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魔道具技師への道
工房見学(2)
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「ルシア。黙って」
「なんだよ。俺らはいつでも受け入れ態勢ばっちりなんだぞ? 実際一緒に暮らしてまでいるんだ。あとはリーシャが頷いてくれれば……」
「ルーシーアー」
「わかった、わかったよ」
ルシアはしぶしぶ口を閉じた。
リーシャはフンと口をとがらせると男に向き直った。先ほどまで迷惑そうだった男は笑いをこらえているように震えている。
「あの、恋人の1人って、何でそんな話になってるんですか?」
「プッ。ちっ、違うのか? だいぶ前からあんたらのことは街でかなり噂になってたけど。つえぇ魔法使いの嬢ちゃんが3兄弟の男たちに求婚されて、篭絡されたって。んで、その兄弟が竜だったとなりゃあ、噂も余計に広がるってもんだろ」
リーシャ自身、ルシアたち兄弟を頻繁に王都で連れ回していたという自覚はあった。
それに王都であろうと、どこであってもルシアたちはリーシャにベタベタとくっついていたのだ。それが周りに勘違いされる要因になったのだろう。
(まだ、気持ちの整理がついてないのに。しかも、よりにもよって3人ともとって……)
リーシャは頭を抱えた。
「噓でしょ……」
「別に俺らの生活が変わるわけじゃないんだし、気にすることないだろ」
そう言ったルシアの顔は、言葉の後ろに「むしろ嬉しい」と付け加えられるような表情をしていた。
そんな好奇の目が向けられるような噂が流れているのを知ったリーシャが、これまで通りルシアたち兄弟と出かける事に難を示さないわけがなかった。
「明日から1人で出かけよ……」
「えぇ⁉ なんでだよ‼ 気にすることないって言ってるじゃねぇか!」
ルシアの必死の叫びが店に響いた。
そんな2人のやり取りは外野から見れば笑いを誘う光景でしかなく、男性はついにこらえていた笑いが決壊し、豪快に笑い始めた。
「アッハッハ‼ なんだ、あんちゃんたち面白い奴だな。噂の人に化けた竜が来るっつうから気ぃ張って待ってたんだけど、取り越し苦労だったみたいな」
どれだけ面白かったのか、男性の目元には薄っすらと涙が浮かんでいた。
突然の笑いにリーシャとルシアは目を丸くし、ぽかんと男性を見つめた。
あまりの態度の変わりように、リーシャは恐る恐る尋ねた。
「えーっと、あなたはルシアのこと、その、平気なんですか?」
「平気? あー、まぁ、ギルド直々の依頼だったからな。普段世話になってるから仕方なしに受けた感じだったんだが」
男性はルシアのことを一瞬だけ見ると好意的に口角を上げ、言葉を続けた。
「実際に会って、警戒する必要もないなと思っちまったからな。嬢ちゃん自身の悪い噂を聞いたことはないし、このにいちゃんも悪さできなさそうな頭……性格してるみたいだし、なっ?」
「あれ? なあ俺、今けなされてなかったか?」
ルシアの顔には男の言いかけた言葉に納得いかないと書いてあった。
その顔を見た男性は再び豪快に笑いだし、ルシアは複雑そうに男性の事を見ていた。
「なんだよ。俺らはいつでも受け入れ態勢ばっちりなんだぞ? 実際一緒に暮らしてまでいるんだ。あとはリーシャが頷いてくれれば……」
「ルーシーアー」
「わかった、わかったよ」
ルシアはしぶしぶ口を閉じた。
リーシャはフンと口をとがらせると男に向き直った。先ほどまで迷惑そうだった男は笑いをこらえているように震えている。
「あの、恋人の1人って、何でそんな話になってるんですか?」
「プッ。ちっ、違うのか? だいぶ前からあんたらのことは街でかなり噂になってたけど。つえぇ魔法使いの嬢ちゃんが3兄弟の男たちに求婚されて、篭絡されたって。んで、その兄弟が竜だったとなりゃあ、噂も余計に広がるってもんだろ」
リーシャ自身、ルシアたち兄弟を頻繁に王都で連れ回していたという自覚はあった。
それに王都であろうと、どこであってもルシアたちはリーシャにベタベタとくっついていたのだ。それが周りに勘違いされる要因になったのだろう。
(まだ、気持ちの整理がついてないのに。しかも、よりにもよって3人ともとって……)
リーシャは頭を抱えた。
「噓でしょ……」
「別に俺らの生活が変わるわけじゃないんだし、気にすることないだろ」
そう言ったルシアの顔は、言葉の後ろに「むしろ嬉しい」と付け加えられるような表情をしていた。
そんな好奇の目が向けられるような噂が流れているのを知ったリーシャが、これまで通りルシアたち兄弟と出かける事に難を示さないわけがなかった。
「明日から1人で出かけよ……」
「えぇ⁉ なんでだよ‼ 気にすることないって言ってるじゃねぇか!」
ルシアの必死の叫びが店に響いた。
そんな2人のやり取りは外野から見れば笑いを誘う光景でしかなく、男性はついにこらえていた笑いが決壊し、豪快に笑い始めた。
「アッハッハ‼ なんだ、あんちゃんたち面白い奴だな。噂の人に化けた竜が来るっつうから気ぃ張って待ってたんだけど、取り越し苦労だったみたいな」
どれだけ面白かったのか、男性の目元には薄っすらと涙が浮かんでいた。
突然の笑いにリーシャとルシアは目を丸くし、ぽかんと男性を見つめた。
あまりの態度の変わりように、リーシャは恐る恐る尋ねた。
「えーっと、あなたはルシアのこと、その、平気なんですか?」
「平気? あー、まぁ、ギルド直々の依頼だったからな。普段世話になってるから仕方なしに受けた感じだったんだが」
男性はルシアのことを一瞬だけ見ると好意的に口角を上げ、言葉を続けた。
「実際に会って、警戒する必要もないなと思っちまったからな。嬢ちゃん自身の悪い噂を聞いたことはないし、このにいちゃんも悪さできなさそうな頭……性格してるみたいだし、なっ?」
「あれ? なあ俺、今けなされてなかったか?」
ルシアの顔には男の言いかけた言葉に納得いかないと書いてあった。
その顔を見た男性は再び豪快に笑いだし、ルシアは複雑そうに男性の事を見ていた。
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