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魔道具技師への道
誇り(1)
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リーシャの不満などないと言わんばかりの笑顔を見たディフェルドは、口元に弧を描き、隙間から白い歯を覗かせた。
「時間の無駄にならなかったんならよかった。んで? 俺からも質問なんだが、兄ちゃんの調子はどうだ?」
いきなりの話題の変更に、リーシャは誰の何の調子について聞かれたのか即座に認識できず、返答を詰まらせた。
ディフェルドが言う兄ちゃんというのはルシア。調子というのは魔道具を作る体験は順調か、という事で合っているのか自信がなく、首を傾げた。
「えーっと?」
「竜の兄ちゃんが今作ろうとしてる魔道具の出来具合だよ。嬢ちゃんの目から見て完成できそうかってことさ」
問いかけの意味合いはだいたい合っていたのだけれど、それでもすぐには答えられなかった。
リーシャは魔法が得意分野ではあるけれど、その発動の媒体として使われる魔道具に関しては素人だ。そんな素人目に完成できそうかどうかなどわかるわけはなかった。
「うーん、魔道具を作るのを見るのは初めてなので……どうなんでしょう。ルシアは器用そうに見えてそこまでじゃないから……完成させるのにかなり時間がかかるんじゃないかと。あっ、でも、紙みたいな魔道具? に描き写すのは上手くできてるなぁとは思いました。魔力を流したら破れてましたけど、今やってる練習は近いうちに終えられるんじゃないかなって思ってます!」
リーシャはせめてもの期待も込め、気合いを入れて言った。
ただ、やはり次の段階で躓いてしまうだろうという気はしていた。おそらく次は魔力を扱う事を重視する練習だ。
以前の魔法の発動のさせ方を教えたとき、ルシアは実力の伸び具合が今一つだった。魔力をコントロールすることが苦手なのだろう。
故に、センスが無いという事はないとは思うけれど、使い物になる魔道具を作れるようになるには時間がかかりそうだと思っていた。
完成できそうだと言ったわけではないのに、何故かディフェルドは口角は上げ、感心している様子だった。
「そうか。それなりに描けるんなら出だしは上場だな。ここに来る前に練習でもさせたのか?」
「いえ、座学ばかりでそういったことはまったく」
「そうか、できねぇやつはへなちょこな柄ばっかり描き上げるからな。そうじゃなくとも、今の段階から次に進むのにも意外と時間かかる。中には半月の間ずっと描き写しの作業をやってるやつもいるくらいだ。それを考えるとルシアのやつは、今のところはいい線いってるって言えるな」
ただ写すというそれだけの作業しかしていないのに、ディフェルドのルシアに対する評価は不思議と高評価だった。
リーシャは絵や図を描き写すという作業をしたことはない。それがそんなに難しいことだとは思っていなかった。
「時間の無駄にならなかったんならよかった。んで? 俺からも質問なんだが、兄ちゃんの調子はどうだ?」
いきなりの話題の変更に、リーシャは誰の何の調子について聞かれたのか即座に認識できず、返答を詰まらせた。
ディフェルドが言う兄ちゃんというのはルシア。調子というのは魔道具を作る体験は順調か、という事で合っているのか自信がなく、首を傾げた。
「えーっと?」
「竜の兄ちゃんが今作ろうとしてる魔道具の出来具合だよ。嬢ちゃんの目から見て完成できそうかってことさ」
問いかけの意味合いはだいたい合っていたのだけれど、それでもすぐには答えられなかった。
リーシャは魔法が得意分野ではあるけれど、その発動の媒体として使われる魔道具に関しては素人だ。そんな素人目に完成できそうかどうかなどわかるわけはなかった。
「うーん、魔道具を作るのを見るのは初めてなので……どうなんでしょう。ルシアは器用そうに見えてそこまでじゃないから……完成させるのにかなり時間がかかるんじゃないかと。あっ、でも、紙みたいな魔道具? に描き写すのは上手くできてるなぁとは思いました。魔力を流したら破れてましたけど、今やってる練習は近いうちに終えられるんじゃないかなって思ってます!」
リーシャはせめてもの期待も込め、気合いを入れて言った。
ただ、やはり次の段階で躓いてしまうだろうという気はしていた。おそらく次は魔力を扱う事を重視する練習だ。
以前の魔法の発動のさせ方を教えたとき、ルシアは実力の伸び具合が今一つだった。魔力をコントロールすることが苦手なのだろう。
故に、センスが無いという事はないとは思うけれど、使い物になる魔道具を作れるようになるには時間がかかりそうだと思っていた。
完成できそうだと言ったわけではないのに、何故かディフェルドは口角は上げ、感心している様子だった。
「そうか。それなりに描けるんなら出だしは上場だな。ここに来る前に練習でもさせたのか?」
「いえ、座学ばかりでそういったことはまったく」
「そうか、できねぇやつはへなちょこな柄ばっかり描き上げるからな。そうじゃなくとも、今の段階から次に進むのにも意外と時間かかる。中には半月の間ずっと描き写しの作業をやってるやつもいるくらいだ。それを考えるとルシアのやつは、今のところはいい線いってるって言えるな」
ただ写すというそれだけの作業しかしていないのに、ディフェルドのルシアに対する評価は不思議と高評価だった。
リーシャは絵や図を描き写すという作業をしたことはない。それがそんなに難しいことだとは思っていなかった。
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