楠葵先輩は頼られたい

黒姫百合

文字の大きさ
上 下
65 / 78

第六十五話

しおりを挟む
「それじゃーお泊り会ということでここからは寝るまで遊ぶわよー。みんな飲み物は持ったかしら。それじゃーかんぱーい」
「「「かんぱーい」」」

 全員がお風呂を入り終えた後、葵が缶ビールを片手に音頭を取る。
 本日二回目の乾杯である。
 成人年齢が十八歳に引き下がった影響により、十八歳からタバコやお酒を飲むことができるようになった。

「ぷはっー、風呂上がりのビールは最高だわ」

 十八歳の葵はおじさん臭いこと言いながら、おいしそうにビールを飲む。
 まだ十五歳の優にとっては未知の味だ。
 ビールをおいしそうに飲む葵を見て、十八歳になったらお酒を飲んでみたいと思う優だった。

「瞳はまだ十七歳だからお酒が飲めないのよね~。おこちゃま~」
「うっせ。少し早く生まれたからって調子に乗りやがって」
「私、もう大人だから。子供の瞳君とは違うのだよ」
「ヤバい、マジでウザい」

 十八歳の葵が十七歳の瞳をからかっている。
 瞳の言うとおり、確かにあれはウザい。
 いつもは大人っぽい葵の子供っぽい姿も、それはそれで新鮮だった。

「楠先輩ってちゃんと酔っぱらうんだね。お酒飲んでも変わらないと思ってた」

 酔っぱらってウザ絡みをしている葵を見て、愛音は意外そうな表情をしていた。

「葵、後輩たちが引いてるぞ」
「あっ、ごめんね三人とも。大丈夫、そんなに酔ってないから」

 瞳の言葉で後輩たちが引いていることに気づいた葵は、すぐにいつもの大人っぽい葵に戻る。

「ついお酒を飲むと、まだお酒が飲めない瞳をからかっちゃうだけなの。瞳もお酒が飲めるようになったらできなくなっちゃうから」
「ホントはた迷惑な女だろ、葵は」
「別に楠先輩ははた迷惑な女ではないですよ。むしろ、楠先輩にも年相応な部分があってより親近感がわきました」
「「「……」」」

 瞳の言葉にイラっとした優は、思わず瞳に反論した。
 確かにさっきの葵はウザいと優も思う。
 でも迷惑ではない。
 むしろ、いろいろな葵が見れて優は嬉しかった。

「中村って、楠先輩が好きなの」
「好きか嫌いかと言われたら好きだよ。大人っぽくて優しいし、一緒にいて楽しいし」
「……」

 急に愛音から質問された優は、思ったことを伝える。
 葵のことを好きか嫌いと問われれば、自信を持って好きだと言える。
 むしろ、嫌いになる要素がない。
 優の告白に葵は言葉にならない言葉を発しながら顔を真っ赤に染めている。
 きっと酔いが回ったのだろう。

「もちろん、木村さんも倉木さんも西条先輩も好きですよ。ここにいる人全員好きです。一緒にいて楽しいですから……ってすみません。私、凄く恥ずかしいこと言ってますよね。忘れてください」

 言っていて自覚したが、これはかなり恥ずかしいことを言っている。
 いくら友達として好きだとしても素直に『好き』と伝えるのは結構恥ずかしい。
 優が一人で恥ずかしがっていると今まで緊張していた空気が弛緩した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好感度MAXから始まるラブコメ

黒姫百合
恋愛
「……キスしちゃったね」 男の娘の武田早苗と女の子の神崎茜は家が隣同士の幼馴染だ。 二人はお互いのことが好きだったがその好き幼馴染の『好き』だと思い、恋愛の意味の『好き』とは自覚していなかった。 あまりにも近くにいすぎたからこそすれ違う二人。 これは甘すぎるほど甘い二人の恋物語。

柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合
恋愛
「何度も言うが私は青春が嫌いだ」 高校一年生の男の娘、柊瑞希は青春が大嫌いだ。 理由はそんな安っぽい言葉で自分の人生や苦悩を語ってほしくないからである、 青春なんていらない。 瑞希はそう思っていた。 部活も時間の無駄だと思った瑞希は帰宅部にしようとするものの、この学校には帰宅部はなく瑞希はどこかの部活に入るように先生に言われる。 それと同じタイミングで瑞希と同様部活は時間の無駄だと考える少女が先生と言い争っていた。 その後、瑞希は部活をしない部活を創立し、二人の女子と交流を持つようになり……。 ひねくれ男の娘が少しずつ大切なものを知っていく物語が今、始まる。

完結【R―18】様々な情事 短編集

秋刀魚妹子
恋愛
 本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。  タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。  好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。  基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。  同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。  ※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。  ※ 更新は不定期です。  それでは、楽しんで頂けたら幸いです。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ウザい先輩と可愛げのない後輩

黒姫百合
恋愛
「本当に君は可愛げのない後輩だな」 高校一年生の春、北野真希(きたのまき)は高校三年生の鈴木紗那(すずきさな)に絡まれる。 紗那は真希と仲良くなりたいと思うものの、他人に興味がない真希は紗那をウザがる。 でも何度も話しかけられるたびに真希の方も無視するよりも適当に相手にする方が、時間を浪費しなくて済むことに気づき、少しずつ紗那との交流が増えていく。 そんなある日、紗那とキスをしてしまい……。 ウザイ先輩と可愛げのない後輩が紡ぐ、ラブコメが今、始まる。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

処理中です...