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始まりの予兆
隠し事(2)
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「ったく、なんだよいきなり。そんな大声出して、驚いたのはこっちだ」
「ごめん」
「別にいいけどよ」
リーシャは鼓動を早くした胸に手を当て、興奮を抑えた。
とはいえ、見つかったという召喚の魔道具の事が気になりすぎて、自分の報告どころではない。
「ほんとにその魔道具がお城にあるの?」
「ああ。100年くらい前に3つの内の2つは回収されてるんだよ。この国の宝物庫にあるのはガーゴイル系統のローインパーズっていう滅んだ魔物だ。もう一つの指輪は、どこかは教えられねぇけど東の方の国が持ってる。たしかフェニックス系統だったかな。そこはよく覚えてねえ。どっちの指輪も召喚獣が扱える全ての有属性の魔力、つまりは3つ以上の有属性の魔力を使う事で発動するらしい。見つけた時に、時間はかかったみたいだが検証済みだ」
「そうなんだ」
死竜の持つ魔力の属性は闇。そして召喚には闇の魔力を要した。
そこから考えてもリーシャが手にしている物と召喚の条件は同じ。そしてこの魔道具を扱える人間がかなり限られている事も同じだ。3つ以上の属性の魔力を同時に使い続けることができる人間なんてそうそういない。
どの文献にも載っていない事実を知りリーシャは目を輝かせた。
そして、ある1つの疑問に行き当たった。
「というか、そんな詳しい事を私に教えてもよかったの? 知られてないってことは、隠してたってことなんじゃ」
「ん? まぁいいんじゃね? 国が認定してる技師たちには教えてることだし」
たいしたことではないという態度をとっているけれど、リーシャはどう考えても自分が聞いてもいい話のようには思えなかった。
(それ絶対、一般の人には教えちゃいけないでしょ……)
信頼しているから教えたのかもしれない。けれど、信頼を勝ち取れる程の時間を過ごしたわけでもないため、リーシャはフェンリルのいい加減さを、再び実感する事となったのだった。
リーシャが呆れていると、フェンリルがはたと気がついたような表情をした。
「てか、話題に挙げてきたってことはお前、残りの1つの在処でも知ってんのか?」
「う……うん……」
「! どこだ! 在処がわかってんなら回収しねぇとなんねぇ。あれの中身は危険すぎる!」
リーシャが答えた途端、フェンリルは切羽詰まっているように身を乗り出した。
それもそのはず。先ほど召喚獣として挙げた生物は竜同様、暴れはじめたらとてつもない災禍を引き起こすほど危険な生き物たちだ。
ろくでもない人間に召喚の魔道具が渡り、万が一にも召喚獣を呼び出せるような人物だったなら、大陸が危機にさらされる。
それをわかっているフェンリルは焦りを隠せない様子だ。
「まさか竜たちが持ってるなんて言わねぇよな?」
「言わないよ。だってここにあるもん」
「なんだと⁉」
リーシャは自分の指からカルディスの指輪を外してテーブルの上に置いた。
「これが3つ目の……」
言い終わる前に指輪を手にしたフェンリルは、いろんな角度からそれを観察し始めた。
「この魔力刻印に特殊な金属。そしてこの石……本物っぽいな。お前、これをどこで見つけた」
「家の前の池の底に沈んでたの」
「そんな簡単なところに? いや、そんなはずはない。あの辺りも紛失時に捜索されたはずだ。見つからないわけがない」
「えーっと……池の底がかなり深いみたいだから見つけられなかったのかも?」
「そんな深いところにあったものを何でお前が持っててるんだよ?」
物が物なだけに、フェンリルは鋭い目つきでリーシャの事を見ていた。
なぜフェンリルは気がつかなくていいことに気がついてしまうのだろうか。リーシャの隠しておきたいことが芋づる式でどんどん掘り起こされていく。
それとも、ただリーシャが隠すのが下手過ぎるだけなのか。
リーシャはどう答えていいのかわからず口を閉じた。
「……」
「リーシャ」
名前を呼ばれただけなのに、低く落ち着いた声が正直に言えと言っているようだ。誤魔化しはきかないだろう。
「ごめん」
「別にいいけどよ」
リーシャは鼓動を早くした胸に手を当て、興奮を抑えた。
とはいえ、見つかったという召喚の魔道具の事が気になりすぎて、自分の報告どころではない。
「ほんとにその魔道具がお城にあるの?」
「ああ。100年くらい前に3つの内の2つは回収されてるんだよ。この国の宝物庫にあるのはガーゴイル系統のローインパーズっていう滅んだ魔物だ。もう一つの指輪は、どこかは教えられねぇけど東の方の国が持ってる。たしかフェニックス系統だったかな。そこはよく覚えてねえ。どっちの指輪も召喚獣が扱える全ての有属性の魔力、つまりは3つ以上の有属性の魔力を使う事で発動するらしい。見つけた時に、時間はかかったみたいだが検証済みだ」
「そうなんだ」
死竜の持つ魔力の属性は闇。そして召喚には闇の魔力を要した。
そこから考えてもリーシャが手にしている物と召喚の条件は同じ。そしてこの魔道具を扱える人間がかなり限られている事も同じだ。3つ以上の属性の魔力を同時に使い続けることができる人間なんてそうそういない。
どの文献にも載っていない事実を知りリーシャは目を輝かせた。
そして、ある1つの疑問に行き当たった。
「というか、そんな詳しい事を私に教えてもよかったの? 知られてないってことは、隠してたってことなんじゃ」
「ん? まぁいいんじゃね? 国が認定してる技師たちには教えてることだし」
たいしたことではないという態度をとっているけれど、リーシャはどう考えても自分が聞いてもいい話のようには思えなかった。
(それ絶対、一般の人には教えちゃいけないでしょ……)
信頼しているから教えたのかもしれない。けれど、信頼を勝ち取れる程の時間を過ごしたわけでもないため、リーシャはフェンリルのいい加減さを、再び実感する事となったのだった。
リーシャが呆れていると、フェンリルがはたと気がついたような表情をした。
「てか、話題に挙げてきたってことはお前、残りの1つの在処でも知ってんのか?」
「う……うん……」
「! どこだ! 在処がわかってんなら回収しねぇとなんねぇ。あれの中身は危険すぎる!」
リーシャが答えた途端、フェンリルは切羽詰まっているように身を乗り出した。
それもそのはず。先ほど召喚獣として挙げた生物は竜同様、暴れはじめたらとてつもない災禍を引き起こすほど危険な生き物たちだ。
ろくでもない人間に召喚の魔道具が渡り、万が一にも召喚獣を呼び出せるような人物だったなら、大陸が危機にさらされる。
それをわかっているフェンリルは焦りを隠せない様子だ。
「まさか竜たちが持ってるなんて言わねぇよな?」
「言わないよ。だってここにあるもん」
「なんだと⁉」
リーシャは自分の指からカルディスの指輪を外してテーブルの上に置いた。
「これが3つ目の……」
言い終わる前に指輪を手にしたフェンリルは、いろんな角度からそれを観察し始めた。
「この魔力刻印に特殊な金属。そしてこの石……本物っぽいな。お前、これをどこで見つけた」
「家の前の池の底に沈んでたの」
「そんな簡単なところに? いや、そんなはずはない。あの辺りも紛失時に捜索されたはずだ。見つからないわけがない」
「えーっと……池の底がかなり深いみたいだから見つけられなかったのかも?」
「そんな深いところにあったものを何でお前が持っててるんだよ?」
物が物なだけに、フェンリルは鋭い目つきでリーシャの事を見ていた。
なぜフェンリルは気がつかなくていいことに気がついてしまうのだろうか。リーシャの隠しておきたいことが芋づる式でどんどん掘り起こされていく。
それとも、ただリーシャが隠すのが下手過ぎるだけなのか。
リーシャはどう答えていいのかわからず口を閉じた。
「……」
「リーシャ」
名前を呼ばれただけなのに、低く落ち着いた声が正直に言えと言っているようだ。誤魔化しはきかないだろう。
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