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出会い
シルバー・ミストレスト(1)
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リーシャが王宮に招かれてから1週間後。ノアたちのことが公表されてから4日ほど経った日、リーシャは買い出しのため王都を訪れていた。
リーシャの隣にはエリアルの姿だけがある。留守番をしているルシアは、不平たらたらでリーシャたちの帰りを待っているに違いない。
「あっ」
この日の朝、リーシャがいつも通り掃除や洗濯をせっせとしていると、底をつきそうになっている洗剤が目に留まった。
「あー、そっか。もう1ヶ月くらい買い出しに言ってないんだっけ」
確認してみると、他にも底をつきそうになっている日用品がちらほらとある。このまま放置すると近いうちに影響が出るため、リーシャは仕方なく王都へ買い出しに向かう事に決めた。
リーシャは自分たちの寝床の掃除をしているノアたちのところへ向かった。
ノアたちの部屋の扉は開け放たれている。リーシャは廊下から足元に散らばる本の大群を片付けている3人に向かって呼びかけた。
「ねえ、お昼から王都に買い出しに行ってこようと思うんだけど、何か買ってきてほしいものとかある?」
「王都? 1人で行くのか?」
「うん」
リーシャの言葉に返事をしたのはルシアだった。
ルシアは必要な物を考える素振りをした後、思い直したような様子で口を開いた。
「やっぱ王都に行くなら、せっかくだし4人で行こうぜ」
「えっ……」
「だってさ、最近ずっと家に篭りっきりだし、買い出しするなら荷物持ちに俺らいた方がいいだろ」
「えっと……それは……」
リーシャは乗り気にはなれず、視線を彷徨わせた。
王宮から帰って来た日の夜の、あの出来事があってからリーシャはノアといると彼を意識しすぎて落ち着かなくなってしまった。そのため、リーシャはノアに近づかないようにしていた。
そんな避けている状態で、ルシアやエリアルもいるとはいえ、ずっとノアと行動を共にできるわけがないと思ったリーシャは、王都へ1人で行こうとしていたもう1つの理由で圧し切ろうと考えた。
「4人で出かけたら目立っちゃうから、1人で行きたいかな。それに王都の人たち、まだルシアたちのこと受け入れきれてないだろうし、みんなで行くのはどうかと思わない?」
「うーん、そうかもしれないけどさ、こくおーさまには王都の出入り許してもらってるんだし、俺らばっか遠慮するのも変じゃね?」
「うっ……」
納得はしないだろうなとは思っていたけれど、まさか正論を言ってくるとは思っていなかったため、リーシャは言葉に詰まった。
「あとさ、王都の人間全員が俺ら受け入れられるようになるの待ってたら、俺ら一生リーシャと王都に行けねぇんじゃねーか? なあ、エリアル」
「うん!」
ルシアとエリアルの目は、良い返事を期待していますと言っている。
リーシャは彼らのお願いには弱いけれど、今はまだどうしてもノアと出かけるのを避けたかった。最悪墓穴を掘る可能性もあるけれど、一か八かの賭けに出る事にした。
「わかった。それなら1人! 1人だけなら連れて行ってあげる」
「えー!」
期待が外れたルシアとエリアルは揃って不満げな声を上げた。
その後もどうにか2人がリーシャに4人揃って出かけたいと頼み込んでいると、今まで口を閉じていたノアが抗議に割って入ってきた。
「お前たち、あまりリーシャを困らせるな。リーシャが人前に立つのが苦手なのは知っているだろう」
「けどさ……」
「俺たちがついて行ったら嫌でも他人の視線にさらされる。わかってやれ。俺は剣の修行をしてくるから、お前たちのどちらかが行けばいい」
「? 兄貴?」
ノアはそう言い残しさっさと出て行ってしまった。ノアはリーシャが4人で行きたがらない真の理由を見透かしていたのかもしれない。
リーシャはうしろめたさを感じながらも、ノアと2人きりにならずにすんでほっとした。
ルシアとエリアルは兄からそう言われてしまい、渋々納得せざるを得なかった。
結局、ボードゲームに勝った方がリーシャと出かけるという事になり、結果はエリアルの勝利。エリアルは意気揚々にリーシャと王都へ出かけて行ったのだった。
リーシャの隣にはエリアルの姿だけがある。留守番をしているルシアは、不平たらたらでリーシャたちの帰りを待っているに違いない。
「あっ」
この日の朝、リーシャがいつも通り掃除や洗濯をせっせとしていると、底をつきそうになっている洗剤が目に留まった。
「あー、そっか。もう1ヶ月くらい買い出しに言ってないんだっけ」
確認してみると、他にも底をつきそうになっている日用品がちらほらとある。このまま放置すると近いうちに影響が出るため、リーシャは仕方なく王都へ買い出しに向かう事に決めた。
リーシャは自分たちの寝床の掃除をしているノアたちのところへ向かった。
ノアたちの部屋の扉は開け放たれている。リーシャは廊下から足元に散らばる本の大群を片付けている3人に向かって呼びかけた。
「ねえ、お昼から王都に買い出しに行ってこようと思うんだけど、何か買ってきてほしいものとかある?」
「王都? 1人で行くのか?」
「うん」
リーシャの言葉に返事をしたのはルシアだった。
ルシアは必要な物を考える素振りをした後、思い直したような様子で口を開いた。
「やっぱ王都に行くなら、せっかくだし4人で行こうぜ」
「えっ……」
「だってさ、最近ずっと家に篭りっきりだし、買い出しするなら荷物持ちに俺らいた方がいいだろ」
「えっと……それは……」
リーシャは乗り気にはなれず、視線を彷徨わせた。
王宮から帰って来た日の夜の、あの出来事があってからリーシャはノアといると彼を意識しすぎて落ち着かなくなってしまった。そのため、リーシャはノアに近づかないようにしていた。
そんな避けている状態で、ルシアやエリアルもいるとはいえ、ずっとノアと行動を共にできるわけがないと思ったリーシャは、王都へ1人で行こうとしていたもう1つの理由で圧し切ろうと考えた。
「4人で出かけたら目立っちゃうから、1人で行きたいかな。それに王都の人たち、まだルシアたちのこと受け入れきれてないだろうし、みんなで行くのはどうかと思わない?」
「うーん、そうかもしれないけどさ、こくおーさまには王都の出入り許してもらってるんだし、俺らばっか遠慮するのも変じゃね?」
「うっ……」
納得はしないだろうなとは思っていたけれど、まさか正論を言ってくるとは思っていなかったため、リーシャは言葉に詰まった。
「あとさ、王都の人間全員が俺ら受け入れられるようになるの待ってたら、俺ら一生リーシャと王都に行けねぇんじゃねーか? なあ、エリアル」
「うん!」
ルシアとエリアルの目は、良い返事を期待していますと言っている。
リーシャは彼らのお願いには弱いけれど、今はまだどうしてもノアと出かけるのを避けたかった。最悪墓穴を掘る可能性もあるけれど、一か八かの賭けに出る事にした。
「わかった。それなら1人! 1人だけなら連れて行ってあげる」
「えー!」
期待が外れたルシアとエリアルは揃って不満げな声を上げた。
その後もどうにか2人がリーシャに4人揃って出かけたいと頼み込んでいると、今まで口を閉じていたノアが抗議に割って入ってきた。
「お前たち、あまりリーシャを困らせるな。リーシャが人前に立つのが苦手なのは知っているだろう」
「けどさ……」
「俺たちがついて行ったら嫌でも他人の視線にさらされる。わかってやれ。俺は剣の修行をしてくるから、お前たちのどちらかが行けばいい」
「? 兄貴?」
ノアはそう言い残しさっさと出て行ってしまった。ノアはリーシャが4人で行きたがらない真の理由を見透かしていたのかもしれない。
リーシャはうしろめたさを感じながらも、ノアと2人きりにならずにすんでほっとした。
ルシアとエリアルは兄からそう言われてしまい、渋々納得せざるを得なかった。
結局、ボードゲームに勝った方がリーシャと出かけるという事になり、結果はエリアルの勝利。エリアルは意気揚々にリーシャと王都へ出かけて行ったのだった。
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