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出会い
兄と妹(2)
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1時間かかると思っていた道のりも、魔法のおかげでほんの20分足らずで駆け抜けることができた。
農場にたどり着くと、シルバーたちの姿を見つけたフリルゲルトが慌てて駆け寄ってきた。
「あ、あんたたち何してたんだい! どうにかしてくだされ! このままだと私たちまで食われてしまう! 食われなかったとしても生活が出来なってしまうじゃないか」
農場へ辿り着いていたスカイディーパは予想通り、家畜を襲っている最中だった。
空中のスカイディーパは家畜に狙いを定めると一気に急降下し、捕らえるとすぐにまた上空へと飛び去って行った。
現状では剣士であるシルバーに出番はない。リーシャに頼るしかなかった。
「リーシャ、打ち落とせるか?」
「やってみます! 土よ、巨大な槍に!」
リーシャが空へと掲げた両手の上に、魔法で作られた巨大な石の槍先が現れた。
その槍の巨大さを見たシルバーとフリルゲルトは目を見開き、絶句した。
スカイディーパの大きさから考えると、打ち落とそうとするならばかなりの大きさのモノが必要だという事はわかっていた。
けれど打ち落とせるほどの巨大な魔法を、魔法に長けているとはいえこの少女が発動できるとは思っていなかった。それなのにスカイディーパを打ち落とせそうなほどの大きさの土の塊が不意に、突然現れたのだ。
リーシャの魔法の腕を知り、もう驚くことないと思っていたシルバーも、これはさすがに驚かずにはいられなかった。
フリルゲルトは声を震わせた。
「ななななな、なんだいこの大きな石! どこから‼」
「今作りました! 土の有属性魔法で! じゃあ、いきますよ。そぉれっ!」
リーシャはスカイディーパに向かって巨大な槍先を投げつけた。
しかし、土の槍はリーシャの思い描いた軌道には乗らずに大きく逸れ、スカイディーパの横を通過してしまった。
いきなり飛んできた物の存在でスカイディーパはリーシャの存在に気付き、リーシャめがけて急降下を始めた。
「ガルァ‼」
「失敗したぁぁぁぁぁ‼」
リーシャは想定外の事態に慌てた。スカイディーパがリーシャに紫の炎のようなオーラを纏った爪を向け、距離を詰めて来る。
シルバーが思い描いていた展開とは違ってはいたけれど、理由はともあれスカイディーパが高度を下げている。
地面に近づいて来るスカイディーパに向かってシルバーが飛びかかった。
「おらぁ‼」
シルバーの攻撃は見事にスカイディーパの胸を切り裂いた。
身体魔法で強化された脚力で思った以上に飛び上がってしまったため、シルバーはそのままスカイディーパへ衝突してしまった。
突然の切りかかられた痛みで翼の操作を失ったスカイディーパは、シルバーを巨大な体の下敷きにして墜落したのだった。
「シルバ――――‼」
墜落の衝撃が響き渡った直後、リーシャもフリルゲルトもシルバーは死んだと思った。あの巨体に圧し掛かられたのだ。生きているわけがない。
けれどそうはならなかった。
突然スカイディーパが目を見開いたかと思うと、耳を押さえたくなるほどの呻き声を上げた。そして弾かれたように起き上がると、ふらつきながら歩き始めた。
その下からは荒い呼吸をするシルバーが現れた。
「し、死ぬかと思った‼」
下敷きにはされたもののシルバーは生きながらえ、下から剣で攻撃したのだった。
リーシャは目から大粒の涙を流しながら駆け寄り、シルバーの胸に抱き着いた。
「シルバー……大丈夫……ほんとに大丈夫なんだよね?」
抱きしめる両腕に力が込められた。
他人の死を恐れるリーシャの姿にシルバーの胸は痛み、あやす様に背中を叩いた。
「ああ。リーシャの身体強化の魔法のおかげで、巨体に押しつぶされても平気だったみたいだな」
「よかった……また、私のせいで、人が死んじゃったかと」
「また?」
泣き崩れるリーシャの耳にはシルバーの疑問は届いてはいなかった。ただ、ひたすらシルバーの目の前で泣き続けている。
リーシャを宥めよう背をさすっていると、辺りに強い風が巻き起こった。
そこでシルバーは思い出した。まだスカイディーパにとどめを刺していなかったのだと。
スカイディーパを見ると既に飛び立ち、飛び去ろうとしているところだった。
「どけ、リーシャ! まだあいつを倒せてない‼」
シルバーはリーシャを押しのけ立ち上がった。
すでにスカイディーパはかなりの高度で飛行していたため、シルバーの攻撃はもう届きはしない。先ほどの土の槍での攻撃の逸れ具合から見て、リーシャの攻撃も当たらないだろう。
追いかけ、地上に降り立ったところを狙うしかない。
「くそっ! リーシャ、やつを追うぞ! 泣くのは後だ‼」
リーシャがゆらりと立ち上がった。
「待って……私がやる……」
「リーシャ?」
「1つお願いがあるの。私、全力であいつを消し炭にするから、魔力の使い過ぎで多分意識を失うと思う。だから後のこと、お願い」
「は? 何言って……」
リーシャは地面を力強くけると、スカイディーパに向かって空を滑るように飛んで行った。
あっという速さでスカイディーパに追いつくとその背に足をつけ、辺り一帯に響き渡るような大きな声を上げた。
「地獄の炎よ、こいつを喰らいつくせぇぇぇぇぇ‼」
リーシャの足元から、黒い炎が燃え上がった。
その黒い炎は一瞬でスカイディーパの体全体を包み、跡形もなく消し去ってしまった。炭すらも残ってはいない。
そして強力な魔法を使い、魔力を使い果たしたリーシャは意識を失って地面へと落下していったのだった――……
農場にたどり着くと、シルバーたちの姿を見つけたフリルゲルトが慌てて駆け寄ってきた。
「あ、あんたたち何してたんだい! どうにかしてくだされ! このままだと私たちまで食われてしまう! 食われなかったとしても生活が出来なってしまうじゃないか」
農場へ辿り着いていたスカイディーパは予想通り、家畜を襲っている最中だった。
空中のスカイディーパは家畜に狙いを定めると一気に急降下し、捕らえるとすぐにまた上空へと飛び去って行った。
現状では剣士であるシルバーに出番はない。リーシャに頼るしかなかった。
「リーシャ、打ち落とせるか?」
「やってみます! 土よ、巨大な槍に!」
リーシャが空へと掲げた両手の上に、魔法で作られた巨大な石の槍先が現れた。
その槍の巨大さを見たシルバーとフリルゲルトは目を見開き、絶句した。
スカイディーパの大きさから考えると、打ち落とそうとするならばかなりの大きさのモノが必要だという事はわかっていた。
けれど打ち落とせるほどの巨大な魔法を、魔法に長けているとはいえこの少女が発動できるとは思っていなかった。それなのにスカイディーパを打ち落とせそうなほどの大きさの土の塊が不意に、突然現れたのだ。
リーシャの魔法の腕を知り、もう驚くことないと思っていたシルバーも、これはさすがに驚かずにはいられなかった。
フリルゲルトは声を震わせた。
「ななななな、なんだいこの大きな石! どこから‼」
「今作りました! 土の有属性魔法で! じゃあ、いきますよ。そぉれっ!」
リーシャはスカイディーパに向かって巨大な槍先を投げつけた。
しかし、土の槍はリーシャの思い描いた軌道には乗らずに大きく逸れ、スカイディーパの横を通過してしまった。
いきなり飛んできた物の存在でスカイディーパはリーシャの存在に気付き、リーシャめがけて急降下を始めた。
「ガルァ‼」
「失敗したぁぁぁぁぁ‼」
リーシャは想定外の事態に慌てた。スカイディーパがリーシャに紫の炎のようなオーラを纏った爪を向け、距離を詰めて来る。
シルバーが思い描いていた展開とは違ってはいたけれど、理由はともあれスカイディーパが高度を下げている。
地面に近づいて来るスカイディーパに向かってシルバーが飛びかかった。
「おらぁ‼」
シルバーの攻撃は見事にスカイディーパの胸を切り裂いた。
身体魔法で強化された脚力で思った以上に飛び上がってしまったため、シルバーはそのままスカイディーパへ衝突してしまった。
突然の切りかかられた痛みで翼の操作を失ったスカイディーパは、シルバーを巨大な体の下敷きにして墜落したのだった。
「シルバ――――‼」
墜落の衝撃が響き渡った直後、リーシャもフリルゲルトもシルバーは死んだと思った。あの巨体に圧し掛かられたのだ。生きているわけがない。
けれどそうはならなかった。
突然スカイディーパが目を見開いたかと思うと、耳を押さえたくなるほどの呻き声を上げた。そして弾かれたように起き上がると、ふらつきながら歩き始めた。
その下からは荒い呼吸をするシルバーが現れた。
「し、死ぬかと思った‼」
下敷きにはされたもののシルバーは生きながらえ、下から剣で攻撃したのだった。
リーシャは目から大粒の涙を流しながら駆け寄り、シルバーの胸に抱き着いた。
「シルバー……大丈夫……ほんとに大丈夫なんだよね?」
抱きしめる両腕に力が込められた。
他人の死を恐れるリーシャの姿にシルバーの胸は痛み、あやす様に背中を叩いた。
「ああ。リーシャの身体強化の魔法のおかげで、巨体に押しつぶされても平気だったみたいだな」
「よかった……また、私のせいで、人が死んじゃったかと」
「また?」
泣き崩れるリーシャの耳にはシルバーの疑問は届いてはいなかった。ただ、ひたすらシルバーの目の前で泣き続けている。
リーシャを宥めよう背をさすっていると、辺りに強い風が巻き起こった。
そこでシルバーは思い出した。まだスカイディーパにとどめを刺していなかったのだと。
スカイディーパを見ると既に飛び立ち、飛び去ろうとしているところだった。
「どけ、リーシャ! まだあいつを倒せてない‼」
シルバーはリーシャを押しのけ立ち上がった。
すでにスカイディーパはかなりの高度で飛行していたため、シルバーの攻撃はもう届きはしない。先ほどの土の槍での攻撃の逸れ具合から見て、リーシャの攻撃も当たらないだろう。
追いかけ、地上に降り立ったところを狙うしかない。
「くそっ! リーシャ、やつを追うぞ! 泣くのは後だ‼」
リーシャがゆらりと立ち上がった。
「待って……私がやる……」
「リーシャ?」
「1つお願いがあるの。私、全力であいつを消し炭にするから、魔力の使い過ぎで多分意識を失うと思う。だから後のこと、お願い」
「は? 何言って……」
リーシャは地面を力強くけると、スカイディーパに向かって空を滑るように飛んで行った。
あっという速さでスカイディーパに追いつくとその背に足をつけ、辺り一帯に響き渡るような大きな声を上げた。
「地獄の炎よ、こいつを喰らいつくせぇぇぇぇぇ‼」
リーシャの足元から、黒い炎が燃え上がった。
その黒い炎は一瞬でスカイディーパの体全体を包み、跡形もなく消し去ってしまった。炭すらも残ってはいない。
そして強力な魔法を使い、魔力を使い果たしたリーシャは意識を失って地面へと落下していったのだった――……
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