77 / 419
ターニングポイント
王の決断(1)
しおりを挟む
リーシャがノアたちを連れて玉座の間に戻ると、先ほどまではいなかった第2王子、フェンリルが国王の座る玉座の横に立っていた。彼はリーシャと会うのは初めてだと言わんばかりの、素知らぬ顔をしている。
国王との謁見前に顔を合わせた際、フェンリルはリーシャの味方のような口ぶりで話していた。おそらく、リーシャが不利になるような発言はしないだろう。
そうは思いつつも、リーシャは目の前の王族が増えた事に緊張してしまい、頭の中が真っ白になりながら先ほど自分が立っていたシルバーの横へ足を進めた。
ノア、ルシア、エリアルもリーシャの横に一列に並んだ。
今のノアたち3兄弟は人間姿だ。
騒ぎに駆けつけることができず、ずっとこの場に留まっていた騎士たちは、ノアたちが本当に竜なのか静かに疑いの目を向けていた。
その静寂を破るように、国王は声を発した。
「これで関係している者は全て集まったな。竜の子たちよ、よく来た」
声の大きさの割に、どこか柔らかを感じる声が響き渡った。
一瞬歓迎されているように感じたけれど、これから行われるのはリーシャたちへの判決だ。誰もが判決の行方を聞き逃すまいと気を引き締め直した。
そんな中、ノアは周りの雰囲気など一切気にすることなく1歩踏み出し、胸に手を当てると堂々と一礼した。
「お初にお目にかかります。私、ノア・ドラゴノイド、と名乗らせていただいております」
「ほう、遠き国での竜の呼び名を使っておるのだな」
「はい、その通りです」
リーシャは突然のノアの行動は不敬に当たるのではと思い、心臓が止まりそうな思いをしていた。
騎士たちは突然国王へと近づいたノアを取り押さえるような事はしなかったけれど、いつでも切りかかれるよう神経をとがらせた。続けて不審な動きを見せれば、国王を守るためと剣を向けそうな雰囲気だ。
そんな騎士たちの突き刺すような視線を向けられても、ノアは堂々とした態度を変えなかった。むしろ余裕すら感じ取れる。
一見礼を尽くしているように見えるけれど、畏まる様子もなく堂々とした態度で話すノアの姿に、国王は興味を持ったようだ。国王の口が面白そうなものを見つけたかのように、わずかに弧を描いた。
「では、ノア・ドラゴノイドよ。その名の通り、そなたたちが竜であるというのは本当か? 私はそなたが竜から人になる姿を見ておらんのでな。にわかには信じられぬのだ」
「はい。その通りでございます」
「この場で竜の姿になれるか?」
「可能です」
ノアの言葉に騎士たちの顔がこわばった。
先ほどまでは、ノアたちにいつでも剣を向けられるぞというような視線を向けていたにもかかわらず、今では恐怖という感情が騎士たちの表情に紛れ込んでいた。
ノアはそんな周りの変化に構うことなく続けた。
「ですが、骨格が変わってしまうため、姿を変えると衣類が裂けてしまいます。私はかまわないのですが、この場で竜の姿に戻るということは後に不適切な姿をお見せすることになります」
「そうか……それは残念だな」
国王の声は心底残念そうだった。王としてノアたちが本当に竜であるかの確認をしたかっただけではなく、自身が竜という生き物をまじかで見たかったのかもしれない。国王は好奇心が強い人物のようだ。
国王が残念がっている事に気が付いたノアは、国王からの心証を良くするのに丁度いいと思ったのだろう。ある提案を持ち出した。
「……特定の部分だけ戻す、ということも可能です」
国王は「ほう」と目を輝かせた。
すると突然、剣をノアの首元へ近づける者が現れた。レイモンドだった。
国王との謁見前に顔を合わせた際、フェンリルはリーシャの味方のような口ぶりで話していた。おそらく、リーシャが不利になるような発言はしないだろう。
そうは思いつつも、リーシャは目の前の王族が増えた事に緊張してしまい、頭の中が真っ白になりながら先ほど自分が立っていたシルバーの横へ足を進めた。
ノア、ルシア、エリアルもリーシャの横に一列に並んだ。
今のノアたち3兄弟は人間姿だ。
騒ぎに駆けつけることができず、ずっとこの場に留まっていた騎士たちは、ノアたちが本当に竜なのか静かに疑いの目を向けていた。
その静寂を破るように、国王は声を発した。
「これで関係している者は全て集まったな。竜の子たちよ、よく来た」
声の大きさの割に、どこか柔らかを感じる声が響き渡った。
一瞬歓迎されているように感じたけれど、これから行われるのはリーシャたちへの判決だ。誰もが判決の行方を聞き逃すまいと気を引き締め直した。
そんな中、ノアは周りの雰囲気など一切気にすることなく1歩踏み出し、胸に手を当てると堂々と一礼した。
「お初にお目にかかります。私、ノア・ドラゴノイド、と名乗らせていただいております」
「ほう、遠き国での竜の呼び名を使っておるのだな」
「はい、その通りです」
リーシャは突然のノアの行動は不敬に当たるのではと思い、心臓が止まりそうな思いをしていた。
騎士たちは突然国王へと近づいたノアを取り押さえるような事はしなかったけれど、いつでも切りかかれるよう神経をとがらせた。続けて不審な動きを見せれば、国王を守るためと剣を向けそうな雰囲気だ。
そんな騎士たちの突き刺すような視線を向けられても、ノアは堂々とした態度を変えなかった。むしろ余裕すら感じ取れる。
一見礼を尽くしているように見えるけれど、畏まる様子もなく堂々とした態度で話すノアの姿に、国王は興味を持ったようだ。国王の口が面白そうなものを見つけたかのように、わずかに弧を描いた。
「では、ノア・ドラゴノイドよ。その名の通り、そなたたちが竜であるというのは本当か? 私はそなたが竜から人になる姿を見ておらんのでな。にわかには信じられぬのだ」
「はい。その通りでございます」
「この場で竜の姿になれるか?」
「可能です」
ノアの言葉に騎士たちの顔がこわばった。
先ほどまでは、ノアたちにいつでも剣を向けられるぞというような視線を向けていたにもかかわらず、今では恐怖という感情が騎士たちの表情に紛れ込んでいた。
ノアはそんな周りの変化に構うことなく続けた。
「ですが、骨格が変わってしまうため、姿を変えると衣類が裂けてしまいます。私はかまわないのですが、この場で竜の姿に戻るということは後に不適切な姿をお見せすることになります」
「そうか……それは残念だな」
国王の声は心底残念そうだった。王としてノアたちが本当に竜であるかの確認をしたかっただけではなく、自身が竜という生き物をまじかで見たかったのかもしれない。国王は好奇心が強い人物のようだ。
国王が残念がっている事に気が付いたノアは、国王からの心証を良くするのに丁度いいと思ったのだろう。ある提案を持ち出した。
「……特定の部分だけ戻す、ということも可能です」
国王は「ほう」と目を輝かせた。
すると突然、剣をノアの首元へ近づける者が現れた。レイモンドだった。
0
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
【本編完結】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!
七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。
この作品は、小説家になろうにも掲載しています。
ヤンデレ騎士団の光の聖女ですが、彼らの心の闇は照らせますか?〜メリバエンド確定の乙女ゲーに転生したので全力でスキル上げて生存目指します〜
たかつじ楓*LINEマンガ連載中!
恋愛
攻略キャラが二人ともヤンデレな乙女ーゲームに転生してしまったルナ。
「……お前も俺を捨てるのか? 行かないでくれ……」
黒騎士ヴィクターは、孤児で修道院で育ち、その修道院も魔族に滅ぼされた過去を持つ闇ヤンデレ。
「ほんと君は危機感ないんだから。閉じ込めておかなきゃ駄目かな?」
大魔導師リロイは、魔法学園主席の天才だが、自分の作った毒薬が事件に使われてしまい、責任を問われ投獄された暗黒微笑ヤンデレである。
ゲームの結末は、黒騎士ヴィクターと魔導師リロイどちらと結ばれても、戦争に負け命を落とすか心中するか。
メリーバッドエンドでエモいと思っていたが、どっちと結ばれても死んでしまう自分の運命に焦るルナ。
唯一生き残る方法はただ一つ。
二人の好感度をMAXにした上で自分のステータスをMAXにする、『大戦争を勝ちに導く光の聖女』として君臨する、激ムズのトゥルーエンドのみ。
ヤンデレだらけのメリバ乙女ゲーで生存するために奔走する!?
ヤンデレ溺愛三角関係ラブストーリー!
※短編です!好評でしたら長編も書きますので応援お願いします♫
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
【完結】甘やかな聖獣たちは、聖女様がとろけるようにキスをする
楠結衣
恋愛
女子大生の花恋は、いつものように大学に向かう途中、季節外れの鯉のぼりと共に異世界に聖女として召喚される。
ところが花恋を召喚した王様や黒ローブの集団に偽聖女と言われて知らない森に放り出されてしまう。
涙がこぼれてしまうと鯉のぼりがなぜか執事の格好をした三人組みの聖獣に変わり、元の世界に戻るために、一日三回のキスが必要だと言いだして……。
女子大生の花恋と甘やかな聖獣たちが、いちゃいちゃほのぼの逆ハーレムをしながら元の世界に戻るためにちょこっと冒険するおはなし。
◇表紙イラスト/知さま
◇鯉のぼりについては諸説あります。
◇小説家になろうさまでも連載しています。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる