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魔法学校

兄弟対決(3)

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「負けるってわかってても、1回くらい成功させとかねぇとかっこ悪いからな」

 ルシアはそうぼそりと呟くと、慎重に魔力を集め始めた。リーシャに指摘された通り魔力の量に注意し、先ほどよりも多くの魔力を1点に集めている。

「水よ!」

 十分な量の魔力で作られた水の球は、姿を保ったまま的目掛けて放たれた。
 飛んでいく方向も完璧で、命中した的は水気を帯びた。

「おっし!」

 ルシアは嬉しそうに両腕に力を込めた。
 リーシャもそんなルシアを見て、胸の奥から込み上げてくる喜びが溢れ出た。

「やった! すごいよ、ルシア! 今度は成功だね」
「へへっ。前に比べたらすごい成長ぶりだろ」
「そ、そうだね」

 ルシアがあまりにも自信満々な様子で自分からそんなことを言うため、リーシャはどう答えるのが正解なのかがわからずに苦笑いになっていた。

(これは、もっとのってあげた方がよかったのかな?)

 そうリーシャは思ったけれど、ルシア本人が自分の功績に満足して周りの反応は気にしていないようだったので、それ以上の追及はやめておいた。
 ルシアが観戦している集団に戻ってくるとエリアルが軽やかに1歩踏み出した。そしてくるりと向きを変え、ルシアに向けて宣言した。

「じゃあ次、僕の番! せっかく成功したところ悪いけど、僕がこれで決めちゃうからね」
「緊張で盛大に外すなよ」

 ルシアが悪戯っぽく言うと、エリアルは口を尖らせた。

「大丈夫だもん。にぃちゃんこそ、負けそうだからって邪魔しないでよ?」
「んなことするわけねぇだろ。つーか、今までお前にそんな嫌がらせした事ねぇだろうが」
「えー。だって、ねぇちゃんが関わってくるとにぃちゃんも何するかわかんないじゃん」
「そんなことは……」

 ないと言いたいのだろうけど、否定できない自分がいるようでルシアは眉間に皺を寄せて明後日の方を向いてしまった。

「じゃあ、頑張ってくるね!」

 ステファニーが「おにーちゃん、がんばれぇ」と声援を送ると、エリアルは大きく手を振って返していた。

「ふう……」

 定位置に立つとエリアルは瞼を閉じ、魔力を集め始めた。まわりから見ても集中しているのがわかるほど真剣な表情をしている。
 リーシャの目には、これまでで1番上手く魔力を集められているように見えていた。まさに集大成と言えるほどだ。
 エリアルの瞳は開かれ、視線が的を捉えた。

「炎よ……」

 手がゆっくりと的の方へと向けられた。
 標準が合わさるとボンッという音と共に炎が的へと飛ばされた。
 炎は大きく、標的を捕らえることに成功した。
 そして、成果はそれだけでは納まらなかった。
 的は水気を帯びていたにもかかわらず大きく燃え上がり、炎が消えた後の姿は形をとどめているものの真っ黒になっていた。戦闘にも使える十分な威力だ。
 燃え上がっていた炎が消えると同時に、エリアルの体が集中の糸が切れたようにビクリと揺れた。
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