時の廻廊の守り人

鏡華

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第1話 邂逅

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今日もまた、憂鬱で重い足を無理やり動かし、あの会社じごくへ行く。

俺の名前は時風 士ときかぜ つかさ。どこにでも居る新社会人だ。

就活に失敗した俺は毎日惰性で仕事に行っていた。
怒号が飛び交う職場。新人である俺にはキャパオーバーの仕事量・責任。上司、先輩のパワハラ、モラハラ。低賃金で休日も少ない。

所謂いわゆる「ブラック企業」だった。

何度も辞めたいと思った。というか今も現在進行形で思っている。
でも、ここまで育ててくれた両親、応援してくれる祖母、奨学金、家賃や生活費etc...辞められるわけがない。

「頑張ろう……」

そう呟いて歩き出す。

通勤は電車でもバスでもなく
それほど近い職場なのだ。


その日の俺は本当にたまたま、何となくだったのだが、いつもとは違う道で通勤していた。
気分転換になると思ったのだろうが、今考えるとに導かれたのかもしれない。

「たまには違う道も新鮮で良いな」

1つ違う道に入っただけで、今まで見ていた景色とは変わってくる。不思議なものだ。
もっと不思議なのは、急にが出てきた事だ。
次第に濃くなっていき、前が見えなくなってきた。

「すげえ霧、道に迷いそう…大丈夫かこれ…」

真昼間の街中でこんなに霧が深くなるなんてあるのだろうか、遅刻したら怒らるな…そんなことを考えながら歩き続ける。


数分後、気がついたら霧は晴れていた。

だがそこは見たことも無い場所だった。
いつもの街並みではなく、何かの建物の中、長い長い廊下のような所に俺は立っていた。
右を見ても左を見てもどこまでも続いているかのような感覚に陥った。

「なっ、えっ、ここどこだよ!?そ、そうだ!地図アプリ!!」

とっさにスマホを取り出し地図アプリを起動、これで今いる所が分かる。
……と思っていたのだが

「……現在地が特定できません。そんなことあるか!?圏外じゃあねぇのに!?つーか左上に表示されてるキャリアが出てねえ!!!無料WiーFiスポットかここは!!!」

パニックになり自分でも訳の分からないツッコミを入れる。

このままじゃ遅刻する…怒られる……そういう不安と見知らぬ場所で焦りが募る。

その場であたふたしていると

「やぁ、よく来てくれたね。」

と人の声が聞こえた。「人だ!」そう思い声の聞こえた方に振り返る。

「ようこそ、時の廻廊ときのかいろうへ。」


人ーーのような形をしたがそこに立っていた。
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