141 / 419
巨大な訪問者
思案(2)
しおりを挟む
「えーっとね、本を読んでるうちに新しく合成魔法を作りたいなぁって思い始めちゃって。けど、もういろいろ試しちゃってるから、なかなかいい案が思いつかなくてさ。それをずっと考えてたの。あっ! エリアルも何か思いついたら教えてくれると嬉しいな」
リーシャは動揺を悟られないようにそれっぽいことを、本当のことを言っているような顔で並べ連ねた。嘘がバレないか動揺し、鼓動を大きくした自分の心臓の動きを感じていた。
エリアルは何も言わず、リーシャのことを見つめた。
「どうしたの?」
「……それ、噓でしょ。ねぇちゃん、魔法のこと考えてるときはいつも真剣な顔してるもん。さっきのねぇちゃんはなんか、ヒャクメンソウ? っていうんだっけ? 顔がすっごい変わってたから絶対違う」
「えっ……」
真実を見抜こうとするように、じっと自分を見てくる視線に耐え切れなくなったリーシャはついに目を泳がせてしまった。
(絶対に騙されてくれると思ってたのに……)
まさかエリアルにこうもあっさり嘘を見破られるとは微塵も思っていなかったリーシャの体は動揺で硬直していた。
それでもなお、エリアルの追及は続く。
「ほんとは何考えてたの?」
「……」
リーシャは口を結んで必死に考えた。
本人を目の前にして、そう簡単に「エリアルたち3兄弟とのこれからについて考えていました」などと言えるわけがない。
かといってすぐに先ほど以上の言い訳を思いつけるはずもなく、リーシャは観念するしかなかった。
それに仮に誤魔化せたとしても、このまま1人で悩み続けたところで結論に辿り着ける自信もない。
悩みの一端を担っている本人相手に相談するのもどうかとはわかってはいるけれど、これが自分の今の現状なのだという事を知ってもらった方がいいような気さえし始めていた。
「はぁ……エリアルたちのことを考えてたんだよ」
「僕たちのこと?」
「そう。ハンナに3人とのこれからの事をちゃんと考えろって言われちゃって……」
エリアルの背筋がピンと伸びた。
これまで全力で拒否するわけでなく、かといって受け入れようとしているわけでもなく、その手の話を避け続けていたリーシャが進んでその事について考えていたのだ。
そんな思いもよらぬ出来事にエリアルの関心が向かないわけがない。
「……それで、ねぇちゃんは? これからどうしたいと思ってるの? やっぱり僕らとは番になりたくない?」
「わからない。このまま4人で暮らせたらいいなっていうのは今でも思ってる……けど、その、誰とつ、番になってもいいかとか考えてると、なんだかよくわからないんだけど、その……モヤっとするというか……」
リーシャの声は、恥ずかしさで徐々に消え入る声のようになっていった。
困った顔をしているとエリアルの口が小さく動いた。
「誰と、じゃなくてもいいんだけどなぁ」
リーシャにもエリアルが何かを言った事だけはわかった。
けれど、息が漏れただけのような小さな声と小さな口の動きのせいで、何を言ったのかまではわからなかった。
リーシャは動揺を悟られないようにそれっぽいことを、本当のことを言っているような顔で並べ連ねた。嘘がバレないか動揺し、鼓動を大きくした自分の心臓の動きを感じていた。
エリアルは何も言わず、リーシャのことを見つめた。
「どうしたの?」
「……それ、噓でしょ。ねぇちゃん、魔法のこと考えてるときはいつも真剣な顔してるもん。さっきのねぇちゃんはなんか、ヒャクメンソウ? っていうんだっけ? 顔がすっごい変わってたから絶対違う」
「えっ……」
真実を見抜こうとするように、じっと自分を見てくる視線に耐え切れなくなったリーシャはついに目を泳がせてしまった。
(絶対に騙されてくれると思ってたのに……)
まさかエリアルにこうもあっさり嘘を見破られるとは微塵も思っていなかったリーシャの体は動揺で硬直していた。
それでもなお、エリアルの追及は続く。
「ほんとは何考えてたの?」
「……」
リーシャは口を結んで必死に考えた。
本人を目の前にして、そう簡単に「エリアルたち3兄弟とのこれからについて考えていました」などと言えるわけがない。
かといってすぐに先ほど以上の言い訳を思いつけるはずもなく、リーシャは観念するしかなかった。
それに仮に誤魔化せたとしても、このまま1人で悩み続けたところで結論に辿り着ける自信もない。
悩みの一端を担っている本人相手に相談するのもどうかとはわかってはいるけれど、これが自分の今の現状なのだという事を知ってもらった方がいいような気さえし始めていた。
「はぁ……エリアルたちのことを考えてたんだよ」
「僕たちのこと?」
「そう。ハンナに3人とのこれからの事をちゃんと考えろって言われちゃって……」
エリアルの背筋がピンと伸びた。
これまで全力で拒否するわけでなく、かといって受け入れようとしているわけでもなく、その手の話を避け続けていたリーシャが進んでその事について考えていたのだ。
そんな思いもよらぬ出来事にエリアルの関心が向かないわけがない。
「……それで、ねぇちゃんは? これからどうしたいと思ってるの? やっぱり僕らとは番になりたくない?」
「わからない。このまま4人で暮らせたらいいなっていうのは今でも思ってる……けど、その、誰とつ、番になってもいいかとか考えてると、なんだかよくわからないんだけど、その……モヤっとするというか……」
リーシャの声は、恥ずかしさで徐々に消え入る声のようになっていった。
困った顔をしているとエリアルの口が小さく動いた。
「誰と、じゃなくてもいいんだけどなぁ」
リーシャにもエリアルが何かを言った事だけはわかった。
けれど、息が漏れただけのような小さな声と小さな口の動きのせいで、何を言ったのかまではわからなかった。
0
お気に入りに追加
214
あなたにおすすめの小説
純潔の寵姫と傀儡の騎士
四葉 翠花
恋愛
侯爵家の養女であるステファニアは、国王の寵愛を一身に受ける第一寵姫でありながら、未だ男を知らない乙女のままだった。
世継ぎの王子を授かれば正妃になれると、他の寵姫たちや養家の思惑が絡み合う中、不能の国王にかわってステファニアの寝台に送り込まれたのは、かつて想いを寄せた初恋の相手だった。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました
平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。
騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。
そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる