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出会い
距離感(1)
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シルバーとリーシャは食事を終えると、旅支度をするために一旦別れ、翌早朝再度合流することにした。
討伐対象が現れるという地域までは半日かからずにたどり着ける。ただ、このまま出発してしまうと、向かう途中で夜を迎えなければならない。故に翌早朝に出発することにしたのだ。
まだ夜もあけぬ早朝、2人は王都のへの出入り口である門の前で合流した。リーシャの姿を見つけたシルバーは先に声をかけた。
「来たな」
緊張気味な表情をしたリーシャは何も言わず、ただ首を縦に振って答えた。
リーシャの実力を知らないシルバーは、目の前に立つ彼女の姿を見て眉をひそめた。旅支度をするために解散したはずなのに、服装が変わっただけで、そのほかは何一つ変わっていない。
「本当に、それで準備できてるん……だよな?」
「大丈夫です。できてます」
「その袋だけでか?」
杖どころか何の武器も防具も持っておらず、持っている物と言えば腰のベルトに小さな袋を装備しているくらい。これから魔物討伐に向かうような姿にはとうてい見えなかった。
シルバーの心配をよそに、リーシャは当然のように答えた。
「はい、問題ないです。私にはこれ以外必要ないので」
本当に準備が出来ているのかどうか、シルバーは怪しく思った。
けれど、リーシャがそれなりの実力は持ち合わせているのならば、自身に必要な物はわかっているだろうと、シルバーは彼女の言葉を信じるしかなかった。
「ちなみにその中には何が入ってんだ?」
「あ……えっと、傷薬と調味料。回復魔法が苦手なので薬が必需品なんです。調味料は、焼いただけとか茹でただけのご飯は嫌なので」
「そっ、そうか」
何を持参するかは人それぞれだけれど、リーシャの持ち物は予想の斜め上をいっていた。シルバーはやや不安を感じながらも、口角を上げてみせた。
「お前がそれで大丈夫ってんならいいか。それじゃあ行くか。途中魔物が出たら、お互いの実力見るために倒しながら行こうぜ」
「はい。けど私、人と一緒に魔物討伐したことないので、どうしたらいいか、よくわからなくて……」
「そういうのも含めて、本番前に雑魚を倒すんだよ。お互いどう戦うかわからねぇと、作戦も立てられないし、援護とかの合図も出せないだろ?」
「はい……そうですね」
シルバーには、何故かリーシャの表情が昨日より曇っているように見えた。
落ち込むような話をしたわけではないはずだ。このクエスト自体はもともとリーシャが1人で行こうとしていたもの。行きたくないわけではないはずだ。
(となると、原因は俺か……)
たとえ嫌われていたとしても、こんな子供を1人で危険なクエストに行かせるわけにはいかない。
シルバーは何も気が付いていないふりをし、声を出した。
「行くか」
「はい」
薄暗く周りもよく見えない中、2人は目的地に向かって旅立った。
討伐対象が現れるという地域までは半日かからずにたどり着ける。ただ、このまま出発してしまうと、向かう途中で夜を迎えなければならない。故に翌早朝に出発することにしたのだ。
まだ夜もあけぬ早朝、2人は王都のへの出入り口である門の前で合流した。リーシャの姿を見つけたシルバーは先に声をかけた。
「来たな」
緊張気味な表情をしたリーシャは何も言わず、ただ首を縦に振って答えた。
リーシャの実力を知らないシルバーは、目の前に立つ彼女の姿を見て眉をひそめた。旅支度をするために解散したはずなのに、服装が変わっただけで、そのほかは何一つ変わっていない。
「本当に、それで準備できてるん……だよな?」
「大丈夫です。できてます」
「その袋だけでか?」
杖どころか何の武器も防具も持っておらず、持っている物と言えば腰のベルトに小さな袋を装備しているくらい。これから魔物討伐に向かうような姿にはとうてい見えなかった。
シルバーの心配をよそに、リーシャは当然のように答えた。
「はい、問題ないです。私にはこれ以外必要ないので」
本当に準備が出来ているのかどうか、シルバーは怪しく思った。
けれど、リーシャがそれなりの実力は持ち合わせているのならば、自身に必要な物はわかっているだろうと、シルバーは彼女の言葉を信じるしかなかった。
「ちなみにその中には何が入ってんだ?」
「あ……えっと、傷薬と調味料。回復魔法が苦手なので薬が必需品なんです。調味料は、焼いただけとか茹でただけのご飯は嫌なので」
「そっ、そうか」
何を持参するかは人それぞれだけれど、リーシャの持ち物は予想の斜め上をいっていた。シルバーはやや不安を感じながらも、口角を上げてみせた。
「お前がそれで大丈夫ってんならいいか。それじゃあ行くか。途中魔物が出たら、お互いの実力見るために倒しながら行こうぜ」
「はい。けど私、人と一緒に魔物討伐したことないので、どうしたらいいか、よくわからなくて……」
「そういうのも含めて、本番前に雑魚を倒すんだよ。お互いどう戦うかわからねぇと、作戦も立てられないし、援護とかの合図も出せないだろ?」
「はい……そうですね」
シルバーには、何故かリーシャの表情が昨日より曇っているように見えた。
落ち込むような話をしたわけではないはずだ。このクエスト自体はもともとリーシャが1人で行こうとしていたもの。行きたくないわけではないはずだ。
(となると、原因は俺か……)
たとえ嫌われていたとしても、こんな子供を1人で危険なクエストに行かせるわけにはいかない。
シルバーは何も気が付いていないふりをし、声を出した。
「行くか」
「はい」
薄暗く周りもよく見えない中、2人は目的地に向かって旅立った。
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