59 / 419
ターニングポイント
共闘(2)
しおりを挟む
「リーシャちゃん‼」
リーシャは慌てて振り返った。
ラディウスが走ってリーシャの元へ向かって来ている。リーシャは1人ではなくなったことに、わずかに安堵した。
リーシャが雷竜からの攻撃に備えて防御壁を作り上げると、ラディウスはその壁の影に駆け込んだ。周囲に他の連合軍のメンバーの姿は見当たらない。
「他の人は?」
「まだ俺だけだよ。さっき君のところの男の子に会って、ここにくるように言われたんだ。一番背が低い子。たぶん今も他の人を探し回ってると思う」
「そっか」
エリアルは頼んだ通りに助けを呼んで回ってくれているらしい。リーシャは素直にお願いを聞いてくれるエリアルがいてくれてよかったと心から思った。
2人が話をしている間も雷竜の攻撃が止むことはなかった。リーシャは防御を崩されまいと、さらに強度を上げた土壁を作り上げた。
本当は守りにあまり魔力を使いたくはないのだけれど、ラディウスと話し合うにはこうするしかない。
「リーシャちゃん、これからからどうする?」
「逃げられないように翼を落としたいと思う。そう思ってさっきから翼狙って魔法を使ってるんだけど、うまくいかなくて」
「そっか。それじゃあ、俺が翼を狙うよ。リーシャちゃんはサポートに回ってくれる?」
「うん、わかった」
ラディウスが雷竜に向けて飛び出そうとした。
「待って!」
「どうしたの?」
リーシャはラディウスに手を掲げ、身体強化の魔法を発動させた。いくらラディウスとはいえ、何の強化もしないままでは勝ち目はないだろう。
「身体強化魔法かけたから」
いきなり魔法をかけられたことにラディウスは驚いていた。
けれど体が軽く、力が溢れてくるのを感じると口元に笑みを浮かべた。
「ありがとう」
そう言うとすぐにラディウスは土壁の横をすり抜け、雷竜へ向かって走り出した。
リーシャは土の槍を雷竜の攻撃にぶつけ、ラディウスに攻撃が当たらないように、軌道を変化させていく。
ラディウスが翼めがけて飛び上がると、雷竜は彼を打ち落とそうと手を伸ばした。
雷竜の攻撃に気が付いたリーシャは、その攻撃をかわさせるため瞬時にラディウスに向かって風魔法を放った。そしてそのまま、彼をさらに上空へと押し上げる。
雷竜は2人の狙いに気づいたように目を見開いた。すると大きく翼をはばたかせ、体は宙に浮き始めた。
辺り一帯に強烈な風が吹き荒れる。
ラディウスは落下の勢いを使って翼を落とそうとしていたのだけれど、強風のせいで狙いがぶれ、勢いも殺されてしまった。
「くそっ!」
ラディウスはいったん雷竜の手の甲に着地し、再びがむしゃらに飛び上がった。
翼を落とそうと剣を振るうけれど、その攻撃は狙った個所には届かず、虚しく宙を斬った。ラディウスの体は何もできないまま地面へと落ちていく。
「ラディウス! すぐに離れて!」
リーシャの声を聞いたラディウスは、地面に着地すると同時に急いでその場から飛びのいた。
「風よ! 彼のモノを大地へ!」
リーシャが叫んだとたん、上空から強烈な暴風が吹き降り、雷竜の体を地に叩きつけた。
雷竜は開くことのできない口でうなり声をあげ、体は大地へとめり込んでいく。
思い描いた通りの状況に持ち込めた。
けれど1つ、思った通りではない事態が起こっていた。リーシャは自身の魔力の流れに違和感を覚えた。
(まただ!)
風を止めようと思うのに、魔法が止まらない。
雷竜の全身を風魔法で押さえつけようとして、広範囲にわたる巨大な魔法を発動したせいなのだろう。リーシャは再び魔力をコントロールできなくなっていた。
吹き下ろされる風の範囲がどんどん広が始めた。抉られていく地面の範囲が広がっていく。
(まずい! このままだと私たちまで巻き込まれる!)
リーシャが危機を感じ取った瞬間、手首につけていたブレスレッドが光を放った。
フレイから貰ったブレスレッドが効果を発動したのだ。
強烈な下降流は徐々に威力を失い、数秒後には収まった。
リーシャはその場に崩れるように座り込んだ。魔力の使い過ぎと風魔法に巻き込まれずにすんだ安堵感で、立っていられなくなっていたのだ。
このまま、ただ茫然と座っていたかったけれどそういうわけにもいかない。
「ラディウス!」
リーシャはラディウスに向かって2つの魔法を同時に放った。
1つ目の魔法はラディウスに対する2回目の身体強化魔法。もう1つは剣に対する硬化魔法。
「今のうちに翼を!」
「オーケー!」
竜がひるんでいる今がチャンス。これだけ補助魔法を使ったのだ。倒せないまでも翼を落とすことはできるはず。
地面にめり込んでいる雷竜は、まだ身動きが取れそうもない状態。
ラディウスは飛び上がり、重力をふんだんに使った一撃を翼に叩きつけた。
「グアァァァァァァァ‼」
雷竜の片翼が血しぶきを上げ、地面へと落ちた。
これで簡単に逃げられることはない。
「やった!」
リーシャの口から思わず喜びの言葉が漏れた。
とはいえ、まだ翼を落としただけ。この雷竜相手ではいまだ苦しい状態なのに変わりはない。
リーシャは両頬をパシンと他叩き、すぐに気を引き締めた。
(救援が来るまで頑張らないと!)
リーシャは慌てて振り返った。
ラディウスが走ってリーシャの元へ向かって来ている。リーシャは1人ではなくなったことに、わずかに安堵した。
リーシャが雷竜からの攻撃に備えて防御壁を作り上げると、ラディウスはその壁の影に駆け込んだ。周囲に他の連合軍のメンバーの姿は見当たらない。
「他の人は?」
「まだ俺だけだよ。さっき君のところの男の子に会って、ここにくるように言われたんだ。一番背が低い子。たぶん今も他の人を探し回ってると思う」
「そっか」
エリアルは頼んだ通りに助けを呼んで回ってくれているらしい。リーシャは素直にお願いを聞いてくれるエリアルがいてくれてよかったと心から思った。
2人が話をしている間も雷竜の攻撃が止むことはなかった。リーシャは防御を崩されまいと、さらに強度を上げた土壁を作り上げた。
本当は守りにあまり魔力を使いたくはないのだけれど、ラディウスと話し合うにはこうするしかない。
「リーシャちゃん、これからからどうする?」
「逃げられないように翼を落としたいと思う。そう思ってさっきから翼狙って魔法を使ってるんだけど、うまくいかなくて」
「そっか。それじゃあ、俺が翼を狙うよ。リーシャちゃんはサポートに回ってくれる?」
「うん、わかった」
ラディウスが雷竜に向けて飛び出そうとした。
「待って!」
「どうしたの?」
リーシャはラディウスに手を掲げ、身体強化の魔法を発動させた。いくらラディウスとはいえ、何の強化もしないままでは勝ち目はないだろう。
「身体強化魔法かけたから」
いきなり魔法をかけられたことにラディウスは驚いていた。
けれど体が軽く、力が溢れてくるのを感じると口元に笑みを浮かべた。
「ありがとう」
そう言うとすぐにラディウスは土壁の横をすり抜け、雷竜へ向かって走り出した。
リーシャは土の槍を雷竜の攻撃にぶつけ、ラディウスに攻撃が当たらないように、軌道を変化させていく。
ラディウスが翼めがけて飛び上がると、雷竜は彼を打ち落とそうと手を伸ばした。
雷竜の攻撃に気が付いたリーシャは、その攻撃をかわさせるため瞬時にラディウスに向かって風魔法を放った。そしてそのまま、彼をさらに上空へと押し上げる。
雷竜は2人の狙いに気づいたように目を見開いた。すると大きく翼をはばたかせ、体は宙に浮き始めた。
辺り一帯に強烈な風が吹き荒れる。
ラディウスは落下の勢いを使って翼を落とそうとしていたのだけれど、強風のせいで狙いがぶれ、勢いも殺されてしまった。
「くそっ!」
ラディウスはいったん雷竜の手の甲に着地し、再びがむしゃらに飛び上がった。
翼を落とそうと剣を振るうけれど、その攻撃は狙った個所には届かず、虚しく宙を斬った。ラディウスの体は何もできないまま地面へと落ちていく。
「ラディウス! すぐに離れて!」
リーシャの声を聞いたラディウスは、地面に着地すると同時に急いでその場から飛びのいた。
「風よ! 彼のモノを大地へ!」
リーシャが叫んだとたん、上空から強烈な暴風が吹き降り、雷竜の体を地に叩きつけた。
雷竜は開くことのできない口でうなり声をあげ、体は大地へとめり込んでいく。
思い描いた通りの状況に持ち込めた。
けれど1つ、思った通りではない事態が起こっていた。リーシャは自身の魔力の流れに違和感を覚えた。
(まただ!)
風を止めようと思うのに、魔法が止まらない。
雷竜の全身を風魔法で押さえつけようとして、広範囲にわたる巨大な魔法を発動したせいなのだろう。リーシャは再び魔力をコントロールできなくなっていた。
吹き下ろされる風の範囲がどんどん広が始めた。抉られていく地面の範囲が広がっていく。
(まずい! このままだと私たちまで巻き込まれる!)
リーシャが危機を感じ取った瞬間、手首につけていたブレスレッドが光を放った。
フレイから貰ったブレスレッドが効果を発動したのだ。
強烈な下降流は徐々に威力を失い、数秒後には収まった。
リーシャはその場に崩れるように座り込んだ。魔力の使い過ぎと風魔法に巻き込まれずにすんだ安堵感で、立っていられなくなっていたのだ。
このまま、ただ茫然と座っていたかったけれどそういうわけにもいかない。
「ラディウス!」
リーシャはラディウスに向かって2つの魔法を同時に放った。
1つ目の魔法はラディウスに対する2回目の身体強化魔法。もう1つは剣に対する硬化魔法。
「今のうちに翼を!」
「オーケー!」
竜がひるんでいる今がチャンス。これだけ補助魔法を使ったのだ。倒せないまでも翼を落とすことはできるはず。
地面にめり込んでいる雷竜は、まだ身動きが取れそうもない状態。
ラディウスは飛び上がり、重力をふんだんに使った一撃を翼に叩きつけた。
「グアァァァァァァァ‼」
雷竜の片翼が血しぶきを上げ、地面へと落ちた。
これで簡単に逃げられることはない。
「やった!」
リーシャの口から思わず喜びの言葉が漏れた。
とはいえ、まだ翼を落としただけ。この雷竜相手ではいまだ苦しい状態なのに変わりはない。
リーシャは両頬をパシンと他叩き、すぐに気を引き締めた。
(救援が来るまで頑張らないと!)
0
お気に入りに追加
214
あなたにおすすめの小説
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
今宵、薔薇の園で
天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。
しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。
彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。
キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。
そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。
彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。
美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
【本編完結】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!
七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。
この作品は、小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる