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出会い
夜(2)
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2人は洞窟からさらに離れたところで、腰を下ろすのに丁度良い場所を見つけた。
近くに落ちている木の枝を集めると、リーシャが魔法で火を起こした。
シルバーが火の横で、持参していた保存食を食べていると、リーシャは野草や木の実を口に入れながら包丁で野兎の肉を切り裁き、持参していた調味料で味付けをして焚火で焼いていた。
話題を探していたシルバーは、リーシャの側に置いてある包丁に目がいった。
「その黒い包丁も袋の中に入れてたのか?」
「さすがに危ないものは入れないですよ。取り出すときに怪我をするかもしれませんから。これはさっき砂鉄で作ったんです」
リーシャが黒い包丁を持つと、魔法を解いたのか包丁は元の黒い粉へと姿を変えた。
「はーん。お前の魔法ってホント万能だな。何も持たずに旅に出ようとするのも頷けたわ」
「万能とまではいかないと思いますけど……まあ、必要な物はだいたい魔法で作れますね」
「いや、それを万能っていうんだろーが……」
シルバーは呆れ気味に言った。リーシャが規格外という事がわかり、これくらいではもう驚きはしなかった。
話しを止め黙々と食事をしていると、シルバーはふと夜中の警戒をどうするか考えてなかったことを思い出した。
「そういや、見張りはどうする?」
「見張り?」
リーシャのその反応で、これまでも夜に見張りを立てるという発想がなかったという事はすぐにわかった。
「寝てる間に襲われたらまずいだろ。つーかお前、今までずっと1人だったんだよな? 数日かかるクエストとかはやったことないのか?」
「いえ、普通にありますけど」
「なら、どうしてたんだよ。まさか普通に地面に横になって寝てたってことはないよな?」
「普通? ではないんじゃないでしょうか。寝るのは基本木の上ですね。その方が魔物にバレにくそうなので。まあ、ちょっと寝にくいんですけど」
当然のように言うリーシャにシルバーは片手で頭を抱えた。
(ったく。こんなに危なっかしくて、今までよく無事でいられたな、こいつ……)
シルバーは呆れずにはいられなかった。
「わかった。お前が変わってるってことはよくわかった」
「それ、誉め言葉じゃないですよね?」
リーシャは眉間に皺を寄せた。
「褒めてんだよ。まあそれはいいとして、俺が先に見張りするから、しばらくしたら交代してくれ。んで交代して俺が寝てる間、回りに襲ってくる奴がいないか見ててくれるか」
「……はあ、わかりました」
そう返事はしたものの、話題を逸らされたリーシャは納得いかないという顔をしていた。
食事を終えた2人は思い思いに過ごし始めた。
シルバーは剣の手入れをし、リーシャは魔法で土人形を作って動かして遊んでいた。
時々思い出したかのように話し、終えるとまた思うままに過ごす。
そんな時間を過ごしていると、だんだんとリーシャの瞬きの頻度が増えていった。眠くなってきたようだ。
「眠いなら寝ていいんだぞ。俺が見とくって言ってるだろ?」
「うん。おねがい……し、ます……」
リーシャは地面に躊躇なく寝そべった。
日があるうちはさほど寒くはなかったけれど、日が落ちた今は焚火があるとはいえ少し冷える。
ろくに荷物を持ち運んではいなかったリーシャは、何も掛けずに冷たい地面に転がっていた。
「ほら、もう少しこっちこい」
「うん」
人の温もりが冷えた体に心地よかったのか、リーシャは警戒することなく密着するほどシルバーに近づいた。
そんな無防備なリーシャに、シルバーは自分の膝に掛けている布を半分掛けた。
(昨日まで警戒心の塊だったくせに。たった1日でよくこんなにも懐いたもんだよなぁ)
シルバーは苦笑した。
この少女は何故か1人でいるように努めているようだけれど、それは1人がいいからという理由ではないのは確かだろう。
すぐに懐いてきたのは、母親が亡くなってから寂しい思いをしていたのかもしれない。
シルバーはリーシャの頭を撫でた。
「寒くねぇか?」
「うん……」
安心しきっているリーシャは、そのまますぐに夢の中へと落ちていった。
シルバーはその横でリーシャが起きるまでの間、1人火の番をしながら周りを警戒した。
近くに落ちている木の枝を集めると、リーシャが魔法で火を起こした。
シルバーが火の横で、持参していた保存食を食べていると、リーシャは野草や木の実を口に入れながら包丁で野兎の肉を切り裁き、持参していた調味料で味付けをして焚火で焼いていた。
話題を探していたシルバーは、リーシャの側に置いてある包丁に目がいった。
「その黒い包丁も袋の中に入れてたのか?」
「さすがに危ないものは入れないですよ。取り出すときに怪我をするかもしれませんから。これはさっき砂鉄で作ったんです」
リーシャが黒い包丁を持つと、魔法を解いたのか包丁は元の黒い粉へと姿を変えた。
「はーん。お前の魔法ってホント万能だな。何も持たずに旅に出ようとするのも頷けたわ」
「万能とまではいかないと思いますけど……まあ、必要な物はだいたい魔法で作れますね」
「いや、それを万能っていうんだろーが……」
シルバーは呆れ気味に言った。リーシャが規格外という事がわかり、これくらいではもう驚きはしなかった。
話しを止め黙々と食事をしていると、シルバーはふと夜中の警戒をどうするか考えてなかったことを思い出した。
「そういや、見張りはどうする?」
「見張り?」
リーシャのその反応で、これまでも夜に見張りを立てるという発想がなかったという事はすぐにわかった。
「寝てる間に襲われたらまずいだろ。つーかお前、今までずっと1人だったんだよな? 数日かかるクエストとかはやったことないのか?」
「いえ、普通にありますけど」
「なら、どうしてたんだよ。まさか普通に地面に横になって寝てたってことはないよな?」
「普通? ではないんじゃないでしょうか。寝るのは基本木の上ですね。その方が魔物にバレにくそうなので。まあ、ちょっと寝にくいんですけど」
当然のように言うリーシャにシルバーは片手で頭を抱えた。
(ったく。こんなに危なっかしくて、今までよく無事でいられたな、こいつ……)
シルバーは呆れずにはいられなかった。
「わかった。お前が変わってるってことはよくわかった」
「それ、誉め言葉じゃないですよね?」
リーシャは眉間に皺を寄せた。
「褒めてんだよ。まあそれはいいとして、俺が先に見張りするから、しばらくしたら交代してくれ。んで交代して俺が寝てる間、回りに襲ってくる奴がいないか見ててくれるか」
「……はあ、わかりました」
そう返事はしたものの、話題を逸らされたリーシャは納得いかないという顔をしていた。
食事を終えた2人は思い思いに過ごし始めた。
シルバーは剣の手入れをし、リーシャは魔法で土人形を作って動かして遊んでいた。
時々思い出したかのように話し、終えるとまた思うままに過ごす。
そんな時間を過ごしていると、だんだんとリーシャの瞬きの頻度が増えていった。眠くなってきたようだ。
「眠いなら寝ていいんだぞ。俺が見とくって言ってるだろ?」
「うん。おねがい……し、ます……」
リーシャは地面に躊躇なく寝そべった。
日があるうちはさほど寒くはなかったけれど、日が落ちた今は焚火があるとはいえ少し冷える。
ろくに荷物を持ち運んではいなかったリーシャは、何も掛けずに冷たい地面に転がっていた。
「ほら、もう少しこっちこい」
「うん」
人の温もりが冷えた体に心地よかったのか、リーシャは警戒することなく密着するほどシルバーに近づいた。
そんな無防備なリーシャに、シルバーは自分の膝に掛けている布を半分掛けた。
(昨日まで警戒心の塊だったくせに。たった1日でよくこんなにも懐いたもんだよなぁ)
シルバーは苦笑した。
この少女は何故か1人でいるように努めているようだけれど、それは1人がいいからという理由ではないのは確かだろう。
すぐに懐いてきたのは、母親が亡くなってから寂しい思いをしていたのかもしれない。
シルバーはリーシャの頭を撫でた。
「寒くねぇか?」
「うん……」
安心しきっているリーシャは、そのまますぐに夢の中へと落ちていった。
シルバーはその横でリーシャが起きるまでの間、1人火の番をしながら周りを警戒した。
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