤツ、なに迷ったような動きしてやがんだよ。今になって同じ種族に手を出すのに気が引けてきたとでもいうのかよ」
今のノアの動きは、いつものような黒竜が持つ特化した能力、優れた身体能力を十分に活かすことのできる近距離戦を自ら避けているような動きだった。
リーシャも何故ノアがその様な戦い方をしているのか違和感を持っていた。
けれどその違和感の原因はすぐに推測でき、リーシャはハッとした。
ノアが物理攻撃を仕掛けそれが直撃した後、ノアの手から煙が上がっていた。表情もわずかに苦痛で歪んでいるようにも見える。
リーシャは空中で繰り広げられる戦いを見上げながら、独り言を呟くように言った。
「違う。手を抜いてるとかそういう事じゃないと思う」
「それなら、なんでノアはあんな無様な戦いをしてんだよ」
「たぶん、火竜の持つ特殊な能力が原因だと思う。一握りの竜が持つ、特殊な能力があったはず」
「特殊な能力? なんだそれは。俺は聞いた事がない」
リーシャは張り詰めた表情で困惑するフェンリルの方を向くと、自身の頭の整理の意を込めて考えた事を口に出した。
「稀になんだけど、力のある竜の中には、得意とする属性ごとに身体に何らかのある特徴が現れる個体がいるって、本で読んだことがあるの」
「特徴……あの火竜には特にそれらしい特徴なんて見当たらないが」
「うん。でもたしか、その特徴って目に見える物だけじゃなかったはずなんだ。ただ、竜の生態はあんまりわかってない事だから、読んだ本に竜が持つ能力の全てが書かれてたわけじゃないし、その強い火竜の特殊な能力っていうのも、私のただの推論なんだけど……」
「それでもいい。リーシャ、お前はあの竜の能力をどう見立てたんだ?」
「今のあの火竜の体、かなりの高温になってるんじゃないかな。ノアが火竜の体に触れた直後に、その部分から焼けたような煙が上がってるでしょ?」
リーシャが読んだ文献には、火竜の中には臨戦態勢時に炎を纏う個体がいたという記述しかなかった。
けれど別の個体、雷竜についての記載の中には、竜の体にとまった鳥が地面に墜落したのを目撃したというものがあった。調べたところ、その鳥は感電したようなのだけれど、目撃した人間はその雷竜が雷を発生させているようには見えなかった述べていたとあった。
故に高温を発する火竜がいてもおかしくはないのではないだろうか。
フェンリルもリーシャのその推論を聞いて納得した様子だった。
「なるほどな。高温過ぎて物理攻撃だと自分がダメージを喰らうってわけか」
「黒竜には分が悪い相手なんだと思う」
「だな。リーシャ、すぐに攻撃に打って出るぞ!」
「うん!」
フェンリルは騎士団第1部隊の騎士たちの方へ向きを変えた。
「お前ら! すぐにいけるか!」
「はい‼」
戦闘準備は整ったようだ。騎士達は5人ずつで1つにまとまり、適度な距離を空けて待機していた。
「リーシャ、頼む」
「うん」
リーシャは大きく息を吸い込んだ。
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