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3兄弟の真意(1)

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「そんじゃあ、俺らも明日からのこと決めとくか。そうだなぁ……捜索は3つの班に分けちまうか。ノアたちを一人で行動させるのは心配だし、2人1組の方がその場その場での見落としが減るだろうからな」

 いつものようにシルバーが場を仕切り始めた。こういう場では本当に頼りになる男性なのだ。
 王都で出会う時はめんどくさがりで強引で、問題も多い。
 それでもリーシャがシルバーとパーティを組むのを嫌だと思わないのは、こういう頼りがいがあるというのが大きかった。レインやギルドの他の人間も同じように思っているだろう。
 ノアたち兄弟もシルバーにこの場を任せ、全員が大柄の男へと視線を向けた。
 
「まずはリーシャ、お前はエリアルと行け」
「うん。わかった」

 実力を考慮しての妥当な判断。それ以外の事情も含めても間違いなく最善だ。
 移動中、リーシャとあまり話すことができなかったエリアルは我慢の限界の様子なのだ。この地に着いてから妙に甘えてくるのはそのせいなのだろう。
 エリアルは飛び上がって喜び、その勢いのままリーシャへ飛びついた。

「やったぁ‼ リーシャねぇちゃん、頑張ろうね!」

 エリアルはリーシャのことをギュッと抱きしめ、キラキラと目を輝かせた。
 雷竜との戦闘を控えているのだ。気を引き締めなければと思うのに、いつもゆるっとしているエリアルといると気が抜けてしまう。
 けれどそんなエリアルの姿を見ていると、それも悪い事ではないかもしれないとふと気がついた。
 本格的に活動を始めるのは明日。ずっと気を張り続けるのもよくないかもしれないと思い直し、リーシャはエリアルに微笑みかけた。

「うん、そうだね」

 リーシャの反応に満足したエリアルは、よりいっそうギュッと力を入れて抱きしめた。
 リーシャたちが納得した様子を見たシルバーは、次にレインの方を向いた。

「レイン、お前はノアと行ってくれ」
「うん、わかった。ノアね……」

 ノアを割り振られたレインの声は、気の乗らないような声だった。
 それに気がついていたノアは目を細め、レインに問いかけた。

「何か問題でもあるのか?」
「問題はないよ。君、それなりの実力はあるし。ただ、俺、君のこと苦手なんだ」

 レインもノアと同様、言いたいことは何でも口に出す性格だ。もしかすると同族嫌悪でもしているのだろうか。
 そんなことを言われたノアの方はというと、「面白いことを言う」とでも言いたげに口元が笑っていた。

「ふん。はっきり言ってくれるじゃないか。俺はそうやってものをはっきり言うヤツは嫌いではない」
「じゃあ、さっき君の弟が言い合いをしていた彼は?」
「アレは、はっきりものをいう以前に俺たちをからかって楽しんでいる節がある。できればあまり関わりたくはない」
「へー」

 リーシャはそんな2人の会話を緊張しながら聞いていた。2人が会話をし始めた辺りは衝突するのではとハラハラしていたのだ。
 けれど互いに大人な性格をしていることもあり、言いたいことを言い合ってもさほど険悪な雰囲気になる事はなかった。それなりにうまくやっていってくれそうだ。
 リーシャ2人のやり取りに口を出さなくてもよさそうだと胸を撫で下ろした。
 シルバーもそんな2人を見て大丈夫そうだと判断したらしく、笑みを浮かべていた。
 そしてシルバーは、最後にルシアへと視線を向けた。

「そんで俺はルシア、お前とだな」
「ん。わかった」

 ルシアのあっさりとした反応に、シルバーは意外そうな表情をした。

「お前、案外素直に納得するんだな。てっきりお前はリーシャとがいいって言いだすかと思ってたんだが……」
「んー? チーム分けは、力のバランスとか考えて分けたんだろ?」
「まあ、そうだが」

 まだ意外そうにしているシルバーに、ルシアは複雑そうな顔をした。
 たしかにルシアはリーシャの事になると暴走しがちではある。
 けれど元々世話焼きな性格だ。もし本当に聞き分けが悪ければ、日ごろから的確にリーシャやエリアルの世話を焼くことはできないだろう。
 ルシアは困ったように首の後ろを書き始めた。

「えーっとさ、たしかにリーシャと同じチームがいいっていうのが本音ではある。そこは否定しねえよ? たださ、今回はそういう我儘じみた事を言っていい時じゃねぇと思ったから、不満はあるけど納得してるってだけだ」
「……お前、わりと物分かりいいやつだったんだな」
「ひっでー言い草だなぁ」

 シルバーの口から出た思った以上に低い評価に、ルシアは苦笑した。
 ルシアはリーシャにじゃれつくエリアルに視線を向け、話を続けた。

「まあ、それ以外にも俺はここに来る間ずっとリーシャと一緒だったからってのもあるんだけどな。2人を差し置いて、俺ばっかりがリーシャを独占するのはまずいだろ? そもそも、エリアルの方は限界がきてるだろうしな」
「限界?」

 ルシアはエリアルの視線が自分に向いていないことを確認すると、シルバーに近づき、口元が見えないように手で隠しながら話した。

「たぶん、リーシャと別行動にさせようとしたら間違いなく喚き散らす。あいつ中身が完全に子供だから」
「ああ、そういうことか」

 さすがは世話焼きな兄だった。
 幼い性格の弟の感情の起伏を予測し、自分の感情をうまく押し込めているようだ。ノアに対する折り合いもわかっているのだろう。
 そして、おそらくそれはノアも同じ。
 兄弟それぞれが互いに大事な存在だと認め合い、上2人がそれぞれの事を理解し、動ける。それがこの3兄弟が仲の良い秘訣なのだろう。
 ただシルバーとしては、そんな仲の良い兄弟だからこそこれからどうするのだろうという疑問点もあった。
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