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魔法学校
練習と勝負(2)
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そんなやりとりを経て、リーシャはステファニーだけでなくノアたち3兄弟にも魔法、もとい魔力のコントロールの方法を教えるようになった。
正直なところ、ノアとルシアはまだ魔力を全くと言っていいほど制御できていない。火や水に変換する以前に、魔力を1点に集めきる事ができずにいるというのが現状だ。
今も両手を胸の前で組み、魔力をその手に集めようと集中している。
突然ルシアが肩を落とした。
「あーあ、また魔力がどっかいっちまった。兄貴は?」
「俺もだ」
「うーん。やっぱ俺らじゃ無理なのかなぁ。なぁリーシャ、どう思う?」
ルシアはリーシャの方へ視線を向けた。
リーシャが見たところ全くセンスがないというわけではなさそうだった。
魔道具に魔力を流すのと、魔力を体のある1点に集め、留めるというのとでは難易度に雲泥の差がある。魔法にはできずともこの短期間でコツを多少なりとも掴めているのは、それなりにセンスはあるという事だ。
黒竜は身体能力に特化していてあまり息吹を使わないという事から、黒竜という種自体が魔力を操ることを苦手としているのだろう。
けれど、黒竜も竜であることには間違いない。魔法を使えないという事はないはずだ。
リーシャは3兄弟たちも練習を重ねれば、魔道具を使わずに魔法を発動できるようになると思っていた。
「練習を始めたばかりの頃は、みんなそんな感じだよ。使えるようになるって」
「けどさ、あれ……」
ルシアの指さす方向にはエリアルがいた。掌の上には小さいながら火の玉が浮かんでいる。
エリアルは兄2人に比べると上達スピードが明らかに早かった。
「ねぇちゃん! 火、またできた! 見て見て」
嬉しそうにエリアルがリーシャの方へ体を向けると、振り向いた時にできた風で灯った火はすぐに消えてしまった。
「あーあ。消えちゃった」
「ちゃんと見てたよ。数日で一瞬でもこんなに形を作れるようになれるなんて、エリアルはすごいよ」
「そ、そう? えへへ」
エリアルははにかむように笑った。
(それにしても、竜の姿に戻ろうとしていた時はあんなに苦労したのに。正直、エリアルに魔法の才能がこんなにあるとは思ってなかったんだけどな)
リーシャは内心では非常に驚いていた。
そしてそう思ったのはリーシャだけではなかった。上達の差を見せつけられたルシアは、つまらなさそうにしていた。
「ちぇっ。竜の姿に戻れるようになるのはあんなに苦労したのに、なぁんで魔法はとっとと上達しちまうんだろうなぁ」
「まぁ、人には得手不得手があるんだから。もちろん竜にもあるだろうしね。ルシアはルシアでゆっくり上手くなっていけばいいよ」
リーシャはルシアの背中をポンポンと叩いた。
「はぁあぁあぁぁ。そうは言われても、そろそろやる気が失せてきた」
「いや待って。そろそろって、まだそんなに練習してないじゃない」
ステファニーに魔法を教え始めてからは5日経過しているけれど、3兄弟に教え始めてからはまだ2日しか経っていない。やる気を失うには早すぎる。
「けどさぁ、ここまで何の上達のかけらも見えないとなぁ……」
項垂れていたルシアが突然バッと顔を上げた。
「そうだ! リーシャ、俺やる気が出る方法思いついたんけど!」
リーシャは眉間に皺を寄せた。ろくな提案じゃないのがなんとなく予想できたからだ。
「聞かない方がいい気がするけど、一応聞いてあげる」
「あのさ、あの的に魔法を当てられるようになったら、リーシャからキスしてくれよ!」
リーシャの眉間の皺がさらに深くなった。
「やっぱり。はぁ……まぁたそんなこと言って」
ルシアは何かとかこつけて、リーシャとこういった接触をご褒美と称して要求してくるようになっていた。無理やりしてくるようなことはないのでいつも受け流すようにしている。
ルシアは棄却されないように食い下がった。
「いいだろ、減るもんじゃないんだし。それに、そろそろそれくらい俺らとしてくれてもいいだろ? なぁ、兄貴?」
「……」
「兄貴?」
ノアの沈黙に嫌な予感がしたのか、ルシアはリーシャの方を見た。
「……リーシャ。なんで顔赤くしてんだよ……」
リーシャは恥ずかし気に、手で口元を隠している。
いつもは鈍いルシアではあるけれど、珍しくそれで察してしまったようだ。
「はっ! もしかして! 兄貴、正直に言ってくれ!」
「……お前の思ってる通りだろう」
「嘘だろ……って事は、最近2人の様子が変だったのはそう言う事か」
ついにリーシャの唇がノアに奪われてしまったことがルシアにバレてしまった。幸い魔法の練習に熱中しているエリアルには届いていないようだ。
事実を知ってしまったルシアは項垂れた。
正直なところ、ノアとルシアはまだ魔力を全くと言っていいほど制御できていない。火や水に変換する以前に、魔力を1点に集めきる事ができずにいるというのが現状だ。
今も両手を胸の前で組み、魔力をその手に集めようと集中している。
突然ルシアが肩を落とした。
「あーあ、また魔力がどっかいっちまった。兄貴は?」
「俺もだ」
「うーん。やっぱ俺らじゃ無理なのかなぁ。なぁリーシャ、どう思う?」
ルシアはリーシャの方へ視線を向けた。
リーシャが見たところ全くセンスがないというわけではなさそうだった。
魔道具に魔力を流すのと、魔力を体のある1点に集め、留めるというのとでは難易度に雲泥の差がある。魔法にはできずともこの短期間でコツを多少なりとも掴めているのは、それなりにセンスはあるという事だ。
黒竜は身体能力に特化していてあまり息吹を使わないという事から、黒竜という種自体が魔力を操ることを苦手としているのだろう。
けれど、黒竜も竜であることには間違いない。魔法を使えないという事はないはずだ。
リーシャは3兄弟たちも練習を重ねれば、魔道具を使わずに魔法を発動できるようになると思っていた。
「練習を始めたばかりの頃は、みんなそんな感じだよ。使えるようになるって」
「けどさ、あれ……」
ルシアの指さす方向にはエリアルがいた。掌の上には小さいながら火の玉が浮かんでいる。
エリアルは兄2人に比べると上達スピードが明らかに早かった。
「ねぇちゃん! 火、またできた! 見て見て」
嬉しそうにエリアルがリーシャの方へ体を向けると、振り向いた時にできた風で灯った火はすぐに消えてしまった。
「あーあ。消えちゃった」
「ちゃんと見てたよ。数日で一瞬でもこんなに形を作れるようになれるなんて、エリアルはすごいよ」
「そ、そう? えへへ」
エリアルははにかむように笑った。
(それにしても、竜の姿に戻ろうとしていた時はあんなに苦労したのに。正直、エリアルに魔法の才能がこんなにあるとは思ってなかったんだけどな)
リーシャは内心では非常に驚いていた。
そしてそう思ったのはリーシャだけではなかった。上達の差を見せつけられたルシアは、つまらなさそうにしていた。
「ちぇっ。竜の姿に戻れるようになるのはあんなに苦労したのに、なぁんで魔法はとっとと上達しちまうんだろうなぁ」
「まぁ、人には得手不得手があるんだから。もちろん竜にもあるだろうしね。ルシアはルシアでゆっくり上手くなっていけばいいよ」
リーシャはルシアの背中をポンポンと叩いた。
「はぁあぁあぁぁ。そうは言われても、そろそろやる気が失せてきた」
「いや待って。そろそろって、まだそんなに練習してないじゃない」
ステファニーに魔法を教え始めてからは5日経過しているけれど、3兄弟に教え始めてからはまだ2日しか経っていない。やる気を失うには早すぎる。
「けどさぁ、ここまで何の上達のかけらも見えないとなぁ……」
項垂れていたルシアが突然バッと顔を上げた。
「そうだ! リーシャ、俺やる気が出る方法思いついたんけど!」
リーシャは眉間に皺を寄せた。ろくな提案じゃないのがなんとなく予想できたからだ。
「聞かない方がいい気がするけど、一応聞いてあげる」
「あのさ、あの的に魔法を当てられるようになったら、リーシャからキスしてくれよ!」
リーシャの眉間の皺がさらに深くなった。
「やっぱり。はぁ……まぁたそんなこと言って」
ルシアは何かとかこつけて、リーシャとこういった接触をご褒美と称して要求してくるようになっていた。無理やりしてくるようなことはないのでいつも受け流すようにしている。
ルシアは棄却されないように食い下がった。
「いいだろ、減るもんじゃないんだし。それに、そろそろそれくらい俺らとしてくれてもいいだろ? なぁ、兄貴?」
「……」
「兄貴?」
ノアの沈黙に嫌な予感がしたのか、ルシアはリーシャの方を見た。
「……リーシャ。なんで顔赤くしてんだよ……」
リーシャは恥ずかし気に、手で口元を隠している。
いつもは鈍いルシアではあるけれど、珍しくそれで察してしまったようだ。
「はっ! もしかして! 兄貴、正直に言ってくれ!」
「……お前の思ってる通りだろう」
「嘘だろ……って事は、最近2人の様子が変だったのはそう言う事か」
ついにリーシャの唇がノアに奪われてしまったことがルシアにバレてしまった。幸い魔法の練習に熱中しているエリアルには届いていないようだ。
事実を知ってしまったルシアは項垂れた。
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