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第一章 時の守り人篇
第4話 時の庭園
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ヒュンッ!!という風切り音が響き渡り、物凄い速さで刃が抜かれた。
そして、チンッという音がした。刃を鞘に戻したのだろう。
「…………士くん…。」
「バ、バゥ……(士…)。」
心配そうな声色のジョーカーさんとサブローさんの声がする。
俺は生きていた。切られる寸前で頭を下げて、避けてしまっていた。
「あぁ……俺って奴はいつもこうなんだ……死ぬ勇気すらない…ダメな奴なんだ……。何に対しても向上力が無くて、いつもいつも中途半端で……。」
自分で自分の顔を殴っていた(ビビって弱い力で)。
「クソっ!クソっ!!弱虫!!意気地無し!!!お前なんか死━━」
パシッと俺の手をジョーカーさんが止めた。その顔は優しく微笑んでいた。
「士くん、自分で自分を傷つけるのはやめるんだ。」
「ジョーカーさん……だって俺…今自分で責任持つって言ったのに……結局逃げてっ…。」
「それは違うよ、士くん。私は間違いなく君を切った。だから君はちゃんと責任ある行動を取ったんだ。」
ジョーカーさんが何を言っているのか全く分からなかった。
「で、でもっ……俺は死ぬのが怖くて避けて……。」
「私が切ったと言ったら切ったんだ。それでいいじゃないか、今私が話している君は新しい君だ。そして君は生きたいという選択をした。だから今こうして生きている。そういう事だよ。」
「バウバウ、バーウ!(悪るいな士、こいつ割と馬鹿だから何言ってるか分からないかもしれねが、お前は間違ってねえぞ。)」
「は、はぁ……。」
訳分からない事を言うジョーカーさんのフォローをするサブローさん。
俺は何となくだがそれに納得した。
「馬鹿とは失礼だなぁ、サブロー。まぁ士くんも分かってくれたみたいで良かったよ。さぁ、またお茶でも飲んで話をしようか。」
優しく微笑みかけ、膝ついて泣いている俺に手を差し出すジョーカーさん。
俺は涙をふいてその手を掴む。
「あ、そうそう。約束通り私の事もサブローのことも呼び捨てで、普通に話してほしいな士くん。」
「えっ、でもまだ俺……。」
「いいからいいから、1回確実に別れたんだから、士くんと会うのはこれで2回目だ。」
またまた謎理論だけど、屈託のない笑顔のジョーカーさんになんだかこっちまで笑ってしまった。
「分かった、色々とありがとう。ジョーカー、その…改めてよろしく…。」
「こちらこそよろしく、士くん。」
「バウバウバウ!!!(俺様を忘れんなよ!?)」
「あっ、サブロー!さっきはありがとう…慰めてくれて…。」
俺はサブローを抱きかかえてお礼を言う。
「バウバウ、バウバーウ!(おうとも、礼には及ばねえぜ。ちょっと元気になったみたいで嬉しいぜ!!)。」
ふふん、と満足気な顔のサブロー。よく見ると割と可愛い。思わず頭を撫でていた。
「バゥ~♪(撫でられるの好きなんだよな)。」
満足顔のサブローをよそに、ジョーカーが話しかけてきた。
「そうだ、士くんに見せたい場所があるんだ。そこでお茶の続きといこうか。」
「見せたい場所…?」
「あぁ、着いてきてくれ。」
再び優しく微笑み、ジョーカーはどこかへと歩き始めた。
それに着いていく俺とサブロー。
長く代わり映えのしない時の回廊を真っ直ぐ進んでいく。
「…ジョーカー、この時の回廊って一体…すごく長いけど、どのくらい長いの?これだけのゲートを把握するのは大変そう…。」
「さぁ、私にも分からない。ゲートに関しても、どのゲートがどこに繋がっているのか分からないものもある。そもそもどこがどこに繋がるのかはランダムなんだ。」
「ジョーカーでも分からないんだ!?ランダム…。」
「あぁ、そもそも私は…………。」
そこで言葉を詰まらせるジョーカー。
後ろ姿だけど少し悲しそうに見えた。
「…ジョーカー……?」
「……すまない。あ、ほらあそこだ。」
誤魔化すようにジョーカーは目的地を指さす。
ジョーカーの指の先は1つの大きなゲートをさしていた。光り輝くその中は先が見えなかった。
「バウバウ!!(おっ、お気に入り所じゃねえか!!)。」
「お気に入りの所…?ゲートはランダムなんじゃ…。」
ウキウキしてしっぽを振るサブロー。
率直に疑問に思ったことを俺はジョーカーに聞いた。
「何故かここだけは変わらないんだ。たぶんここもこの回廊の一部なんだろう。」
大きなゲートの前に立つ。ゲートの中は光り輝いていて何も見えない。
その光のからとても爽やかな風が吹いている。
「な、何にも見えないんだけど大丈夫なの?」
「大丈夫だ、問題ない。さぁ士くん、どうぞ中へ。」
どこかで聞いたような事を言うジョーカー。俺は恐る恐る前へと足を踏み出した。
ゲートの中をくぐると目の前に
どこまでも続く青空と、広大な草原が広がっていた。不思議と気持ちが安らいできた。
「ここは…。」
「バウバウッ!!(すげーだろ~!!)。」
「気に入ってくれたかな?"時の庭園"と私は呼んでいる。私の一番好きな場所だ。」
サブローとジョーカーが続いて入ってくる。
「本当に…なんか上手く言葉に表せないけど、すごく綺麗で…落ち着く場所だね。」
「そうだろうそうだろう、あそこを見てごらん。あれが私の宝物だ。」
嬉しそうに言うジョーカーの目線の先にはとても大きな桜の木が佇んでいた。
「桜の木…?」
「その通り。小さな木の苗からあそこまで大きく育ってくれたんだ。」
樹齢100年なんてものじゃない、500年…いや1000年は超えていそうな大きさだ、桜の木がどれだけ長生きかはよく分からないけど、それだけの時の流れを桜の木からは感じられた。
「士くんの考え通り、1000年くらいは経ってるかな。」
「バゥ…(もうあれから1000年も経つのか、早いもんだな)。」
「唐突に俺の考え読むのやめて!?というかあの木が小さな苗の頃からってジョーカー達は何歳なんだよ!?」
つい怒涛のマシンガンツッコミを入れてしまう。
「すまないすまない、ついやってしまった。ちなみに私達は1000歳は超えてることになるな。」
「バウバウン(そうだな、割と長生きだな)。」
「めちゃくちゃ軽くない!?……とてもそんなに長生きしてるようには見えないけど…。」
見た目は人っぽい何かと犬っぽい何かだから、具体的に年齢がどうとかは分からない。それでも1000歳以上には見えない。
「2人はほんとに一体何者なの……?」
「…私達は━━━━━━━」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ドゴォーーーーーン
ジョーカーが何か言おうとした時、どこからか女の子の悲鳴と大きな地鳴りのような音が聞こえた。
「な、何!?女の子!?それに今の音は…!?」
「今の声は"イズナ"と……」
「バウバウ、バゥ!!(あぁ、あいつだな、急がねえとイズナが危ねぇ!!」
さっきまで笑っていた2人が真剣な眼差しで走り出した。
「ちょっ!?2人とも!?」
「すまない士くん!!少し待っていてくれ、用事が出来てしまった!!!」
「バウーーーー!!!(危ねぇからここでじっとしてろよ~!!!)。」
そう言い残して2人はゲートの中へ戻って行った。
「な、何なんだ……一体…。……ちょっと待ってよ!!」
1人取り残されるのも何か嫌だったし気になるので着いていくことにした。
ここで行かない、という選択をしても、遅かれ早かれいつかは遭遇することになっていただろう。
ここに来る者は皆、迷える子羊なのだから……。
そして、チンッという音がした。刃を鞘に戻したのだろう。
「…………士くん…。」
「バ、バゥ……(士…)。」
心配そうな声色のジョーカーさんとサブローさんの声がする。
俺は生きていた。切られる寸前で頭を下げて、避けてしまっていた。
「あぁ……俺って奴はいつもこうなんだ……死ぬ勇気すらない…ダメな奴なんだ……。何に対しても向上力が無くて、いつもいつも中途半端で……。」
自分で自分の顔を殴っていた(ビビって弱い力で)。
「クソっ!クソっ!!弱虫!!意気地無し!!!お前なんか死━━」
パシッと俺の手をジョーカーさんが止めた。その顔は優しく微笑んでいた。
「士くん、自分で自分を傷つけるのはやめるんだ。」
「ジョーカーさん……だって俺…今自分で責任持つって言ったのに……結局逃げてっ…。」
「それは違うよ、士くん。私は間違いなく君を切った。だから君はちゃんと責任ある行動を取ったんだ。」
ジョーカーさんが何を言っているのか全く分からなかった。
「で、でもっ……俺は死ぬのが怖くて避けて……。」
「私が切ったと言ったら切ったんだ。それでいいじゃないか、今私が話している君は新しい君だ。そして君は生きたいという選択をした。だから今こうして生きている。そういう事だよ。」
「バウバウ、バーウ!(悪るいな士、こいつ割と馬鹿だから何言ってるか分からないかもしれねが、お前は間違ってねえぞ。)」
「は、はぁ……。」
訳分からない事を言うジョーカーさんのフォローをするサブローさん。
俺は何となくだがそれに納得した。
「馬鹿とは失礼だなぁ、サブロー。まぁ士くんも分かってくれたみたいで良かったよ。さぁ、またお茶でも飲んで話をしようか。」
優しく微笑みかけ、膝ついて泣いている俺に手を差し出すジョーカーさん。
俺は涙をふいてその手を掴む。
「あ、そうそう。約束通り私の事もサブローのことも呼び捨てで、普通に話してほしいな士くん。」
「えっ、でもまだ俺……。」
「いいからいいから、1回確実に別れたんだから、士くんと会うのはこれで2回目だ。」
またまた謎理論だけど、屈託のない笑顔のジョーカーさんになんだかこっちまで笑ってしまった。
「分かった、色々とありがとう。ジョーカー、その…改めてよろしく…。」
「こちらこそよろしく、士くん。」
「バウバウバウ!!!(俺様を忘れんなよ!?)」
「あっ、サブロー!さっきはありがとう…慰めてくれて…。」
俺はサブローを抱きかかえてお礼を言う。
「バウバウ、バウバーウ!(おうとも、礼には及ばねえぜ。ちょっと元気になったみたいで嬉しいぜ!!)。」
ふふん、と満足気な顔のサブロー。よく見ると割と可愛い。思わず頭を撫でていた。
「バゥ~♪(撫でられるの好きなんだよな)。」
満足顔のサブローをよそに、ジョーカーが話しかけてきた。
「そうだ、士くんに見せたい場所があるんだ。そこでお茶の続きといこうか。」
「見せたい場所…?」
「あぁ、着いてきてくれ。」
再び優しく微笑み、ジョーカーはどこかへと歩き始めた。
それに着いていく俺とサブロー。
長く代わり映えのしない時の回廊を真っ直ぐ進んでいく。
「…ジョーカー、この時の回廊って一体…すごく長いけど、どのくらい長いの?これだけのゲートを把握するのは大変そう…。」
「さぁ、私にも分からない。ゲートに関しても、どのゲートがどこに繋がっているのか分からないものもある。そもそもどこがどこに繋がるのかはランダムなんだ。」
「ジョーカーでも分からないんだ!?ランダム…。」
「あぁ、そもそも私は…………。」
そこで言葉を詰まらせるジョーカー。
後ろ姿だけど少し悲しそうに見えた。
「…ジョーカー……?」
「……すまない。あ、ほらあそこだ。」
誤魔化すようにジョーカーは目的地を指さす。
ジョーカーの指の先は1つの大きなゲートをさしていた。光り輝くその中は先が見えなかった。
「バウバウ!!(おっ、お気に入り所じゃねえか!!)。」
「お気に入りの所…?ゲートはランダムなんじゃ…。」
ウキウキしてしっぽを振るサブロー。
率直に疑問に思ったことを俺はジョーカーに聞いた。
「何故かここだけは変わらないんだ。たぶんここもこの回廊の一部なんだろう。」
大きなゲートの前に立つ。ゲートの中は光り輝いていて何も見えない。
その光のからとても爽やかな風が吹いている。
「な、何にも見えないんだけど大丈夫なの?」
「大丈夫だ、問題ない。さぁ士くん、どうぞ中へ。」
どこかで聞いたような事を言うジョーカー。俺は恐る恐る前へと足を踏み出した。
ゲートの中をくぐると目の前に
どこまでも続く青空と、広大な草原が広がっていた。不思議と気持ちが安らいできた。
「ここは…。」
「バウバウッ!!(すげーだろ~!!)。」
「気に入ってくれたかな?"時の庭園"と私は呼んでいる。私の一番好きな場所だ。」
サブローとジョーカーが続いて入ってくる。
「本当に…なんか上手く言葉に表せないけど、すごく綺麗で…落ち着く場所だね。」
「そうだろうそうだろう、あそこを見てごらん。あれが私の宝物だ。」
嬉しそうに言うジョーカーの目線の先にはとても大きな桜の木が佇んでいた。
「桜の木…?」
「その通り。小さな木の苗からあそこまで大きく育ってくれたんだ。」
樹齢100年なんてものじゃない、500年…いや1000年は超えていそうな大きさだ、桜の木がどれだけ長生きかはよく分からないけど、それだけの時の流れを桜の木からは感じられた。
「士くんの考え通り、1000年くらいは経ってるかな。」
「バゥ…(もうあれから1000年も経つのか、早いもんだな)。」
「唐突に俺の考え読むのやめて!?というかあの木が小さな苗の頃からってジョーカー達は何歳なんだよ!?」
つい怒涛のマシンガンツッコミを入れてしまう。
「すまないすまない、ついやってしまった。ちなみに私達は1000歳は超えてることになるな。」
「バウバウン(そうだな、割と長生きだな)。」
「めちゃくちゃ軽くない!?……とてもそんなに長生きしてるようには見えないけど…。」
見た目は人っぽい何かと犬っぽい何かだから、具体的に年齢がどうとかは分からない。それでも1000歳以上には見えない。
「2人はほんとに一体何者なの……?」
「…私達は━━━━━━━」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ドゴォーーーーーン
ジョーカーが何か言おうとした時、どこからか女の子の悲鳴と大きな地鳴りのような音が聞こえた。
「な、何!?女の子!?それに今の音は…!?」
「今の声は"イズナ"と……」
「バウバウ、バゥ!!(あぁ、あいつだな、急がねえとイズナが危ねぇ!!」
さっきまで笑っていた2人が真剣な眼差しで走り出した。
「ちょっ!?2人とも!?」
「すまない士くん!!少し待っていてくれ、用事が出来てしまった!!!」
「バウーーーー!!!(危ねぇからここでじっとしてろよ~!!!)。」
そう言い残して2人はゲートの中へ戻って行った。
「な、何なんだ……一体…。……ちょっと待ってよ!!」
1人取り残されるのも何か嫌だったし気になるので着いていくことにした。
ここで行かない、という選択をしても、遅かれ早かれいつかは遭遇することになっていただろう。
ここに来る者は皆、迷える子羊なのだから……。
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