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出会い
2人だけの捜索隊(2)
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森の中は他の生物などいないのではと思えるほど静かだった。聞こえてくるのは風のざわめきと自分たちの足音だけ。
2人はスカイディーパの痕跡を見つけるため、森の中を広範囲にわたって探索し続けた。けれど、どれだけ探してもスカイディーパへと辿り着く手掛かりは見つからず、時間ばかりが経過していった。
ついには何の手掛かりもないまま、空は赤く色づき始めてしまった。
(だいぶ暗くなってきたな。このまま探しても危ないだけだし、今日はもう切り上げた方がいいだろうな。リーシャもいることだし)
シルバーはリーシャの事を見た。
いくらギルドに所属しているとはいえ、彼女はまだ子供。真っ暗で魔物が徘徊する森の中を連れ歩くのは危険すぎる。
「なぁ、日も暮れてきた今日はこのへんにしとこうぜ。暗い中で探したところで、見つかるもんも見つからねぇよ」
「そう、ですね」
リーシャは不満げに視線を落とした。まだ捜索を続けたいというのが本音なのだろう。
1人でスカイディーパの討伐に行こうとしていたあたり、あまり状況を理解しないで動くタイプかのように思われたけれど、そうではなかったためシルバーは安心した。
探索を切り上げるならば、これから問題になってくるのはどこで体を休めるかという事だ。
シルバーは野営の備えをそれなりにしてきているけれど、リーシャの方はそうは見えない。
「つーかよ、リーシャ。お前何も持ってきてないみたいだけど大丈夫か? 村があるらしいし、そっちの方へ行って宿に泊まってもいいけど、どうする?」
正確な年齢は知らないけれど、リーシャはおそらく10歳前後。
シルバーは、こんな暗い森の中でほとんど初対面の男と2人になるより、多少歩いてでも他の人間の気配のある場所で眠っ方がリーシャにとってはいいだろうと思い、提案した。
けれど肝心な本人はというと野営については何とも思っていない様子だった。
「大丈夫です、慣れてますから」
「慣れてる?」
「はい。クエスト中に外で寝るのは慣れてるんです。それより、寝る場所はここでいいですか? ここでいいなら、今から夕食と朝食分の食べ物を採ってきたいんですけど」
リーシャは当然のように言った。
それは子供の口から出てくるような言葉ではなかったため、シルバーは耳を疑った。
「は? 採ってくる?」
「はい。採ってきます。シルバーの分も取ってきましょうか?」
「いや……俺は遠征用の保存食持って来てるけど……」
「そうですか。それなら、私の分だけ取ってきたらいいですね」
「ちょ……」
「じゃあ行ってきます。なるべく早く戻ってくるので」
リーシャは一方的に言いたいことを言うと、そのまま薄暗い森の中へと向かおうとした。
そんな後先考えていない行動にシルバーは慌てた。
「ちょちょ、ちょっと待て! 暗い中歩き回ったら危ないだろ! 何のために探索切り上げたと思ってんだよ!」
「平気です。それに、採りに行かせてもらえないと私、今晩食べるものないのでこれだけは譲れません! じゃあ、今度こそ行ってきます」
シルバーの制止など聞く耳を持たず、再びリーシャは暗い森の奥へと駆けだして行った。
このまま1人で行かせてしまっては、変な魔物に出くわし危険な目にあうかもしれない。シルバーは咄嗟に叫んだ。
「待てって! 俺も行く‼」
シルバーは急いでリーシャの後を追った。
2人はスカイディーパの痕跡を見つけるため、森の中を広範囲にわたって探索し続けた。けれど、どれだけ探してもスカイディーパへと辿り着く手掛かりは見つからず、時間ばかりが経過していった。
ついには何の手掛かりもないまま、空は赤く色づき始めてしまった。
(だいぶ暗くなってきたな。このまま探しても危ないだけだし、今日はもう切り上げた方がいいだろうな。リーシャもいることだし)
シルバーはリーシャの事を見た。
いくらギルドに所属しているとはいえ、彼女はまだ子供。真っ暗で魔物が徘徊する森の中を連れ歩くのは危険すぎる。
「なぁ、日も暮れてきた今日はこのへんにしとこうぜ。暗い中で探したところで、見つかるもんも見つからねぇよ」
「そう、ですね」
リーシャは不満げに視線を落とした。まだ捜索を続けたいというのが本音なのだろう。
1人でスカイディーパの討伐に行こうとしていたあたり、あまり状況を理解しないで動くタイプかのように思われたけれど、そうではなかったためシルバーは安心した。
探索を切り上げるならば、これから問題になってくるのはどこで体を休めるかという事だ。
シルバーは野営の備えをそれなりにしてきているけれど、リーシャの方はそうは見えない。
「つーかよ、リーシャ。お前何も持ってきてないみたいだけど大丈夫か? 村があるらしいし、そっちの方へ行って宿に泊まってもいいけど、どうする?」
正確な年齢は知らないけれど、リーシャはおそらく10歳前後。
シルバーは、こんな暗い森の中でほとんど初対面の男と2人になるより、多少歩いてでも他の人間の気配のある場所で眠っ方がリーシャにとってはいいだろうと思い、提案した。
けれど肝心な本人はというと野営については何とも思っていない様子だった。
「大丈夫です、慣れてますから」
「慣れてる?」
「はい。クエスト中に外で寝るのは慣れてるんです。それより、寝る場所はここでいいですか? ここでいいなら、今から夕食と朝食分の食べ物を採ってきたいんですけど」
リーシャは当然のように言った。
それは子供の口から出てくるような言葉ではなかったため、シルバーは耳を疑った。
「は? 採ってくる?」
「はい。採ってきます。シルバーの分も取ってきましょうか?」
「いや……俺は遠征用の保存食持って来てるけど……」
「そうですか。それなら、私の分だけ取ってきたらいいですね」
「ちょ……」
「じゃあ行ってきます。なるべく早く戻ってくるので」
リーシャは一方的に言いたいことを言うと、そのまま薄暗い森の中へと向かおうとした。
そんな後先考えていない行動にシルバーは慌てた。
「ちょちょ、ちょっと待て! 暗い中歩き回ったら危ないだろ! 何のために探索切り上げたと思ってんだよ!」
「平気です。それに、採りに行かせてもらえないと私、今晩食べるものないのでこれだけは譲れません! じゃあ、今度こそ行ってきます」
シルバーの制止など聞く耳を持たず、再びリーシャは暗い森の奥へと駆けだして行った。
このまま1人で行かせてしまっては、変な魔物に出くわし危険な目にあうかもしれない。シルバーは咄嗟に叫んだ。
「待てって! 俺も行く‼」
シルバーは急いでリーシャの後を追った。
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