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君が紡いだ唄・1
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大学の夏休み、私は実家に帰ってきていた。
毎日毎日、雨ばかり降っている。大粒の雨が窓に打ち付けては流れていく。
今日も空は灰色。
まるで、君がいなくなってぽっかり穴が空いた私の心のようだ。
「あれからもう1年…まだ昨日の事のように思い出すよ…。」
あの日から1年が経っても、私の中の時はあの日から変わらず、今の天気のように雨模様だ。目を閉じると浮かんでくる、君と過ごした日々。長いようで短かった楽しいあの日々が。
「どうして出会っちゃったんだろう…。ねぇ、"響介くん"……っ。」
━━━━━━━━━━━━━━━
上京して大学に入ったばかりの私は、知り合いが誰も居なかったので、周りになかなかに馴染めずいつも1人だった。
趣味も無く、サークルにも所属していなかった。
毎日「何となく」で過ごしていた。
こうやって何も無く卒業して、何となく就職して、一生独りで誰にも知られずに死んでいくんだ。そう思っていた。
そう思っていたのに…彼に出会ってしまった。あの日あの時、あの場所で…。
午前中の講義が終わり、お昼の時間になった。
私はいつものように家で作ってきたお弁当を持って大学の近くの公園に向かう。
その公園端っこの方の、木陰ができるベンチに座って、ゆっくりと午後を過ごすのが最近の日課。その時間だけは憂鬱な平日の中での唯一大好きなひと時だ。
……のはずが今日は違った。いつもは誰もいないあのお気に入りの場所に、先客がいた。
明るい茶髪のチャラそうな男が1人、ギターを弾きながら座っていた。
「(な、なんで~…なんでわざわざこんな端っこの地味な席でギターなんか弾いてるの~…!!)」
私の唯一の癒しタイムが……と、おどおどしていると、その男がこちらに気づき話しかけてきた。
「よっ!何か俺に用?」
"にっ"と笑いかけながら私にそう言う。
「えっ…あ、あの…その……。」
突然話しかけられたのでもじもじする私。その様子を見て少し察したのか
「あ、もしかしてここ君のお気に入りだったり?いやぁ、それならごめん。今どくから座っていいよ。」
苦笑いをして立ち上がり、ベンチをあけてくれた。
「お詫びと言っちゃなんだけど、俺の歌聴いてくれない?聞き流しても良いから、お昼ご飯の余興とでも思ってさ。」
「(えぇ……私の大好きな1人だけの時間が……。)わ、分かりました。」
こういう時、なんでいつも心と思ってることと真逆のことを言ってしまうのだろう。お会計の時、思ってたより高い時もそうだ。断って買うのを辞めればいいのに、流れでそのまま払ってしまう。自分でも馬鹿だなぁ…と思う。
「ありがとう!じゃあ聴いてくれ。」
そう言って男はギターを弾き、歌い始めた。
最初は早く終わってくれないかなぁ、と思っていたが、その歌声とギターの旋律が何故か妙に心に染み込んでくる。
プロの人と比べたら足元にも及ばない。それでも心に響いてくる、そんな歌だった。
時間にして4分くらいだろうか、私はお昼ご飯を食べるのも忘れ聴き入っていた。
「…ふぅ、ご清聴ありがとう!!」
あまりに聴き入っていてその言葉で、はっと我に返る。
「すごい…聴き入っちゃいました…!!バンドとか組んでらっしゃるんですか?」
普段ならこんなにグイグイと人と話をしないのだが、歌に感心を受けて興奮気味に質問した。
「いや、1人だよ。でも将来はデビューして、世界中の人に俺の歌を届けたいと思ってるんだ。その道中で色んな仲間に出会えたらいいなとも思うけど。」
はははっと爽やかに笑いながら言う。見かけによらず真っ直ぐな人みたいだ。
「俺は音無 響介。あそこの大学の1年生だ、以後よろしくっ!!」
じゃら~ん とギターを鳴らしながら名乗る准。
「音無 響介さん……ってまさかの同じ大学!?」
「えっ、君もあそこの大学!?すげぇ偶然。」
「ほんとですね…!あ、私は青春 花陽と言います。私も1年生です…っ。」
「同じ大学でしかも同期…、これが運命の出会いってやつか……。なんてな!!」
お互い何だか面白くなって笑い合っていた。
そんなこんなで知り合いになった私と響介くん、彼は冗談交じりに笑いながら"運命の出会い"と言っていたけど、本当に運命の出会いだった。そう、今でも私は思っている。
それから私達はちょくちょく一緒にお昼ご飯を食べるようになった。
いつもの公園はもちろん、大学近くの喫茶店やファミリーレストラン。色んなところでご飯を食べた。
携帯の連絡先も交換して、毎晩やり取りが続いた。
話題はいつも"音楽"だった。彼、響介くんは小さい頃から歌手になるのが夢で、小学生の頃からギターと歌の練習をし始めたそうだ。
響介くんの歌はとても真っ直ぐで、1隻の船で大海原に飛び出すような、爽快な歌ばかりだった。
響介くんと一緒にお昼を食べるようになって3ヶ月ほど経っていた。
歌を歌う本人もとても真っ直ぐで正直な性格だった。
「嫌な事は嫌。」「やりたい事だけを一生懸命ひたむきにする。」そういう人だった。私とは真逆で羨ましかった。彼みたいになれたらなぁ、と思うようになっていた。
出会ってから半年もするとお昼ご飯だけでなく、休みの日にたまに一緒にカラオケに行ったり、遊びに行ったりするようになった。
響介くんがカラオケで歌うのは、彼らしい、彼が好きそうなバンドの曲ばかり歌っていた。歌を歌っている時の響介くんは本当にキラキラしていて、とても楽しそうだった。
私はいつも好きなゲームシナリオライターの作詞作曲した歌ばかり歌っていた。自分の歌唱力には自信がなかったが、歌うこと自体は好きだったから、響介くんに負けじと頑張って歌う。
そんな歌う私に対して響介くんが言った
「花陽の歌声綺麗だな!俺が作詞作曲した歌、歌ってみてくれない?花陽用に書き下ろすからさ!」
「わ、私が響介くんの歌を!?無理だよ…私音痴だし…。」
「そんなことない!俺は花陽の歌声好きだよ。」
そう言われてドキッとした。私なんかが響介くんが作った歌を歌うなんて、恐れ多いし勿体ない。
でも、私のために1曲書き下ろしてくれるのはすごく嬉しかった。
「…分かった、ありがとう。響介くんっ。」
「よし!お礼を言うのは俺の方だよ、ありがとう!!」
また爽やかに"にっ"と笑う響介くん。
「さってと、時間が無いな…。早速作るからもう帰るわ。楽しみにしててくれよな、花陽にピッタリの曲にするから!」
と言い走り去る響介くん。
いつも前を向いて、音楽のことにすごく一生懸命で、本当にかっこいい人だなと思う。そんな真っ直ぐな彼のそばで、彼が歌う歌をずっと聴いていたい。ずっと響介くんと一緒にいたい。いつしか私はそう思っていた。
(私は響介くんのことが好きなんだ)
自分の恋心に気づく。告白したら驚くかな、嫌じゃないかな。…受け入れてくれるかな。
「響介くんは私のことをどう思っているのだろう。ただの友達だったら寂しいな。」
1人、頼んでおいたアイスカフェモカを飲む。氷が溶けていて少しぬるかった。
━━━━━━━━━━━━━━━
そんな彼からの連絡が途絶えた。
毎日毎日、欠かさずに返信してくれていたのに。
嫌われたのか不安になる。何か悪いことを言ってしまったのか、思いつく限り考えてみた、でも思い当たる節はない。
「響介くん…どうしたんだろう…。」
私は一言「響介くん、大丈夫?」とだけメッセージを送る。
それでも彼からの返信が来ることは無かった。
私と居るのに飽きたのかもしれない、「好きなことを好きなだけやる」彼だから…。
それから2週間後、講義が終わりお昼の時間になる。いつものように、お気に入りの公園のベンチに向かう。少し外で食べるには寒い季節になっていたが、それでも私はあの場所が好きだった。彼と出会ったあの場所が。
1人でのお昼ご飯。(昔に戻っただけだ)そう心に言い聞かせる。そうすれば辛くない。そう思うようにしていた。
そうしていつもの公園のベンチにたどり着く…………先客がいた。見慣れた明るい茶髪とギター。響介くんだ。
私は驚きのあまり呆然と立ち尽くしていた。すると彼は私に気づいて
「よっ、花陽。久しぶり!!」
いつもみたいに、爽やかに"にっ"と笑いながら言う響介くん。でもどこかおかしい。
「き、響介くん…なんで……」
「ごめんごめん、ちょっと曲作りに没頭し過ぎてさ。はははっ。」
謝りながら言う彼は、やせ細り、顔色が悪かった。更には服が病院で着る患者医のようなものだった。そしてギターの横には松葉杖が置いてあった。
「き、響介くん何かあったの!?この2週間で何が…何がっ……。」
変わり果てた彼に対する驚きと、会えた嬉しさと安心で涙が零れた。
「か、花陽…ごめん……、ちゃんと返信できなくて…。俺…俺さ……っ!……ゴホッゴホッ!!」
突然咳き込み始め、倒れ込む響介くん。かなり苦しそうだ。
「響介くん!?大丈夫!?」
私は駆け寄り、彼の顔をのぞき込む。
「なんでもっ…な……ゴホッ!!ぅぷっ…。」
苦しそうに咳き込む彼の口から血が吐きでていた。響介くん手が真っ赤に染まっていた。かなりの血の量だ。
「っ!?すごい血…響介くん!響介くんしっかり!!」
必死に響介くんに呼びかける。響介くんは血を吐いたまま意識を失っていた。顔の周りのコンクリートが真っ赤な血で染っていく。
私は周りに居た人の協力を受けて救急車を呼び、響介くんと一緒に病院へ向かった。爽やかな笑顔など見る影もないほど、苦しそうな表情の彼を見守りながら…。
毎日毎日、雨ばかり降っている。大粒の雨が窓に打ち付けては流れていく。
今日も空は灰色。
まるで、君がいなくなってぽっかり穴が空いた私の心のようだ。
「あれからもう1年…まだ昨日の事のように思い出すよ…。」
あの日から1年が経っても、私の中の時はあの日から変わらず、今の天気のように雨模様だ。目を閉じると浮かんでくる、君と過ごした日々。長いようで短かった楽しいあの日々が。
「どうして出会っちゃったんだろう…。ねぇ、"響介くん"……っ。」
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上京して大学に入ったばかりの私は、知り合いが誰も居なかったので、周りになかなかに馴染めずいつも1人だった。
趣味も無く、サークルにも所属していなかった。
毎日「何となく」で過ごしていた。
こうやって何も無く卒業して、何となく就職して、一生独りで誰にも知られずに死んでいくんだ。そう思っていた。
そう思っていたのに…彼に出会ってしまった。あの日あの時、あの場所で…。
午前中の講義が終わり、お昼の時間になった。
私はいつものように家で作ってきたお弁当を持って大学の近くの公園に向かう。
その公園端っこの方の、木陰ができるベンチに座って、ゆっくりと午後を過ごすのが最近の日課。その時間だけは憂鬱な平日の中での唯一大好きなひと時だ。
……のはずが今日は違った。いつもは誰もいないあのお気に入りの場所に、先客がいた。
明るい茶髪のチャラそうな男が1人、ギターを弾きながら座っていた。
「(な、なんで~…なんでわざわざこんな端っこの地味な席でギターなんか弾いてるの~…!!)」
私の唯一の癒しタイムが……と、おどおどしていると、その男がこちらに気づき話しかけてきた。
「よっ!何か俺に用?」
"にっ"と笑いかけながら私にそう言う。
「えっ…あ、あの…その……。」
突然話しかけられたのでもじもじする私。その様子を見て少し察したのか
「あ、もしかしてここ君のお気に入りだったり?いやぁ、それならごめん。今どくから座っていいよ。」
苦笑いをして立ち上がり、ベンチをあけてくれた。
「お詫びと言っちゃなんだけど、俺の歌聴いてくれない?聞き流しても良いから、お昼ご飯の余興とでも思ってさ。」
「(えぇ……私の大好きな1人だけの時間が……。)わ、分かりました。」
こういう時、なんでいつも心と思ってることと真逆のことを言ってしまうのだろう。お会計の時、思ってたより高い時もそうだ。断って買うのを辞めればいいのに、流れでそのまま払ってしまう。自分でも馬鹿だなぁ…と思う。
「ありがとう!じゃあ聴いてくれ。」
そう言って男はギターを弾き、歌い始めた。
最初は早く終わってくれないかなぁ、と思っていたが、その歌声とギターの旋律が何故か妙に心に染み込んでくる。
プロの人と比べたら足元にも及ばない。それでも心に響いてくる、そんな歌だった。
時間にして4分くらいだろうか、私はお昼ご飯を食べるのも忘れ聴き入っていた。
「…ふぅ、ご清聴ありがとう!!」
あまりに聴き入っていてその言葉で、はっと我に返る。
「すごい…聴き入っちゃいました…!!バンドとか組んでらっしゃるんですか?」
普段ならこんなにグイグイと人と話をしないのだが、歌に感心を受けて興奮気味に質問した。
「いや、1人だよ。でも将来はデビューして、世界中の人に俺の歌を届けたいと思ってるんだ。その道中で色んな仲間に出会えたらいいなとも思うけど。」
はははっと爽やかに笑いながら言う。見かけによらず真っ直ぐな人みたいだ。
「俺は音無 響介。あそこの大学の1年生だ、以後よろしくっ!!」
じゃら~ん とギターを鳴らしながら名乗る准。
「音無 響介さん……ってまさかの同じ大学!?」
「えっ、君もあそこの大学!?すげぇ偶然。」
「ほんとですね…!あ、私は青春 花陽と言います。私も1年生です…っ。」
「同じ大学でしかも同期…、これが運命の出会いってやつか……。なんてな!!」
お互い何だか面白くなって笑い合っていた。
そんなこんなで知り合いになった私と響介くん、彼は冗談交じりに笑いながら"運命の出会い"と言っていたけど、本当に運命の出会いだった。そう、今でも私は思っている。
それから私達はちょくちょく一緒にお昼ご飯を食べるようになった。
いつもの公園はもちろん、大学近くの喫茶店やファミリーレストラン。色んなところでご飯を食べた。
携帯の連絡先も交換して、毎晩やり取りが続いた。
話題はいつも"音楽"だった。彼、響介くんは小さい頃から歌手になるのが夢で、小学生の頃からギターと歌の練習をし始めたそうだ。
響介くんの歌はとても真っ直ぐで、1隻の船で大海原に飛び出すような、爽快な歌ばかりだった。
響介くんと一緒にお昼を食べるようになって3ヶ月ほど経っていた。
歌を歌う本人もとても真っ直ぐで正直な性格だった。
「嫌な事は嫌。」「やりたい事だけを一生懸命ひたむきにする。」そういう人だった。私とは真逆で羨ましかった。彼みたいになれたらなぁ、と思うようになっていた。
出会ってから半年もするとお昼ご飯だけでなく、休みの日にたまに一緒にカラオケに行ったり、遊びに行ったりするようになった。
響介くんがカラオケで歌うのは、彼らしい、彼が好きそうなバンドの曲ばかり歌っていた。歌を歌っている時の響介くんは本当にキラキラしていて、とても楽しそうだった。
私はいつも好きなゲームシナリオライターの作詞作曲した歌ばかり歌っていた。自分の歌唱力には自信がなかったが、歌うこと自体は好きだったから、響介くんに負けじと頑張って歌う。
そんな歌う私に対して響介くんが言った
「花陽の歌声綺麗だな!俺が作詞作曲した歌、歌ってみてくれない?花陽用に書き下ろすからさ!」
「わ、私が響介くんの歌を!?無理だよ…私音痴だし…。」
「そんなことない!俺は花陽の歌声好きだよ。」
そう言われてドキッとした。私なんかが響介くんが作った歌を歌うなんて、恐れ多いし勿体ない。
でも、私のために1曲書き下ろしてくれるのはすごく嬉しかった。
「…分かった、ありがとう。響介くんっ。」
「よし!お礼を言うのは俺の方だよ、ありがとう!!」
また爽やかに"にっ"と笑う響介くん。
「さってと、時間が無いな…。早速作るからもう帰るわ。楽しみにしててくれよな、花陽にピッタリの曲にするから!」
と言い走り去る響介くん。
いつも前を向いて、音楽のことにすごく一生懸命で、本当にかっこいい人だなと思う。そんな真っ直ぐな彼のそばで、彼が歌う歌をずっと聴いていたい。ずっと響介くんと一緒にいたい。いつしか私はそう思っていた。
(私は響介くんのことが好きなんだ)
自分の恋心に気づく。告白したら驚くかな、嫌じゃないかな。…受け入れてくれるかな。
「響介くんは私のことをどう思っているのだろう。ただの友達だったら寂しいな。」
1人、頼んでおいたアイスカフェモカを飲む。氷が溶けていて少しぬるかった。
━━━━━━━━━━━━━━━
そんな彼からの連絡が途絶えた。
毎日毎日、欠かさずに返信してくれていたのに。
嫌われたのか不安になる。何か悪いことを言ってしまったのか、思いつく限り考えてみた、でも思い当たる節はない。
「響介くん…どうしたんだろう…。」
私は一言「響介くん、大丈夫?」とだけメッセージを送る。
それでも彼からの返信が来ることは無かった。
私と居るのに飽きたのかもしれない、「好きなことを好きなだけやる」彼だから…。
それから2週間後、講義が終わりお昼の時間になる。いつものように、お気に入りの公園のベンチに向かう。少し外で食べるには寒い季節になっていたが、それでも私はあの場所が好きだった。彼と出会ったあの場所が。
1人でのお昼ご飯。(昔に戻っただけだ)そう心に言い聞かせる。そうすれば辛くない。そう思うようにしていた。
そうしていつもの公園のベンチにたどり着く…………先客がいた。見慣れた明るい茶髪とギター。響介くんだ。
私は驚きのあまり呆然と立ち尽くしていた。すると彼は私に気づいて
「よっ、花陽。久しぶり!!」
いつもみたいに、爽やかに"にっ"と笑いながら言う響介くん。でもどこかおかしい。
「き、響介くん…なんで……」
「ごめんごめん、ちょっと曲作りに没頭し過ぎてさ。はははっ。」
謝りながら言う彼は、やせ細り、顔色が悪かった。更には服が病院で着る患者医のようなものだった。そしてギターの横には松葉杖が置いてあった。
「き、響介くん何かあったの!?この2週間で何が…何がっ……。」
変わり果てた彼に対する驚きと、会えた嬉しさと安心で涙が零れた。
「か、花陽…ごめん……、ちゃんと返信できなくて…。俺…俺さ……っ!……ゴホッゴホッ!!」
突然咳き込み始め、倒れ込む響介くん。かなり苦しそうだ。
「響介くん!?大丈夫!?」
私は駆け寄り、彼の顔をのぞき込む。
「なんでもっ…な……ゴホッ!!ぅぷっ…。」
苦しそうに咳き込む彼の口から血が吐きでていた。響介くん手が真っ赤に染まっていた。かなりの血の量だ。
「っ!?すごい血…響介くん!響介くんしっかり!!」
必死に響介くんに呼びかける。響介くんは血を吐いたまま意識を失っていた。顔の周りのコンクリートが真っ赤な血で染っていく。
私は周りに居た人の協力を受けて救急車を呼び、響介くんと一緒に病院へ向かった。爽やかな笑顔など見る影もないほど、苦しそうな表情の彼を見守りながら…。
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