上 下
7 / 7
006

急に難易度バカ高くない?

しおりを挟む

笑顔で凄い難易度高そうな事を言ってのける要。

「そんな人面会したり出来るの……?」

私の問いに要が答えるより先に、ネフラムの笑いがそれを遮る。

「はっ……!!鈴鹿ぁ、普通に面会したとしても、看守がいる場でこんな話話せっかよ。はっはっ!」

…………すんげぇムカつくんですけど。

 そんな勝ち誇ったみたいな、小馬鹿にしたみたいな顔しやがって。言っとくけど、お前この世界に来てからそんな役に立ってないかんな?!…………私もだけど…。

要曰く、そのベルって人は、現体制に疑問を持つ者や、歴史を紐解こうとする者をランク別に収容しているらしくて、要監視レベルE~Sがあって、その更に上の、優先危険度「異」「奥」「極」の3段階あって、その1番厳重に管理、監視される「極」に振り分けられているらしい。

 その中でも、という監視カメラや盗聴システムに引っかかったもの達の収容所の中で1番監視が厳しい所に収容されていて、面会謝絶の独房に入れられてるんだって。

………………うん。情報統制が徹底した世界だけあって、難易度めちゃ高なんだね。……うん。無理くない?

「なぁ、要。今までソイツと面会して話せた事あんのか?」

なるほど!ネフラムの髪をかきあげながらドヤ顔してる感じもムカつくけど、なるほど、その線があったか。ふむ。

「もちろんです。このスラムにいて、炊き出しを仕切っている"さとる”という男性が、内通してくれました。今回も彼に協力を仰ぎましょう。」

ドヤ顔しながら、ふっと鼻で笑って私を見るネフラム。

~~~~っ!!急に何なの、この馬鹿にしてくる感じ……っ!!私の負けず嫌いに火がつくのを感じる。

「まぁ、これまでの要の口ぶりから察するに、そんなことだろうと思ったぜ。」

「まぁ、伊達に500年も生きてませんしね。」

「流石俺。そして流石俺が仲間に選んだ男だな。」

「いえ、そんな……。」

「謙遜するな。良い働きだ。」

「いや………………。」

ドヤり続けるネフラムに、急に気まずそうにする要。どうやら私を見ているみたい。

「…………す、鈴鹿さんがオレを、ストレスなく家からここまでトントン拍子に仕切ってくれたから、忘れず話せただけですし……このメンバーだからここまで物忘れせず話せましたし……。」

……気を遣われた。なんて良い人なんだ……!さすが500年生きてる……!!

「……えへへ。」

良い子だから友達になりたい。……うん、今後は彼を要ちんと呼ぼう。



 それから、要ちんが私に気を遣ったお陰で、機嫌が治った私と、ネフラムが度々口喧嘩したり、呼びされて、照れられたり、結局空腹になり、食べ物を買いに行ったりしていたが、今後の方針は決まった。

 今後の鍵を握るさとるさんは、炊き出し夜の部?に良く顔を出すらしい。ネフラムは炊き出しの場に行くと、謎の体調不良に見舞われるため、炊き出し後の帰路に声をかける事にした。

ーーーーそういえば、要ちんネフラムの体調不良の事知ってる風だったけど、毎度の事なのかな?

確かに要ちんは、オレの焦りが私に伝わったとか言ってたけど。…………なんでそんなに焦ったんだろう?


 後に私は、この疑問をもっと掘り下げるべきだった。この疑問のもっと根本的な所に考えを巡らせるべきだったと、私は…いや、私達は後悔をする事になる。

日本との違いが少ないこの世界を、私はすっかり日本にいる感覚のまま、事に当たるべきではなかったのだと。

ここは紛れもなく異世界で、日本とは程遠い世界だと。




ーーーーーー覚悟が全く足りなかったのだと。




    *



 親睦会もとい、作戦会議の次の日の夜。まさに今、作戦決行しようとしていた。

要ちんは覚さんと接点を持ってから、引きこもりになったらしく、彼とのコンタクトの難易度はほぼナッシングみたい。なので、炊き出し後の帰路に待ち伏せをし、家出をしたという名目で、まず、シーカー収容所のある街までの、監視カメラのない道を教えてもらう。

その道にはレジスタンスの見張りが常にいるらしく、その見張りが、どうやらベルという人物とのアポイントを取ってくれるみたい。

「……要に会ってから、まさかこんなに展開が早いとはな。」

「んね。」

覚さんを待ちながら、ネフラムと私で早い進行にはしゃいでいた。

「いえ、オレからすればここまでくるのに500年かかってますけどね。あはは。」

「「……………………。」」

これは、ボケ……か?

要ちんは照れたように笑ってるけど。私もネフラムもなんだか不謹慎に喜んじゃったかなって気持ちになった。

「……?」

何が?みたいにきょとんとする要ちん。…………なんだろう、なんかごめん、要ちん。要ちんは深く考えてないんだろうけど、私的にちょい重い話のくくりだから、気まずくて上手い返事思いつかないや。

「…………そ、そういや、鈴鹿。お前いつになったら送受信可能端末になんだよ。」

それはネフラムもだったみたい。にしても、話題の変え方下手かっ!!要ちんからバっと目を逸らして、強引に話題を逸らす。

「僕何かまずい事言いました?」
「知らんわそんなもん、私が知りたい。」

…………あら、被った。

「ん?」

被ったゆえに何を話したかネフラムは聞き取れなかったみたい。こうなったら、私が誤魔化すしかない。(私の気まずさを逸らすために。)もはやめっちゃ気にされちゃってるけど……っ!

「……要ちん。」

「……はい。」

そんな、シュンとした顔をしないでくれ……。赤毛のくせっ毛で、長身のスラッとしたスタイルだが、イケメンゆえにくせっ毛がもはやパーマにしか見えない当たりイケメンって得だなって思う。しかもハーフ顔。しかもハーフ顔。目は吸い込まれそうな深い青?いや、青紫?……うーん。藍色?なんかとりあえず夜空みたいな色の目。それがうるうると捨て犬のような顔でこちらを見る。

くぅぅぅ……。こんなに胸が締め付けられるなんて……。イケメンの破壊力ヤバ。…………じゃなくて、何か話題を考えないと……っ!!

「……あの、そ、その………………ぇっと……。」

「なんで一度死のうとしたのに、今はこんな危険そうな事手伝ってまで生きようと思ったんだ?」

よりによって500年苦労したボケの後に、そんな繊細そうな話を……。と、思ったけど、ネフラムの質問にちょっと照れながらキメ顔する要ちん。おっと……?

「好きな人のためです。愛ゆえに、ってやつです。……死んだ理由は今思えば、くだらないですけど、でもそれも愛あればこそです……っ!」

ほほう。イケメンなだけあって、ちゃんとリア充してるみたい。いい男じゃん!めっちゃ恋バナしたい……っ!


 もう少し詳しく!!と思ったが、それは空気を読む様に遮られた。

「あれ?要君かい?!しばらく見ないうちに大きくなったねぇ!!お?お友達と一緒かい?」

うーん……。普通のおっさんだ。中肉中背で、頭の毛がデコからちょっと感じの、うん、普通のおっさんの代名詞みたいな人だ。
 というか、私この世界に来てからずっと寝間着なんだけど、ほんとにみんなパジャマとかダル着みたいなのしか来てないんだなぁ。

「覚さん!お久しぶりです!」

ふむ。この普通のおっさんがどうやら件の覚さんらしい。

 要ちんは、覚さんに駆け寄ると、少し言葉を交わしながら私とネフラムの方に2人で歩いてくる。

「2人ともーっ!!案内してくれるそうですよ!」

要ちんが声を掛けた後、覚さんが追って私達に声をかけてきた。

「おーおー!はじめましてー!要君の知り合いの覚ですー!」

よろしくなっ!!とおっさんらしさのある固い握手をされた。

「……どもです。」

なんか手がネチョットしてておっさんって感じでなんか……なんかだわ……。態度に出すような大人気ないことはしないけど。とか思ったけど、ネフラムにジト目で、要ちんは引き気味で私を見るし………………いや、ちょい出てたんかも‪。知らんけど‪‪w‪w

「……母親から逃げるオレの家出に便乗して友達カップルが駆け落ちという設定で話つけてるので、上手く合わせてください。」

と、要ちんがハッとしたように引き気味状態を解除して私に耳打ちしてくる。ふむ、ここの人達は、駆け落ちとか、カップルとか、そういう色恋沙汰に目がないのか?…………まぁ、それで追求されないなら別になんでもいいけどさ……。ネフラムとカップル設定に見られがちすぎて、呆れ始めた私を他所に、覚さんは目をキラキラ?させながら、自分の胸をドーンと叩く。

「ーーーーさぁ、おじさんに全部任せなさい!」

おじさん特有の都合よく解釈する的なの ご都合フィルターで、私が嫌な態度取った疑惑に気づいてない。みたいな?知らんけど。


 その後すぐに覚さんは案内を開始してくれた。もう少し準備だのなんかしらで待たされるのかな、とか思ってたけど、覚さん曰く、

「若者が、これから己を貫こうってんだ。しかも!オレが小さい頃から可愛がってる坊やがだぜ?しかも惚れた女を守るような友達もいるとは……くぅーっ!!善は急げだな!すぐ連れてってやる!!!」

って感じでトントン拍子に話が進んで案内開始されたのよね。やっぱ都合よく解釈する的なの ご都合フィルターある系のおじさんだったわこれ。


 そういえば、ネフラムって誰かいるとめっちゃ影薄いな?!とか思ってチラチラ観察してるけど、めっちゃ普通に喋ってるやん、とか思ったりもしたけど。やたら相槌打って、めっちゃ会話してるフリしてなんも喋ってなかった‪w‪wめっちゃ草なんですけど‪w‪w‪w


 そして今まさに、人気のない路地のマンホールまで案内されて、臭そうなマンホールを指さされてるなうです。

「ここからは地下を行くぞ~。ってなっ!!」

訂正。臭いギャグを聞かされてマンホールを指さされてるなうでした。マジ最悪な空気です。やっぱおじさん嫌いだわ私。てか要ちんちゃんと完璧な愛想笑いして笑ってる…………すげぇコミュ力高ぁ…………。地下から行くのか。

「最初中は入り組んでるが、目的の場所までは途中から1本道になる。おじさんが案内するのはそこまでだ。」

「え?覚さん出口までついて来てくれないの?!」

要ちんが明らか動揺してる。作戦もしや失敗とか言わないよね?え?

「おじさん今日は用事があってな。待たせる訳にも行かないしよ。……なぁに!大丈夫!!出口にいる人達はいい人達だからな!!」

「まぁ……それなら。」

要ちんがすぐ引き下がり、私達に見えるよう小さく頷く。決行……ってことよね?と思って私も頷く。


 地下へは、おじさん、要ちん、私、ネフラムの順番で降りることになった。どうやらハシゴがかかってるみたい。さすがマンホール。

「焦らずゆっくり順番に降りてこいな!」

とおじさんが地下へ姿を消すと、要ちんが待ってましたと言わんばかりに「はぁぁ……。」大きく息をつく。気持ち分かるよ要ちん。ジェネギャで話すのしんどいし、何より覚さんは暑苦しい性格なのか、めっちゃポジティブだし、なんか歩くの早いし。私もつられてため息が漏れた。

「なぁ、あのおっさん居なくてレジスタンスと接触して大丈夫なのかよ。」

ネフラムもその辺気になってたみたい。

「おそらく……。今まで通りの人達が見張りでいてくれるなら、問題はないけど。今までにない展開ではあるので、気をつけて。」

それと、と要ちんは私に目を向ける。

「今まで通りなら、鈴鹿さんの共感覚の力がそろそろ定着するはずなので、地下で練習がてら使って見るつもりで。」

「わかった!!」

多分ね!と言いたいところだけど我慢しよう。そこで「おおおおい!!!!」と地の底からの呼び声の如き、覚さんからの降りたよ合図(のはずのもの)が聞こえてきた。

要ちんはハシゴに手をかけ、下へ、地下へ降り始める。要ちんの身体の下半分が、地下へすっぽりのタイミングで、あっ。と声を上げ顔を上げる。

「いつもネフラム様、地下で具合悪くなるから、鈴鹿さんよろしく。」

と言い残してスタスタ要ちんが降りていった。え、どうしたらいいよ的なアドバイスとかないの?!

「……マジかぁ………………。」

とネフラムは髪をかきあげながら、うわぁ…。とか言ってる。まぁ、具合い悪くなる張本人だろうし、気持ちは分からんくないけど…………あれ?私はふと聞き込み情報を思い出す。

「……ねぇ、そういえばさ。ひい様って地下にいるかもみたいな話あったよね?…………覚さんってもしかして偉い人なんじゃない?」

ああ、とネフラムが髪をかきあげている手をそのまま止め、首を傾げる。なんか頭ぶつけた人みたいになってる‪。

「確かにそんな話もあったな。………俺的には覚さんが偉いかどうかより、姫様が関わることによって、俺の体調が悪くなることの方が問題だし、気になるがな。」

止めていた手をそのまま動かして、腰に手を当てるネフラム。

「例の炊き出し。それも姫様絡みだ。多分具合い悪くなるとかで、要が気遣って、俺からやたら遠ざけてくれてたからな。多分毎度の事なんだろうが、考えるべきは、姫様自体がのかどうなのか、だ。」

ネフラムの話を聞いて、身体が少し緊張してくるのを感じる。

「それって………………」

どういう事?と聞こうとしたが、それはハシゴを降りきった要ちんが、私を呼ぶ声に遮られた。ハシゴに手をかける私に、ネフラムが言った。

「もし、マジに噂が本当なら。俺が炊き出しと同じ体調不良に陥るなら。…………
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...