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始まりの予兆
街外れの研究所(3)
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「いやー、それにしてもこんな日が来るなんて夢にも思っていませんでしたよ」
「何がです?」
「そちらのお2人の事ですよ。お2人とも黒竜なんですよね? 生きてるうちにこうして竜と一緒に歩けるなんて。はぁ……夢のようです」
時々リーシャたちの方へ振り返る女性の顔は、まさに幸福ですと言わんばかりの表情をしていた。
「えっと、竜、好きなんですか?」
「はいっ! 強くてかっこよくて、小さい頃から大好きなんです! 研究員になれば生きている竜に会えるかもって思ってここに就職したんですけど、いざ入社してみたら竜の影形もなくてがっかりで……最近、もう諦めて転職しようかなと考えてたんですよ。私、別に魔物の研究をしたくてここに入ったわけじゃないですから」
「へ、へぇ……」
先ほどまで熱く語っていた彼女のショボンとした姿を前にして、リーシャは苦笑いを浮かべた。
(そりゃそうだよ。竜は個体数少ないし遭遇率が低いうえに、強すぎて生きたままの捕獲なんて無理だよ)
生きた竜を目にしたいのならば研究所勤めでは普通に考えて無理だろう。どうしても見たいというのなら、ギルドに所属し、クエストを請けて各地に赴いた方が確率は高い。
俯いていた研究員女性が突然顔を上げ、再び目を輝かせ始めた。
「それなのにですよ! 突然、実は人間に化けた竜がこの王都に出入りしていましたって話を聞いたんです! もうこれは運命だと思いました!」
横からノアが鼻で笑う音が聞こえてきた。コロコロ変わる表情が滑稽だったのかもしれないけれど、真剣に話す彼女に失礼だ。
リーシャは黙ったままノアの横腹を肘で小突いた。この行動の意味は汲み取れるだろう。思った通り、ノアは口を閉ざしたまま視線をリーシャから逸らした。
「リーシャさん?」
「なんでもないです。運命、なんですね」
「ハイ! 運命です! そういえば、リーシャさんの方がこの方たちとは運命的な出会いをなされたんですよね? はわぁ……羨ましい限りです!」
興奮した女性の言っている意味は段々よくわからなくなってきていた。
助けを求めて、話術の優れたノアの方を向くけれど、ノアの方も対応不可と判断したのだろう。首を90度回してしまった。
「あ、すみません! こんな話ばかり。つい興奮しちゃって。そう言えば名前も言ってなかったですよね。私、所長の助手をしています、メルティナ・モンハメルドといいます。ちなみに所長は私の父です」
「そ、そうですか」
もしかするとその所長もメルティナと似たような性格なのではという不安がよぎった。
そうこう話をしているうちに目的地にたどり着いたようだ。メルティナがとある横開きの扉の前で足を止めた。
「ここです。ここが所長室兼父の研究室です。お父さーん。リーシャさんたち来たよー」
「入ってきなさい」
「はーい」
メルティナが扉横の壁に取り付けられた機械にカードを通すと、扉が左右に開かれた。
その先では3人の人影がリーシャたちの事を待ち構えていた。
「何がです?」
「そちらのお2人の事ですよ。お2人とも黒竜なんですよね? 生きてるうちにこうして竜と一緒に歩けるなんて。はぁ……夢のようです」
時々リーシャたちの方へ振り返る女性の顔は、まさに幸福ですと言わんばかりの表情をしていた。
「えっと、竜、好きなんですか?」
「はいっ! 強くてかっこよくて、小さい頃から大好きなんです! 研究員になれば生きている竜に会えるかもって思ってここに就職したんですけど、いざ入社してみたら竜の影形もなくてがっかりで……最近、もう諦めて転職しようかなと考えてたんですよ。私、別に魔物の研究をしたくてここに入ったわけじゃないですから」
「へ、へぇ……」
先ほどまで熱く語っていた彼女のショボンとした姿を前にして、リーシャは苦笑いを浮かべた。
(そりゃそうだよ。竜は個体数少ないし遭遇率が低いうえに、強すぎて生きたままの捕獲なんて無理だよ)
生きた竜を目にしたいのならば研究所勤めでは普通に考えて無理だろう。どうしても見たいというのなら、ギルドに所属し、クエストを請けて各地に赴いた方が確率は高い。
俯いていた研究員女性が突然顔を上げ、再び目を輝かせ始めた。
「それなのにですよ! 突然、実は人間に化けた竜がこの王都に出入りしていましたって話を聞いたんです! もうこれは運命だと思いました!」
横からノアが鼻で笑う音が聞こえてきた。コロコロ変わる表情が滑稽だったのかもしれないけれど、真剣に話す彼女に失礼だ。
リーシャは黙ったままノアの横腹を肘で小突いた。この行動の意味は汲み取れるだろう。思った通り、ノアは口を閉ざしたまま視線をリーシャから逸らした。
「リーシャさん?」
「なんでもないです。運命、なんですね」
「ハイ! 運命です! そういえば、リーシャさんの方がこの方たちとは運命的な出会いをなされたんですよね? はわぁ……羨ましい限りです!」
興奮した女性の言っている意味は段々よくわからなくなってきていた。
助けを求めて、話術の優れたノアの方を向くけれど、ノアの方も対応不可と判断したのだろう。首を90度回してしまった。
「あ、すみません! こんな話ばかり。つい興奮しちゃって。そう言えば名前も言ってなかったですよね。私、所長の助手をしています、メルティナ・モンハメルドといいます。ちなみに所長は私の父です」
「そ、そうですか」
もしかするとその所長もメルティナと似たような性格なのではという不安がよぎった。
そうこう話をしているうちに目的地にたどり着いたようだ。メルティナがとある横開きの扉の前で足を止めた。
「ここです。ここが所長室兼父の研究室です。お父さーん。リーシャさんたち来たよー」
「入ってきなさい」
「はーい」
メルティナが扉横の壁に取り付けられた機械にカードを通すと、扉が左右に開かれた。
その先では3人の人影がリーシャたちの事を待ち構えていた。
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