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始まりの予兆
隠し事(1)
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「もう言い逃れはできねぇぞ。で? 隠してる事って何だよ」
フェンリルはニヤつき、浮かれた声をしていた。これまでの国のことを案じて深刻そうにしていたのが嘘のように思える態度。
あまりの変わりように、何か良からぬことでも考えていないだろうかと思ったリーシャは怪しむような視線を向けた。
「……なんで嬉しそうなわけ?」
「そりゃあ決まってんだろ。どんなとんでもない隠し事が出てくるのか楽しみだからだよ」
「もし隠し事が、また国の危機になるような事だったらどうするのよ」
「そん時はそん時だ。また考えればいい。だからリーシャ、さっさと白状しちまえよ」
なにがなんでも聞き出そうというのが見て取れるほどフェンリルは上機嫌だ。
本当に悪い知らせだったらどうするんだど思い、リーシャは溜め息をついた。
「もう……いい加減だなぁ」
そして口を閉じ、何を話そうか考えた。
隠し事に分類されることと言えば、まずカルディスの指輪の事だろう。
かなり貴重な魔道具であると同時に、召喚獣が先ほどまで話題になっていた竜が成れ果てた生物だ。竜王の友だという事もあり、今後の竜たちの動向に影響を与える可能性がある。
あとはリーシャ自身が闇の魔力を操れるという事だ。これに関しては、フェンリルに伝えなかったからといって問題になりそうな要素は今のところ思い当たらない。むしろ伝えたことでリーシャに降りかかる問題の方が多そうだ。
ただ、カルディスの指輪について追及されれば闇の魔力を所持しているとバレる可能性がある。故に召喚方法については絶対に教えてはいけない。
結論として、リーシャはカルディスの指輪について話すことにした。
(うまくごまかされてくれればいいんだけど……)
リーシャは大きく深呼吸するとフェンリルの事を真っすぐに見た。
「フェンリル」
「なんだ? やっと白状する気になったのか?」
「……いちいち私が悪いことしてるみたいな言い方しないでもらえます?」
「わりぃ、わりぃ。んで?」
絶対に悪いと思っていない言い方だ。
リーシャは不快そうに少し眉間に皺を寄せはしたけれど、それには触れず話を続ける事にした。毎回反応し続けていたら自分の体力が削られるだけだ。
「……フェンリルはカルディスの指輪って知ってる?」
「カルディスの指輪? どっかで聞いたな。ちょっと待ってくれ……」
フェンリルも真剣に話を受け止め始めたようで、リーシャの言葉と自身の記憶と結び付けようとしているのか、瞼を閉じた。
説明した方が早いのだけれど、かなり真面目に思い出そうとしていたので、リーシャはあえて黙って待つことにした。
フェンリルはしばらく難問を解くかのような表情を続けた後、突然目を開いた。
「ああ! あの召喚の指輪か! 魔物が封じ込められてるってやつ」
「そう、それ。よく知ってたね。あんまり知られてない魔道具なのに」
知っているのは限られた魔道具技師や珍しい魔道具を収集している人間くらいだ。彼らですら幻のような扱いをしている魔道具なので、魔道具に興味がない人間が知っている方が珍しい。
リーシャに褒められた事で気分を良くしたらしく、フェンリルは誇らしげにふんぞり返った。
「そりゃな。城の宝物庫に1つあるからな」
「へぇ。そうなんだ。宝物庫に……えっ?」
やや鼻につく態度のせいで一瞬流しかけたけれど、聞き捨てならない事実に気付いたリーシャは時が停止したように固まった。
カルディスの指輪は全て行方知れずとなっている。それが実は見つかっていたという事実はリーシャにとってもかなりの衝撃で、理解が追い付いた時には無意識に大きな声を出していた。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉」
その声の大きさは、爆睡していたエリアルが飛び起きてしまうほどだった。
寝起きのエリアルは混乱しているようで、寝ぼけ眼で周囲を見回した。
「リーシャねぇちゃん⁉ どうしたの⁉」
「ごっ、ごめんね、エリアル。話してた内容にびっくりしちゃっただけで、なんでもないから」
「そうなの? それならいいや。ふあぁぁ……」
どうやら十分眠れたらしく、エリアルは大きく伸びをしてソファに座り直した。
フェンリルの方は手で耳を塞いでいたらしく、今は眉間に皺を寄せて迷惑そうにリーシャの事を見ていた。
フェンリルはニヤつき、浮かれた声をしていた。これまでの国のことを案じて深刻そうにしていたのが嘘のように思える態度。
あまりの変わりように、何か良からぬことでも考えていないだろうかと思ったリーシャは怪しむような視線を向けた。
「……なんで嬉しそうなわけ?」
「そりゃあ決まってんだろ。どんなとんでもない隠し事が出てくるのか楽しみだからだよ」
「もし隠し事が、また国の危機になるような事だったらどうするのよ」
「そん時はそん時だ。また考えればいい。だからリーシャ、さっさと白状しちまえよ」
なにがなんでも聞き出そうというのが見て取れるほどフェンリルは上機嫌だ。
本当に悪い知らせだったらどうするんだど思い、リーシャは溜め息をついた。
「もう……いい加減だなぁ」
そして口を閉じ、何を話そうか考えた。
隠し事に分類されることと言えば、まずカルディスの指輪の事だろう。
かなり貴重な魔道具であると同時に、召喚獣が先ほどまで話題になっていた竜が成れ果てた生物だ。竜王の友だという事もあり、今後の竜たちの動向に影響を与える可能性がある。
あとはリーシャ自身が闇の魔力を操れるという事だ。これに関しては、フェンリルに伝えなかったからといって問題になりそうな要素は今のところ思い当たらない。むしろ伝えたことでリーシャに降りかかる問題の方が多そうだ。
ただ、カルディスの指輪について追及されれば闇の魔力を所持しているとバレる可能性がある。故に召喚方法については絶対に教えてはいけない。
結論として、リーシャはカルディスの指輪について話すことにした。
(うまくごまかされてくれればいいんだけど……)
リーシャは大きく深呼吸するとフェンリルの事を真っすぐに見た。
「フェンリル」
「なんだ? やっと白状する気になったのか?」
「……いちいち私が悪いことしてるみたいな言い方しないでもらえます?」
「わりぃ、わりぃ。んで?」
絶対に悪いと思っていない言い方だ。
リーシャは不快そうに少し眉間に皺を寄せはしたけれど、それには触れず話を続ける事にした。毎回反応し続けていたら自分の体力が削られるだけだ。
「……フェンリルはカルディスの指輪って知ってる?」
「カルディスの指輪? どっかで聞いたな。ちょっと待ってくれ……」
フェンリルも真剣に話を受け止め始めたようで、リーシャの言葉と自身の記憶と結び付けようとしているのか、瞼を閉じた。
説明した方が早いのだけれど、かなり真面目に思い出そうとしていたので、リーシャはあえて黙って待つことにした。
フェンリルはしばらく難問を解くかのような表情を続けた後、突然目を開いた。
「ああ! あの召喚の指輪か! 魔物が封じ込められてるってやつ」
「そう、それ。よく知ってたね。あんまり知られてない魔道具なのに」
知っているのは限られた魔道具技師や珍しい魔道具を収集している人間くらいだ。彼らですら幻のような扱いをしている魔道具なので、魔道具に興味がない人間が知っている方が珍しい。
リーシャに褒められた事で気分を良くしたらしく、フェンリルは誇らしげにふんぞり返った。
「そりゃな。城の宝物庫に1つあるからな」
「へぇ。そうなんだ。宝物庫に……えっ?」
やや鼻につく態度のせいで一瞬流しかけたけれど、聞き捨てならない事実に気付いたリーシャは時が停止したように固まった。
カルディスの指輪は全て行方知れずとなっている。それが実は見つかっていたという事実はリーシャにとってもかなりの衝撃で、理解が追い付いた時には無意識に大きな声を出していた。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉」
その声の大きさは、爆睡していたエリアルが飛び起きてしまうほどだった。
寝起きのエリアルは混乱しているようで、寝ぼけ眼で周囲を見回した。
「リーシャねぇちゃん⁉ どうしたの⁉」
「ごっ、ごめんね、エリアル。話してた内容にびっくりしちゃっただけで、なんでもないから」
「そうなの? それならいいや。ふあぁぁ……」
どうやら十分眠れたらしく、エリアルは大きく伸びをしてソファに座り直した。
フェンリルの方は手で耳を塞いでいたらしく、今は眉間に皺を寄せて迷惑そうにリーシャの事を見ていた。
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