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魔道具技師への道

誇り(3)

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 魔法を追求していけば繊細さも必要にはなってくるけれど、魔道具を作る繊細さに比べれば簡単な事だ。それだけは魔道具を作った事のないリーシャでもわかる。
 魔法自体に長けたリーシャより、魔力量は少なく、有属性魔法を使えずとも多量の短剣を魔力で操る事のできるレインの方が魔道具技師としてのセンスがあると言える。
 故に魔力を使って魔法を使う事と魔力を利用して魔道具を作る事を同列に考えられるのは、魔道具技師としての誇りを持つディフェルドにとって耐えられない発言なのだ。
 リーシャが迫力に負け、困ったように笑っていると、ディフェルドは清々しい顔をした。

「よし、休憩ついでだ。ちょっと様子を見に行ってみるか」
「えっ。さっき仕事を始めたばかりなんじゃ……」

 ディフェルドが手掛けていた魔道具は、どう見てももう少しで完成というような状態には見えない。むしろあとどれくらい長い時間がかかるのだろうという感想が頭をよぎるほどに部品が床に散らばっていた。

(期限は待ってくれないとか言ってたけど……大丈夫なのかな?)

 もしかしたら自分のせいで集中力を切らしてしまったのではないかとリーシャは申し訳なく感じた。
 少し浮かない表情をしているリーシャの考えをなんとなく察したらしく、ディフェルドはニッと笑った。

「問題ない。こいつは納期までだいぶ時間がある。今日1日やらなかったくらいで間に合わなくなるってことはないさ。ただ俺が早めに事を終わらせときたいってだけでやってるだけだからな」
「でも、これ以外にも何か仕事があるんじゃ……」
「いや、嬢ちゃんたちが来る前に今日中にやっとかねぇといけない事は終わらせてる。もともと、兄ちゃんには俺が指導するつもりだったからな。直前にティアに指導役を代われって言われて、押しに負けて変わってやっただけだから。それより、あいつ何かやらかしてたりしないか?」

 即答で「大丈夫です」とは言えなかった。
 とくにルシアに対し敵意を持っているわけではないし、危険を持ち込んできた様子はないのだけれど、指導に彼女が私情を挟んでいるような気配があるのはずいぶんと気になっていた。
 リーシャの様子を窺うディフェルドの眉間に皺が寄ったのは、それを察したからなのかもしれない。

「やらかしてはないですけど……」
「けど?」
「ルシアとの距離が無駄に近かったような気がします……」

 ディフェルドは片手で頭を抱えた。

「やっぱり……すまないな」
「いえ。謝るようなことでは……」

 誰がルシアに恋をしてもそれを咎める理由などない。好きになろうと思って人を好きになるわけではないのだから。
 それにリーシャ自身、自分の感情を決めあぐねている状況なのだ。
 そんな状況でスティアナにルシアに近づくな、など言っていいわけがないように思えた。
 リーシャが伏し目がちにそんな考えを巡らせていると、ディフェルドに軽く背中を押された。

「さて、こうしてても仕方ねぇ。とっとと兄ちゃんのとこに行こうか」
「あっ、はい」

 ディフェルドは足早に部屋の出入り口を潜り抜けていった。
 リーシャもその後を急いで追う。やや後ろから見えるディフェルドの顔はどことなく悩まし気な感じがした。

(ストロネシアさん……娘が竜の恋人になりたがってるって思ったから……やっぱり親としては複雑なんだろうな……)
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