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ピクニックへ
挙動不審な人(1)
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「2人ともーお昼ご飯食べよー」
「はーい!」
芝生の上にシートを敷き、お弁当を広げたところでリーシャは、ノアとエリアルに声をかけた。エリアルはズボンを穿くと急いでリーシャの元まで走ってきた。ノアもその後を自分のペースで追って来ている。
地面に広げられたお弁当はサンドイッチ。野菜やハム、卵に甘辛く煮た鶏肉などなどいろいろな種類のサンドイッチが並んでいる。
エリアルはシートの上に座ると、間髪入れず卵のサンドイッチを掴み取った。
「いっただっきまーーす!」
「あっ、こら! 食べる前に手を拭きなさい! 汚いでしょ!」
「川の水で洗ったもん」
「ダメ! 何が流れてるかわからないんだから」
リーシャは家で濡らしてきたタオルを差し出した。
エリアルはそれを渋々受け取ると、手をきれいに拭き上げ、リーシャにタオルを返した。
「これでいい?」
「うん」
「じゃあ、今度こそ。いっただっきまーーす!」
いつもの昼食時間を過ぎているうえに、川遊びもしていたのだ。よほどお腹がすいていたのだろう。エリアルは忙しそうにサンドイッチを口へと運んでいた。
ノアとルシアも手を拭くとサンドイッチを食べ始めた。
「ねぇちゃん、食べないの?」
「食べるよ。いただきます」
エリアルの食べっぷりを眺めていたリーシャも、声をかけられ手を伸ばした。
こうして外でのんびり食べるのは新鮮だった。3人もそう思っているのか、生き生きとした顔をしている。
「ねぇ、食べ終わったら何するの?」
「僕お魚取る!」
リーシャの問いにエリアルが満面の笑みで答えた。
魚を捕ると言っても、今日はそんな用意をしてきていない。
「今日釣り竿持って来てないけど、どうするの?」
「手で取る! にぃちゃんたちも手伝って!」
エリアルはルシアの方を向いた。断られないと確信しているようで、目をキラキラさせている。
「いいけど、魚って手で取れるのか?」
「うーん、わかんない! けど頑張る」
ルシアを仲間に加えられてエリアルは満足げだ。おそらくノアも返事こそしていないけれど、エリアルが川の方へ向かったらついて行くのだろう。
エリアルはリーシャの方を向いた。
「リーシャねぇちゃんも、お魚取る?」
「私は……」
実のところリーシャは魔法を使えば釣り竿がなくても魚は簡単に取れる。
けれど今日は魚を捕る事が重要なわけではなく、その過程が大事なのだ。エリアルに合わせて動き回らないといけないかもしれない。
帰りにまた1時間ほど歩かなければならないことを考慮したリーシャは、一緒に川遊びをするよりも3人の様子を眺めていたいという結論を出した。
それにリーシャは3人が仲良く何かをしている姿を見るのが大好きだ。やんちゃに2人を振り回すエリアルも、楽し気にエリアルの世話を焼くルシアも、仕方なさげに見えて内心楽しんでいるノアも、見ていて全てが楽しい。
「私は、しばらくここでエリアルたちが遊んでるところを見てたいんだけど、いい?」
「うん、いいよ!」
いつの間にか完食してしまっていたエリアルが立ち上がった。
「じゃあ、僕先行くね。にぃちゃんたちも早く来てね」
「滑って転ぶなよー」
「はーい」
エリアルは川に向かって走って行った。
リーシャはサンドイッチを口へと運びながら川に手を突っ込むエリアルを見ていたけれど、魚を取れる様子はなく、ただ水遊びをしているようにしか見えなかった。あれでも本人は真剣なのだろう。
ノアとルシアは食べ終わった後、少し休憩を挟んだ。
「さーてと、そろそろ援護しに行ってやるかな。兄貴も行くだろ?」
「ああ」
「ん。んじゃ、行ってくるな」
2人も川の方へ行ってしまった。
リーシャは1人サンドイッチに食いつきながら、3人が魚を捕まえようとする様子を眺めた。
楽しそうなので何よりだ。ただ、川の中で転ばないかだけが心配だった。
「はーい!」
芝生の上にシートを敷き、お弁当を広げたところでリーシャは、ノアとエリアルに声をかけた。エリアルはズボンを穿くと急いでリーシャの元まで走ってきた。ノアもその後を自分のペースで追って来ている。
地面に広げられたお弁当はサンドイッチ。野菜やハム、卵に甘辛く煮た鶏肉などなどいろいろな種類のサンドイッチが並んでいる。
エリアルはシートの上に座ると、間髪入れず卵のサンドイッチを掴み取った。
「いっただっきまーーす!」
「あっ、こら! 食べる前に手を拭きなさい! 汚いでしょ!」
「川の水で洗ったもん」
「ダメ! 何が流れてるかわからないんだから」
リーシャは家で濡らしてきたタオルを差し出した。
エリアルはそれを渋々受け取ると、手をきれいに拭き上げ、リーシャにタオルを返した。
「これでいい?」
「うん」
「じゃあ、今度こそ。いっただっきまーーす!」
いつもの昼食時間を過ぎているうえに、川遊びもしていたのだ。よほどお腹がすいていたのだろう。エリアルは忙しそうにサンドイッチを口へと運んでいた。
ノアとルシアも手を拭くとサンドイッチを食べ始めた。
「ねぇちゃん、食べないの?」
「食べるよ。いただきます」
エリアルの食べっぷりを眺めていたリーシャも、声をかけられ手を伸ばした。
こうして外でのんびり食べるのは新鮮だった。3人もそう思っているのか、生き生きとした顔をしている。
「ねぇ、食べ終わったら何するの?」
「僕お魚取る!」
リーシャの問いにエリアルが満面の笑みで答えた。
魚を捕ると言っても、今日はそんな用意をしてきていない。
「今日釣り竿持って来てないけど、どうするの?」
「手で取る! にぃちゃんたちも手伝って!」
エリアルはルシアの方を向いた。断られないと確信しているようで、目をキラキラさせている。
「いいけど、魚って手で取れるのか?」
「うーん、わかんない! けど頑張る」
ルシアを仲間に加えられてエリアルは満足げだ。おそらくノアも返事こそしていないけれど、エリアルが川の方へ向かったらついて行くのだろう。
エリアルはリーシャの方を向いた。
「リーシャねぇちゃんも、お魚取る?」
「私は……」
実のところリーシャは魔法を使えば釣り竿がなくても魚は簡単に取れる。
けれど今日は魚を捕る事が重要なわけではなく、その過程が大事なのだ。エリアルに合わせて動き回らないといけないかもしれない。
帰りにまた1時間ほど歩かなければならないことを考慮したリーシャは、一緒に川遊びをするよりも3人の様子を眺めていたいという結論を出した。
それにリーシャは3人が仲良く何かをしている姿を見るのが大好きだ。やんちゃに2人を振り回すエリアルも、楽し気にエリアルの世話を焼くルシアも、仕方なさげに見えて内心楽しんでいるノアも、見ていて全てが楽しい。
「私は、しばらくここでエリアルたちが遊んでるところを見てたいんだけど、いい?」
「うん、いいよ!」
いつの間にか完食してしまっていたエリアルが立ち上がった。
「じゃあ、僕先行くね。にぃちゃんたちも早く来てね」
「滑って転ぶなよー」
「はーい」
エリアルは川に向かって走って行った。
リーシャはサンドイッチを口へと運びながら川に手を突っ込むエリアルを見ていたけれど、魚を取れる様子はなく、ただ水遊びをしているようにしか見えなかった。あれでも本人は真剣なのだろう。
ノアとルシアは食べ終わった後、少し休憩を挟んだ。
「さーてと、そろそろ援護しに行ってやるかな。兄貴も行くだろ?」
「ああ」
「ん。んじゃ、行ってくるな」
2人も川の方へ行ってしまった。
リーシャは1人サンドイッチに食いつきながら、3人が魚を捕まえようとする様子を眺めた。
楽しそうなので何よりだ。ただ、川の中で転ばないかだけが心配だった。
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