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巨大な訪問者
敵か味方か(1)
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「竜王って、王都で会った国王ってのと同じで、竜の国の王様って事だよな? そんな奴がこんなとこまで何しに来たんだよ。まさかあの雷竜っていうやつを殺したから復讐ってやつをしに来たのか?」
ルシアが緊張した面持ちで、低く唸るように言った。
ピリピリとした重たい空気にリーシャは息苦しさを感じていた。
竜王は緊張と警戒で口を閉じて固まってしまっているリーシャたちに向けて、相変わらずの穏やかそうな声を発した。
「私はね、人間側についた同胞がどんな子たちなのかを見に来ただけだよ。助言が必要な状況になっているかもしれないし、それとは別に確かめたいこともあったから」
そう言った竜王の目線はリーシャの方を向いていた。
それに気付いたリーシャは、どうやら確かめたいことというのは自分に関する事なのだとすぐに理解した。何か気に障る事を何かしでかしてしまっていたのだろうかという不安が襲い掛かってくる。
けれど、竜王がリーシャを見つめる瞳は懐かしむような、どこか悲しく感じているような視線だった。
「あの、私に何か?」
リーシャは視線の意味がわからず、困惑気味の声で問いかけた。
場の空気を和らげようという竜王なりの配慮なのか彼の口は弧を描き、これまでで一番親しみを持てる表情をしていた。
「いや、用事があるわけではないよ。ただ、ファイに言われたことを確かめてみたくなっただけ。君を見ていると懐かしい奴を思い出すって言われてね。彼もそれなりに古い世代の竜だから、アイツの事を知っていたんだ。実際に君に会ってみたら全くその通りだったものだから、つい懐かしくて眺めてしまった。とはいえ、女の子をじっと見るのは失礼だったね。ごめんね」
「い、いえ……」
見つめられていた理由はわかったけれど、また1つ謎を投下されてしまった。
(アイツ?)
この場では竜王にしかわからない回答にリーシャは眉をひそめた。
いったい誰に似ているというのかさっぱりだった。
ただ言えるのは、その似ているという相手は人間ではなく竜。誰なのか聞いたところでリーシャにはわからないだろうという事だけだ。
「見られるのは別にかまわないんですけど、アイツっていったい。その懐かしい方はそんなに私と似ていらっしゃるんですか?」
途端に竜王の表情が曇った。
その顔でなんとなくアイツと呼ばれる相手の今を察したリーシャは慌て、自分の問いを打ち消そうと言葉を続けざまに言った。
「あの、言いにくいことでしたら聞き流してください」
「いや、問題ないよ。アイツっていうのはかつて共に戦火を生き抜いた同胞の事だ。人の手に落ちてしまって今はもういないけれど。思い出すと言っても、顔が似てるとかそういうのじゃなくて、雰囲気とでもいうのかな? ただ君から何となく、アイツを思い出させるような懐かしい気配を感じるんだ」
リーシャは目を伏せた。
(やっぱり……)
竜王は寂し気に、そして懐かしむような事を言っていたのだ。少し考えればアイツという竜の今はわかったはずだ。
リーシャは不躾な質問をしてしまったと申し訳なく思った。
ルシアが緊張した面持ちで、低く唸るように言った。
ピリピリとした重たい空気にリーシャは息苦しさを感じていた。
竜王は緊張と警戒で口を閉じて固まってしまっているリーシャたちに向けて、相変わらずの穏やかそうな声を発した。
「私はね、人間側についた同胞がどんな子たちなのかを見に来ただけだよ。助言が必要な状況になっているかもしれないし、それとは別に確かめたいこともあったから」
そう言った竜王の目線はリーシャの方を向いていた。
それに気付いたリーシャは、どうやら確かめたいことというのは自分に関する事なのだとすぐに理解した。何か気に障る事を何かしでかしてしまっていたのだろうかという不安が襲い掛かってくる。
けれど、竜王がリーシャを見つめる瞳は懐かしむような、どこか悲しく感じているような視線だった。
「あの、私に何か?」
リーシャは視線の意味がわからず、困惑気味の声で問いかけた。
場の空気を和らげようという竜王なりの配慮なのか彼の口は弧を描き、これまでで一番親しみを持てる表情をしていた。
「いや、用事があるわけではないよ。ただ、ファイに言われたことを確かめてみたくなっただけ。君を見ていると懐かしい奴を思い出すって言われてね。彼もそれなりに古い世代の竜だから、アイツの事を知っていたんだ。実際に君に会ってみたら全くその通りだったものだから、つい懐かしくて眺めてしまった。とはいえ、女の子をじっと見るのは失礼だったね。ごめんね」
「い、いえ……」
見つめられていた理由はわかったけれど、また1つ謎を投下されてしまった。
(アイツ?)
この場では竜王にしかわからない回答にリーシャは眉をひそめた。
いったい誰に似ているというのかさっぱりだった。
ただ言えるのは、その似ているという相手は人間ではなく竜。誰なのか聞いたところでリーシャにはわからないだろうという事だけだ。
「見られるのは別にかまわないんですけど、アイツっていったい。その懐かしい方はそんなに私と似ていらっしゃるんですか?」
途端に竜王の表情が曇った。
その顔でなんとなくアイツと呼ばれる相手の今を察したリーシャは慌て、自分の問いを打ち消そうと言葉を続けざまに言った。
「あの、言いにくいことでしたら聞き流してください」
「いや、問題ないよ。アイツっていうのはかつて共に戦火を生き抜いた同胞の事だ。人の手に落ちてしまって今はもういないけれど。思い出すと言っても、顔が似てるとかそういうのじゃなくて、雰囲気とでもいうのかな? ただ君から何となく、アイツを思い出させるような懐かしい気配を感じるんだ」
リーシャは目を伏せた。
(やっぱり……)
竜王は寂し気に、そして懐かしむような事を言っていたのだ。少し考えればアイツという竜の今はわかったはずだ。
リーシャは不躾な質問をしてしまったと申し訳なく思った。
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