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依頼持ちの訪問者(2)
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「ふーん、んなことがあったのか。つか、馴染みすぎてて、こいつらが竜だって事忘れてたぜ……」
シルバーは、神妙は面持ちでルシアたちの事を見た。
「つーことは、今回の討伐はお前らにとっては同族が討伐対象ってことになるのか」
「まっ、そういう事だな」
「お前なぁ。知り合いじゃねぇとは言え、一応お前らの仲間だろ?」
ルシアの平然とした態度に、シルバーの方が顔を曇らせていた。
自分がと討伐しようしている相手が、付き合いのあるルシアたちと同じ種族であるということに突如として気づいてしまい、今更になってこの話をするのに気が引けてきたのだろう。
ルシアは困った顔をした。
「そう言われてもなぁ……正直戦う相手が竜だろうと魔物だろうと大して変わらねぇっていうか……うーん……たぶん兄貴もエリアルも気にしねぇと思うぜ。なぁ?」
ノアがルシアの問いかけに頷いた。
「ああ。同族とは言え知らない相手だ。人間同士だって昔は殺し合っていたのだろう? 俺たちにとって絶対なのはリーシャだけだ。リーシャが殺せというのなら俺たちはそれに従う。滅ぼせというのならこの身が果てるまで戦い続けるだけだ」
ノアの宣言するような言葉を聞いたシルバーは、自分の心配は杞憂だったと感じたのだろう。先ほどまでの曇った表情は消え、いつもの豪快な態度に戻っていた。
「ふん。なぁに自分たちが戦うみたいな言い方してんだよ。お前らは参加させねぇからな」
「なんで! 僕らだって戦えるよ! なんたって僕、竜の姿に戻れるようになったんだから」
ノアの横で話を聞いていたエリアルが誇らしく語った。
たしかに竜の力を使える彼らはかなりの戦力になる。だとしても、この3人は討伐には連れていくことはできない。
リーシャもシルバーの考えは同じだ。
シルバーは険しい顔をした。
「バカか。俺以外にも人がいるんだぞ。そんな姿で戦ったらお前らまで攻撃対象になるだろうが」
「あ、そっか!」
エリアルはなるほどと手をポンと叩き、納得した様子だ。
ノアとルシアも何も言わないあたり、しぶしぶながらも納得しているのだろう。
そんな3人の様子を見たシルバーの表情が緩んだ。
「わかったんならよし。で、本題に戻すが、リーシャ。雷竜の討伐クエスト、来てくれるか?」
「うーん。相手が竜なら……仕方ないかな。他国で起きた事とはいっても、王都が滅ぼされたのに見て見ぬ振りもできないから。いいよ」
「わるいな」
話に決着がつくと、リーシャは立ち上がった。
「それじゃあ、私は今から荷造りはじめるけど、いつ出発? どこに行けばいい?」
「集合場所はクレドニアムの外壁の門の前。出発は明後日、朝8時な」
「……明後日⁉」
出発までの時間の短さにリーシャは驚きの声を上げた。
討伐する相手が相手だ。リーシャは十分に魔法の調整や薬を調達しておきたかった。それに遠征になるのだから、野営のための備えも揃えておきたいところ。それなのに時間がほとんどない。
そんなリーシャの焦りをよそに、シルバーは淡々と話を続けた。
「あーあと、クレドニアムからは俺とお前と、あとレインで向かうことになってるから……」
「ちょ、ちょっと待って! 明後日って、ろくに準備できないじゃない!」
言っても仕方ないとわかってはいたけど、文句を言わずにはいられなかった。
シルバーは何故か呆れ気味の態度をとっていた。
「仕方ねぇだろ、お前全然王都に姿見せなかったんだから。今日だってこれだけのために、わざわざここまで来たんだぞ?」
「いやいやいや! 来るにしたって、もうちょっと早く来てくれたっていいじゃない!」
「俺にだって準備ってもんがあるんだ。ここまで来るの結構時間かかんだから、お前が王都来るのを狙って伝えた方が効率いいじゃねぇか」
「だからってさぁ! こっちにだって、そんな大規模な討伐になるなら、準備しておきたいことがいろいろあるんだけど⁉」
「大丈夫だって! 準備するったってお前はたいして準備するもんなんてねぇだろ。大体のものはその場で作っちまうんだから。それにこいつらだっているんだ。手伝ってもらえばいいじゃねぇか」
シルバーは、親指だけを立てた手をリーシャに向けていた。
(知ってたよ。シルバーがこういう人間だってことは知ってた……けど、頼みごとをするくせにこれってあんまりじゃない⁉)
行くと言った手前、やっぱり行きませんなどとは言えない。
それに討伐対象が竜であるのなら、戦力は多いに越したことはないのだ。
「はぁぁぁぁ……」
リーシャは盛大な溜息をついた。
(仕方ない。今から急いで旅の準備を始めるか……)
リーシャはシルバーを追い出すように見送ると、慌てて準備を始めた。
ノアたち兄弟も、リーシャが吐き出すシルバーへの文句を聞きながら、せっせと準備を手伝ってくれたのだった。
シルバーは、神妙は面持ちでルシアたちの事を見た。
「つーことは、今回の討伐はお前らにとっては同族が討伐対象ってことになるのか」
「まっ、そういう事だな」
「お前なぁ。知り合いじゃねぇとは言え、一応お前らの仲間だろ?」
ルシアの平然とした態度に、シルバーの方が顔を曇らせていた。
自分がと討伐しようしている相手が、付き合いのあるルシアたちと同じ種族であるということに突如として気づいてしまい、今更になってこの話をするのに気が引けてきたのだろう。
ルシアは困った顔をした。
「そう言われてもなぁ……正直戦う相手が竜だろうと魔物だろうと大して変わらねぇっていうか……うーん……たぶん兄貴もエリアルも気にしねぇと思うぜ。なぁ?」
ノアがルシアの問いかけに頷いた。
「ああ。同族とは言え知らない相手だ。人間同士だって昔は殺し合っていたのだろう? 俺たちにとって絶対なのはリーシャだけだ。リーシャが殺せというのなら俺たちはそれに従う。滅ぼせというのならこの身が果てるまで戦い続けるだけだ」
ノアの宣言するような言葉を聞いたシルバーは、自分の心配は杞憂だったと感じたのだろう。先ほどまでの曇った表情は消え、いつもの豪快な態度に戻っていた。
「ふん。なぁに自分たちが戦うみたいな言い方してんだよ。お前らは参加させねぇからな」
「なんで! 僕らだって戦えるよ! なんたって僕、竜の姿に戻れるようになったんだから」
ノアの横で話を聞いていたエリアルが誇らしく語った。
たしかに竜の力を使える彼らはかなりの戦力になる。だとしても、この3人は討伐には連れていくことはできない。
リーシャもシルバーの考えは同じだ。
シルバーは険しい顔をした。
「バカか。俺以外にも人がいるんだぞ。そんな姿で戦ったらお前らまで攻撃対象になるだろうが」
「あ、そっか!」
エリアルはなるほどと手をポンと叩き、納得した様子だ。
ノアとルシアも何も言わないあたり、しぶしぶながらも納得しているのだろう。
そんな3人の様子を見たシルバーの表情が緩んだ。
「わかったんならよし。で、本題に戻すが、リーシャ。雷竜の討伐クエスト、来てくれるか?」
「うーん。相手が竜なら……仕方ないかな。他国で起きた事とはいっても、王都が滅ぼされたのに見て見ぬ振りもできないから。いいよ」
「わるいな」
話に決着がつくと、リーシャは立ち上がった。
「それじゃあ、私は今から荷造りはじめるけど、いつ出発? どこに行けばいい?」
「集合場所はクレドニアムの外壁の門の前。出発は明後日、朝8時な」
「……明後日⁉」
出発までの時間の短さにリーシャは驚きの声を上げた。
討伐する相手が相手だ。リーシャは十分に魔法の調整や薬を調達しておきたかった。それに遠征になるのだから、野営のための備えも揃えておきたいところ。それなのに時間がほとんどない。
そんなリーシャの焦りをよそに、シルバーは淡々と話を続けた。
「あーあと、クレドニアムからは俺とお前と、あとレインで向かうことになってるから……」
「ちょ、ちょっと待って! 明後日って、ろくに準備できないじゃない!」
言っても仕方ないとわかってはいたけど、文句を言わずにはいられなかった。
シルバーは何故か呆れ気味の態度をとっていた。
「仕方ねぇだろ、お前全然王都に姿見せなかったんだから。今日だってこれだけのために、わざわざここまで来たんだぞ?」
「いやいやいや! 来るにしたって、もうちょっと早く来てくれたっていいじゃない!」
「俺にだって準備ってもんがあるんだ。ここまで来るの結構時間かかんだから、お前が王都来るのを狙って伝えた方が効率いいじゃねぇか」
「だからってさぁ! こっちにだって、そんな大規模な討伐になるなら、準備しておきたいことがいろいろあるんだけど⁉」
「大丈夫だって! 準備するったってお前はたいして準備するもんなんてねぇだろ。大体のものはその場で作っちまうんだから。それにこいつらだっているんだ。手伝ってもらえばいいじゃねぇか」
シルバーは、親指だけを立てた手をリーシャに向けていた。
(知ってたよ。シルバーがこういう人間だってことは知ってた……けど、頼みごとをするくせにこれってあんまりじゃない⁉)
行くと言った手前、やっぱり行きませんなどとは言えない。
それに討伐対象が竜であるのなら、戦力は多いに越したことはないのだ。
「はぁぁぁぁ……」
リーシャは盛大な溜息をついた。
(仕方ない。今から急いで旅の準備を始めるか……)
リーシャはシルバーを追い出すように見送ると、慌てて準備を始めた。
ノアたち兄弟も、リーシャが吐き出すシルバーへの文句を聞きながら、せっせと準備を手伝ってくれたのだった。
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