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巨大な訪問者
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「は? なんだよそれ」
ルシアが衝撃を受けた様子で声を漏らした。
他の2人の兄弟たちも子供の話を含めてリーシャと番になりたいと考えていたようで、かなり衝撃を受けた様子だった。
リーシャは「そうなんだ」と内心受け入れつつも、どうしてか胸に晴れない靄がかかったような気分がしていた。
とはいえ、竜王が言った言葉が事実であるとも思えなかった。
自身が人間との間に子供ができなかったからそう言っているのではないかと思ったからだ。それだけでは根拠には成り得ない。
けれど頭の良い竜の頂点にいる竜王がその点に気がついていないとも思えなかった。
リーシャは竜王が何故そう言い切れているのか疑問に思った。
竜王に問いかけようとした時、一瞬早くノアがリーシャの思っていた事と同じ疑問を口にした。
「何故そうと言いきれる。あんたに子がいないからというだけで人と竜の子ができないとは言いきれないだろう」
ノアは拳を強く握りしめ、少し苛立っていた。
その姿はまるで竜王の言うそれが事実であるはずがないと心の内で言い聞かせ、どうにか感情を押さえているようだった。
「まあまあ落ち着いて。実をいうとね、人間側にも竜側にも知られていないんだけれど、これまでに番になった人間と竜たちが私が知る限りでも10数組はいたんだ」
「そういう人たちが他にもいたんですか?」
リーシャが信じられないというような声で言うと、竜王は平然とした態度で頭をコクンと縦に振った。
「いたんだよ。知られれば混乱を招いて、彼らが殺されかねないから私が匿っていたんだけど。そしてどの番も子を成すことはできず、みんな同じ運命を辿っていったよ」
リーシャは寂し気な竜王の表情と含みのある言い方に引っかかりを覚えた。
「同じ運命って何ですか?」
「お嬢さん、君は私たち竜がどれくらい生きてきているか知っているかな?」
「いえ。以前、1,000を超えていそうな竜が見つかったという文献は読んだ覚えはありますけど……」
「うん。そうだね。平穏に暮らしてきた者たちはそれくらい超えているよ。私自身もたぶん2000は超えているはずだ」
「そんなに?」
想像もできないほど長い年月を生きているという事に、リーシャは驚きで何といえばいいかわからなくなった。
(本当に竜がそんなに長生きだなんて……)
竜王はリーシャの目を丸くしている表情を見てクスッと笑うと話を続けた。
「ただ、私ほど生きているものは他にはいないし、天寿をまっとうした竜がいないから、私たちは自分たちの命の限界というものがわからないんだ。私もどこまで生きていられるかわからない。まあ、とりあえず今は、私たち竜という生き物が君たちよりとても長生きなんだって事さえわかっていてくたらそれでいいよ」
「はい」
リーシャは素直に頷いた。そして竜王が言わんとしている同じ運命とはどういうことなのかを考え始めた。どうせ彼は素直に教えてくれる気はないのだろう。
(今の言い方からすると、竜が人間よりも長く生きる生き物ってことが関わってるのは間違いないはず。運命……辿っていった…………過去形……?)
嫌な予感が這い上がってきた。
リーシャは自分の予測が間違っていてほしいと思いながら、そっと竜王へ視線を向けた。
「もしかして、竜王様が伝えたかったことは人間と番った竜は寿命が短くなるとかそういう話ですか?」
竜王は寂し気に微笑んだ。
ルシアが衝撃を受けた様子で声を漏らした。
他の2人の兄弟たちも子供の話を含めてリーシャと番になりたいと考えていたようで、かなり衝撃を受けた様子だった。
リーシャは「そうなんだ」と内心受け入れつつも、どうしてか胸に晴れない靄がかかったような気分がしていた。
とはいえ、竜王が言った言葉が事実であるとも思えなかった。
自身が人間との間に子供ができなかったからそう言っているのではないかと思ったからだ。それだけでは根拠には成り得ない。
けれど頭の良い竜の頂点にいる竜王がその点に気がついていないとも思えなかった。
リーシャは竜王が何故そう言い切れているのか疑問に思った。
竜王に問いかけようとした時、一瞬早くノアがリーシャの思っていた事と同じ疑問を口にした。
「何故そうと言いきれる。あんたに子がいないからというだけで人と竜の子ができないとは言いきれないだろう」
ノアは拳を強く握りしめ、少し苛立っていた。
その姿はまるで竜王の言うそれが事実であるはずがないと心の内で言い聞かせ、どうにか感情を押さえているようだった。
「まあまあ落ち着いて。実をいうとね、人間側にも竜側にも知られていないんだけれど、これまでに番になった人間と竜たちが私が知る限りでも10数組はいたんだ」
「そういう人たちが他にもいたんですか?」
リーシャが信じられないというような声で言うと、竜王は平然とした態度で頭をコクンと縦に振った。
「いたんだよ。知られれば混乱を招いて、彼らが殺されかねないから私が匿っていたんだけど。そしてどの番も子を成すことはできず、みんな同じ運命を辿っていったよ」
リーシャは寂し気な竜王の表情と含みのある言い方に引っかかりを覚えた。
「同じ運命って何ですか?」
「お嬢さん、君は私たち竜がどれくらい生きてきているか知っているかな?」
「いえ。以前、1,000を超えていそうな竜が見つかったという文献は読んだ覚えはありますけど……」
「うん。そうだね。平穏に暮らしてきた者たちはそれくらい超えているよ。私自身もたぶん2000は超えているはずだ」
「そんなに?」
想像もできないほど長い年月を生きているという事に、リーシャは驚きで何といえばいいかわからなくなった。
(本当に竜がそんなに長生きだなんて……)
竜王はリーシャの目を丸くしている表情を見てクスッと笑うと話を続けた。
「ただ、私ほど生きているものは他にはいないし、天寿をまっとうした竜がいないから、私たちは自分たちの命の限界というものがわからないんだ。私もどこまで生きていられるかわからない。まあ、とりあえず今は、私たち竜という生き物が君たちよりとても長生きなんだって事さえわかっていてくたらそれでいいよ」
「はい」
リーシャは素直に頷いた。そして竜王が言わんとしている同じ運命とはどういうことなのかを考え始めた。どうせ彼は素直に教えてくれる気はないのだろう。
(今の言い方からすると、竜が人間よりも長く生きる生き物ってことが関わってるのは間違いないはず。運命……辿っていった…………過去形……?)
嫌な予感が這い上がってきた。
リーシャは自分の予測が間違っていてほしいと思いながら、そっと竜王へ視線を向けた。
「もしかして、竜王様が伝えたかったことは人間と番った竜は寿命が短くなるとかそういう話ですか?」
竜王は寂し気に微笑んだ。
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