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王子様の意図(2)
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リーシャが今王宮にいるのは、売買や飼育を禁じられている魔物、もとい竜を飼育していたからだ。これからの国王との謁見の際に、罪に問われることになるだろう。
さすがに死刑はないはずだけれど、国外追放の可能性は十分にあり得る。
それに関してはノアたちが受け入れられなければ自分から出ていくつもりなので問題はない。
これまで同種の罪に問われた者の中には未だ幽閉されている者もいると聞く。
騎士団に同行できるような立場ではなくなる可能性が非常に高いのだ。
リーシャが俯いていると、フェンリルは罰せられる事を不安がっているとでも思ったのだろう。励ますようにリーシャの背を叩きながら言った。
「なんも心配することはねぇよ。お前は間違いなくお咎めなしになるからな」
フェンリルは妙に自信満々な笑みを浮かべていた。
この男性の立ち振る舞いは、どう見ても人を裁けるような立場の人間のものではない。
リーシャは怪しみながらフェンリルの事を見た。
「なんでそう言い切れるんですか? 私の処分を決めるのは国王様なんですよね?」
「だとしてもさ。別にリーシャ、お前は反乱を起こそうとしてたわけでも、私腹を肥やそうとしてたわけでもねぇんだろ? それに竜のこともちゃんと手懐けて、仲良く暮らしてるときた。もはやお前たちは貴重な戦力って言っても過言じゃねぇ。そんな奴を牢にぶち込んだり、国から追い出すなんてするわけねぇだろ。竜共々この国にとどめさせる方が得策だ」
「でも、あの子たちは……もう私のところにはいませんよ?」
フェンリル王子はリーシャの目をじっと見つめた。真意を探ろうとしているようだ。
(バレないようにしないと。フェンリル王子が友好的だからと言って、国王様が許してくれる保障なんてないんだから。認めてもらえなかったら、ノアたちに危険が及ぶかもしれない。平常心、平常心……)
ノアとルシアが本来の姿に戻れば優に逃げ切れるだろう。けれど、はたして彼らがリーシャを置いて逃げるかどうか。
リーシャが捕えられれば、助けるために王都に乗り込んでくるかもしれない。そうなればきっとノアたちも、この王都も大きな傷を負うことになる。
リーシャは嘘が悟られないよう、平然を装った。
じっと見つめてきていたフェンリルの目が細められた。途端にリーシャの心臓が大きく飛び跳ねた。
「……嘘だな」
「えっ……?」
「竜はあんたの元を離れたりしてない。さっきシルバーっていう男から、黒竜はお前にご執心だって話を聞いたばっかだしな。隠そうとはしてたみたいだが、同時にバレないかって考えてただろ? 目が動揺してた」
「……」
リーシャは簡単に嘘が見破られた事でさらに動揺し、何も返すことができなかった。
再びリーシャが俯くと、今日交わした会話の中で1番優し気な声音がフェンリルの方から聞こえてきた。
「そんな心配しなくても大丈夫だって」
フェンリルは耳を貸せとリーシャに指で合図を送った。
「なんですか?」
「いいから」
リーシャは大人しくフェンリル王子の口元に耳を近づけた。
「いいか。親父がもし処罰について悩んでいるような態度をとったら必ず、“処罰されるんだったら全力で全員ぶちのめして国外に逃げる“って言え。遠巻きでも直接でもいい。そしたらお咎めなしは確定だ。種はちゃんと蒔いといてやったから」
フェンリルは、使用人に聞こえないようにリーシャへ伝えた。
(種って……いったいこの王子、何をやらかしてきたんだろう……)
フェンリルは悪戯を楽しんでいる少年のようにニヤついていた。
さすがに死刑はないはずだけれど、国外追放の可能性は十分にあり得る。
それに関してはノアたちが受け入れられなければ自分から出ていくつもりなので問題はない。
これまで同種の罪に問われた者の中には未だ幽閉されている者もいると聞く。
騎士団に同行できるような立場ではなくなる可能性が非常に高いのだ。
リーシャが俯いていると、フェンリルは罰せられる事を不安がっているとでも思ったのだろう。励ますようにリーシャの背を叩きながら言った。
「なんも心配することはねぇよ。お前は間違いなくお咎めなしになるからな」
フェンリルは妙に自信満々な笑みを浮かべていた。
この男性の立ち振る舞いは、どう見ても人を裁けるような立場の人間のものではない。
リーシャは怪しみながらフェンリルの事を見た。
「なんでそう言い切れるんですか? 私の処分を決めるのは国王様なんですよね?」
「だとしてもさ。別にリーシャ、お前は反乱を起こそうとしてたわけでも、私腹を肥やそうとしてたわけでもねぇんだろ? それに竜のこともちゃんと手懐けて、仲良く暮らしてるときた。もはやお前たちは貴重な戦力って言っても過言じゃねぇ。そんな奴を牢にぶち込んだり、国から追い出すなんてするわけねぇだろ。竜共々この国にとどめさせる方が得策だ」
「でも、あの子たちは……もう私のところにはいませんよ?」
フェンリル王子はリーシャの目をじっと見つめた。真意を探ろうとしているようだ。
(バレないようにしないと。フェンリル王子が友好的だからと言って、国王様が許してくれる保障なんてないんだから。認めてもらえなかったら、ノアたちに危険が及ぶかもしれない。平常心、平常心……)
ノアとルシアが本来の姿に戻れば優に逃げ切れるだろう。けれど、はたして彼らがリーシャを置いて逃げるかどうか。
リーシャが捕えられれば、助けるために王都に乗り込んでくるかもしれない。そうなればきっとノアたちも、この王都も大きな傷を負うことになる。
リーシャは嘘が悟られないよう、平然を装った。
じっと見つめてきていたフェンリルの目が細められた。途端にリーシャの心臓が大きく飛び跳ねた。
「……嘘だな」
「えっ……?」
「竜はあんたの元を離れたりしてない。さっきシルバーっていう男から、黒竜はお前にご執心だって話を聞いたばっかだしな。隠そうとはしてたみたいだが、同時にバレないかって考えてただろ? 目が動揺してた」
「……」
リーシャは簡単に嘘が見破られた事でさらに動揺し、何も返すことができなかった。
再びリーシャが俯くと、今日交わした会話の中で1番優し気な声音がフェンリルの方から聞こえてきた。
「そんな心配しなくても大丈夫だって」
フェンリルは耳を貸せとリーシャに指で合図を送った。
「なんですか?」
「いいから」
リーシャは大人しくフェンリル王子の口元に耳を近づけた。
「いいか。親父がもし処罰について悩んでいるような態度をとったら必ず、“処罰されるんだったら全力で全員ぶちのめして国外に逃げる“って言え。遠巻きでも直接でもいい。そしたらお咎めなしは確定だ。種はちゃんと蒔いといてやったから」
フェンリルは、使用人に聞こえないようにリーシャへ伝えた。
(種って……いったいこの王子、何をやらかしてきたんだろう……)
フェンリルは悪戯を楽しんでいる少年のようにニヤついていた。
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