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出会い

夜(1)

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 シルバーはリーシャという少女の本質の一端に触れた後も、食料を探す彼女の後をついて回った。
 途中、野ウサギを見つけたリーシャは、何の迷いもなく魔法で作った土の槍を直撃させて捕まえ、その場で夕食にするためのあらかたの処理を手際よく済ませてしまった。
 シルバーは自分よりもかなり小さな子供が当然のように狩りをする姿に違和感を持ちながらも、少し離れた場所から黙って見守っていた。
 肉を手に入れたリーシャは満足したようで、ウサギを片手に立ち上がった。

「シルバー。これだけあれば明日の朝も大丈夫だから、眠れるところ探しませんか?」
「ああ、そうだな。少し開けた場所を探すか。んで、できれば周りが草むらで囲まれた場所なら言う事ねぇかな」
「広いところの方がいいんじゃないですか? その方が魔物が現れても近づかれずに対応できると思うんですけど」

 リーシャは首を傾げた。
 シルバーもいつものパーティで行動しているのなら、気にせず広々とした場所に陣取っていただろう。
 けれど今はいつもとは状況が違っているため、野営の場を選ぶのに若干慎重になっていた。

「たしかにそうなんだが、今は夜だから見晴らしがいいとこに陣取っても何も見えねぇだろ?」
「はい。完全に見えなくなってるわけじゃないですけど……遠くの方はあんまり見えないですね」
「だろ? 今は俺とお前の2人しかいねえから、万が一どっちかが戦えなくなったってなったら、クエストを中断するしかなくなる。そうならないために、身を隠せるような場所で不要な戦いを避けたいんだ。バレちまったとしても、周りに草むらがあれば魔物の動く音が聞こえるから、すぐ反応できるだろ?」
「まあ、そういうことなら。わかりました」

 リーシャは納得したように頷いた。
 移動を開始しようとしたところで、シルバーの視線がふとリーシャの手元へ移った。
 ウサギはシルバーにとってはさほど大きくはないけれど、リーシャが抱えていると妙に大きく見えた。
 シルバーは手を差し出した。

「そのウサギ貸しな。持ってやる」
「えっ……いえ。そんなに重くないし、大丈夫です」
「いいから。こういう時は年上に甘えとけ」

 シルバーはニッと笑った。
 リーシャは渡すべきなのか、なかなか決めきれない様子だ。シルバーへ視線をやったり、外したりしている。
 そしてやっとどうするか決めたようだった。

「……それじゃあ……」

 リーシャは恐る恐るシルバーに処理の終わったウサギを差し出した。
 人の好意に甘えるという事に慣れていなさそうな姿は、無性にかまいたくなってくる。
 シルバーはウサギを受け取るとリーシャの頭を撫でた。

「? なんですか?」
「何でもねぇよ。そんじゃ、寝れそうな場所探そうぜ」
「? はい」

 不思議そうに撫でられた箇所に手を当てているリーシャを置いてシルバーは歩きだした。
 その後に続こうとしたリーシャがすぐに足を止めた。
 自身との間の距離が開いていく気配に気が付いたシルバーは問いかけた。

「どうした?」
「あれ……」

 リーシャの指さす方には巨大な洞窟があった。洞窟というより、崖にできた裂け目と言った方が似合うような形をしている。

「あの洞窟がどうかしたのか?」
「何か光った。2つ。たぶん瞳だと思う。大きい生き物みたいだったし、たぶんスカイディーパじゃないかと。違うかもしれないけど」

 辺りはすでに暗く洞窟自体も先が長く続いているようで、奥は見えない。
 2人は洞窟に近づき、近くの木陰に隠れた。
 シルバーは洞窟の少し横にある茂みに向かって石を投げ、音を立ててみた。何かいるというのならば音に反応があるはずだ。

「キュオォォォォォン‼」
「⁉」

 洞窟の中から、音を立てて大きな生き物が首を出した。
 暗くてはっきりと姿は見えない。けれど、ぼんやりと見える姿には大きな獣の背中に大きな翼が生えているのがわかった。
 その姿はほぼ間違いなくスカイディーパだ。
 スカイディーパは外に何もいないことを確認するとのそのそと後ずさりをして奥へと戻って行った。
 シルバーはリーシャの肩を突くと、行くぞと手で合図を送った。リーシャは頷き、音を立てないようにゆっくりと後を追う。
 シルバーは十分距離をとったところで口を開いた。

「あいつは夜目も利く。日が落ちてからはこっちの分が悪い。もっと離れたところで休むぞ」
「はい、そうですね」

 気配を悟られないようシルバーとリーシャは洞窟から離れ、落ち着くための場所を求めて森の中を彷徨った。
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