上 下
131 / 419
魔法学校

兄弟対決(2)

しおりを挟む
「……くちづけたこと、謝らないからな」
「え?」

 リーシャは目を丸くした。

(いきなりその話⁉)

 持ち出されるとは思っていなかった話題にどう返していいかわからなかった。
 けれど、やはりリーシャとしてはあの出来事は未だに尾を引いているのだ。多少なりとも反省はしてほしいところだった。

「えーっと……そこは謝ってほしい、かな。あの時いきなりで……その、びっくりしたんだから」
「後悔もしていない」
「えっ。あの、ノアさん? 聞いてる?」
「ああ、聞いている。ああでもしなければリーシャ、お前は俺たちのことをこれからも庇護すべき対象としか見なかった。そう思わないか?」
「そっ、それは……」

 否定ずにリーシャは口ごもった。
 ノアはそんなリーシャに対して日ごろの憂さを晴らすように、リーシャに追い打ちをかける。

「俺たちはお前と番いたいと言っているのに、そういう意識を持とうともしていなかったんだからな」

 3兄弟といると、ふとした拍子に胸が騒ぎだしたことが何度かあった。
 もしかして彼らにそう言う好意を抱いているのでは、と思う事もあったけれど、まさかそんな事はと頭から払いのけ、これまでずっと深く追及してこなかった。だからノアの言った通り、好きだの恋だのそういった意識で彼らを見ようとはしていなかったというのは間違いではない。
 リーシャは図星をつかれ、口を閉ざした。
 会話が止まると、それを横で聞いていたルシアが2人に声をかけた。

「なぁ、話は終わったのか?」
「ああ」
「そっか。んじゃ、続き再開するか。次は俺だな」

 言いたいことをぶつけたノアはどこかすっきりしたような顔で、勝負に挑もうとするルシアを見ていた。
 リーシャは不服そうにノアを見上げた。
 ノアはその視線にすぐに気がつき、リーシャの方へ視線を落とした。

「今はあいつらのことを見てやれ。お前にいいところを見せようと必死なんだ」
「ノアが変なこと言うから……」
「……」
「……なんでもない」

 ノアに無言で横目で見られ、リーシャは咄嗟に謝ってしまった。
 ねちねちと文句を言われるよりも、ただ無言で見つめられる方が逃げ出したいという本能が強く働いてしまう。

「はあ……」

 リーシャは大きなため息をついた。
 けれどどれだけ逃げ出したくても今は我慢しなければならない。ノアの言う通り、ルシアとエリアルは真剣勝負をしているのだ。
 動機がどうであれ、彼らは今日まで努力し、その成果をリーシャに見せようとしている。それにリーシャはその審判を頼まれ、引き受けたのだから。
 リーシャは邪念を払拭しようと頭を横に振るった。

(今は考えるのをやめよう。ルシアたちが頑張った成果を見てあげないと)

 リーシャは再び的と向かい合うルシアのことを見た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

処理中です...