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魔法学校
異質な魔法(2)
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「倒れた理由は、最後に使った魔法が原因かもしれないって聞いたんだけど、そうなのか?」
「まあ、そうだろうね。いつものことだし」
これまで何度かあの魔法を使ってきたけれど、いつも発動直後からの記憶が途切れていた。
「なあ、リーシャ。あの魔法、ヤバい魔法なのか?」
「よくわからない。魔法をいろいろ試してたら偶然使えるようになっただけだから。毎回使った後倒れちゃってるみたいだし、なるべく使わないようにはしてるんだけど……たまに衝動に駆られて使っちゃうんだよね。先生たちは何か言ってた?」
「言ってたっていえば言ってたけど、詳しくはわかんねぇらしい……」
1日前――
「リーシャ! おい、しっかりしろ! リーシャ‼」
「ねぇちゃん死んじゃだめぇぇ」
ルシアとエリアルは取り乱し、目を閉じたリーシャに向かって必死に呼びかけていた。
「どいて!」
ちょうどステファニーを送り届けて戻って来たナタリーが慌ててルシアを押しのけ、リーシャの手首に指をあてた。
心臓は正常に鼓動していた。胸の隆起もしっかりとしている。
「よかった……」
教え子が無事だとわかったナタリーは安堵の息をこぼした。
ナタリーが言ったそれだけの言葉では安心できなかったルシアは彼女の肩を掴んだ。
「なぁ! リーシャは大丈夫なのか⁉ なんで倒れたんだよ‼」
「ひっ! だ、大丈夫。気を失ってるだけだから」
倒れているリーシャの姿を見て慌てていたナタリーは、ルシアたちの存在を認識できていなかったようだ。
自分が押しのけた相手が、リーシャの連れている竜の1人だったという事に気がついた途端、彼女は体をビクッと震わせていた。
ルシアはナタリーのその様子に気がついていたものの、リーシャが倒れた今、他人のそんな些細な仕草などどうでもよかったためとくに気にすることなく問い続けた。
「さっきの炎の魔法が原因なのか?」
「たぶん、そう……そ、それと、厳密に言うと、たぶんあれは炎の属性魔法じゃなくて、おそらく闇の属性魔法……かと……」
2人のやり取りを後ろで聞いていたノアが目を細めた。
「闇?」
いろいろと書物を読み進めていたノアにはその異常さがすぐにわかった。
ルシアもノアほどの知識量はないけれど、自身が学んでいたことと齟齬が生じている事はすぐに気がついた。
「闇って……人間が使える魔法じゃねぇんじゃなかったか?」
ルシアの問いかけに、ナタリーが頷いた。
「いっ、今わかってるのは、闇魔法の性質と発動に必要な魔力量から、人間の魔力では使う事は無理だろうってことくらいです。闇の魔法を使えるのは、アンデッドって言われている系統の魔物しか確認されていません。その魔物は稀に闇夜に現れて、日の光に当たるとすぐに消えてしまうので遭遇率が低いし、その上どの魔物もSランク以上の強さなので検体を捕獲するのが困難なんです。そ、それで闇魔法の詳しいことはわかってないんです……」
そう言ったナタリーをはじめ、リーシャを見つめる教員たちは心配そうな瞳を向けていた。
けれどそれと同時に、人間に使えるはずのない闇魔法をリーシャが使ったという事で、その場にいる全員がリーシャの異質さとそこから来る恐怖心をうっすらと感じているようだった。
リーシャの意識があったとしたら、きっと今の状況に苦しんだだろう。気を失ってしまってある意味よかったのかもしれない。
リーシャへ向けられている感情をどうにか紛らわせたいと思ったルシアは、聞いてもどうしようもないとわかっていた事を問いかけた。
「ほんとにそのあんでっど? っていうやつら以外に使えるやつはいないのかよ。リーシャが使えてたんだ。探したらいるんじゃないのか?」
「いえ。使える人がいたら噂になっているかと。そんな噂は聞いたことはないし、魔物ですらそんな話は……」
何かをはたと思い出したように言葉を止めたナタリーは、深く考え込み始めた。
「まあ、そうだろうね。いつものことだし」
これまで何度かあの魔法を使ってきたけれど、いつも発動直後からの記憶が途切れていた。
「なあ、リーシャ。あの魔法、ヤバい魔法なのか?」
「よくわからない。魔法をいろいろ試してたら偶然使えるようになっただけだから。毎回使った後倒れちゃってるみたいだし、なるべく使わないようにはしてるんだけど……たまに衝動に駆られて使っちゃうんだよね。先生たちは何か言ってた?」
「言ってたっていえば言ってたけど、詳しくはわかんねぇらしい……」
1日前――
「リーシャ! おい、しっかりしろ! リーシャ‼」
「ねぇちゃん死んじゃだめぇぇ」
ルシアとエリアルは取り乱し、目を閉じたリーシャに向かって必死に呼びかけていた。
「どいて!」
ちょうどステファニーを送り届けて戻って来たナタリーが慌ててルシアを押しのけ、リーシャの手首に指をあてた。
心臓は正常に鼓動していた。胸の隆起もしっかりとしている。
「よかった……」
教え子が無事だとわかったナタリーは安堵の息をこぼした。
ナタリーが言ったそれだけの言葉では安心できなかったルシアは彼女の肩を掴んだ。
「なぁ! リーシャは大丈夫なのか⁉ なんで倒れたんだよ‼」
「ひっ! だ、大丈夫。気を失ってるだけだから」
倒れているリーシャの姿を見て慌てていたナタリーは、ルシアたちの存在を認識できていなかったようだ。
自分が押しのけた相手が、リーシャの連れている竜の1人だったという事に気がついた途端、彼女は体をビクッと震わせていた。
ルシアはナタリーのその様子に気がついていたものの、リーシャが倒れた今、他人のそんな些細な仕草などどうでもよかったためとくに気にすることなく問い続けた。
「さっきの炎の魔法が原因なのか?」
「たぶん、そう……そ、それと、厳密に言うと、たぶんあれは炎の属性魔法じゃなくて、おそらく闇の属性魔法……かと……」
2人のやり取りを後ろで聞いていたノアが目を細めた。
「闇?」
いろいろと書物を読み進めていたノアにはその異常さがすぐにわかった。
ルシアもノアほどの知識量はないけれど、自身が学んでいたことと齟齬が生じている事はすぐに気がついた。
「闇って……人間が使える魔法じゃねぇんじゃなかったか?」
ルシアの問いかけに、ナタリーが頷いた。
「いっ、今わかってるのは、闇魔法の性質と発動に必要な魔力量から、人間の魔力では使う事は無理だろうってことくらいです。闇の魔法を使えるのは、アンデッドって言われている系統の魔物しか確認されていません。その魔物は稀に闇夜に現れて、日の光に当たるとすぐに消えてしまうので遭遇率が低いし、その上どの魔物もSランク以上の強さなので検体を捕獲するのが困難なんです。そ、それで闇魔法の詳しいことはわかってないんです……」
そう言ったナタリーをはじめ、リーシャを見つめる教員たちは心配そうな瞳を向けていた。
けれどそれと同時に、人間に使えるはずのない闇魔法をリーシャが使ったという事で、その場にいる全員がリーシャの異質さとそこから来る恐怖心をうっすらと感じているようだった。
リーシャの意識があったとしたら、きっと今の状況に苦しんだだろう。気を失ってしまってある意味よかったのかもしれない。
リーシャへ向けられている感情をどうにか紛らわせたいと思ったルシアは、聞いてもどうしようもないとわかっていた事を問いかけた。
「ほんとにそのあんでっど? っていうやつら以外に使えるやつはいないのかよ。リーシャが使えてたんだ。探したらいるんじゃないのか?」
「いえ。使える人がいたら噂になっているかと。そんな噂は聞いたことはないし、魔物ですらそんな話は……」
何かをはたと思い出したように言葉を止めたナタリーは、深く考え込み始めた。
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