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第二十八話
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「ありがとう中村さん。良いお湯だったわ」
「それは良かったです」
髪を乾かしてきた葵は、シャワーを浴びた直後ということもあり蒸気していた。
まだ少し湿っている髪。その髪からは優と同じトリートメントの匂いがする。
まるで同棲中の彼女みたいで、少しだけエッチだった。
葵のパジャマはピンクと白のモコモコしたパジャマだった。
制服と違い、胸の締め付けがない分、胸の膨らみが顕著に現れている。
男子の目にはあまりよろしくないが、意識してないと目が行ってしまう。
「どうしたの中村さん。急に首を振り出して」
「いえ、なんでも……ありません。大丈夫です」
急に首を振り出した優を心配した葵は優の顔を覗き込む。
葵の顔が目の前にある。
お風呂上がりの葵は今まで葵とは違い、完全にプライベートな葵だった。
無防備で微かに火照っている葵。
初めて見る葵に優はまた意識してドキドキする。
改めて思うが葵はやっぱり美少女だ。
こんな美少女と一つ屋根の下、パジャマ姿でいることが未だに信じられない。
微かに葵の吐息がかかっている。
「ち、近いです」
「ご、ごめんね」
あまりの近さに、優は葵を女子と意識してしまい目をそらす。
葵は優が嫌がって目をそらしたと思い、謝罪する。
気まずい空気が流れる。
その時、タイミング良くご飯が炊き上がる音が鳴る。
「ご飯が炊けたみたいね。唐揚げとか温めましょうか」
「そうですね。みそ汁はインスタントで良いですか」
「良いよ」
「分かりました。ケトルでお湯温めますね」
「私、料理分けるから中村さんは運んでちょうだい」
二人は気まずい空気を払しょくさせるかのように、夕飯の準備に取り掛かる。
みそ汁も一から作るのは面倒なので、こういう時インスタントみそ汁は助かる。
葵も優の怪我を慮って、できるだけ片手でもできるものを頼む。
こういうところからも葵の優しさが伝わってくる。
その後、テーブルにご飯とお惣菜の唐揚げ、カットサラダとインスタントみそ汁、麦茶を用意して今日の夕飯は完成である。
ちゃんと野菜もあるし、栄養バランス的には問題ないだろう。
「「いただきます」」
二人は手を合わせて食事のあいさつをする。
優は左手にフォークを持つ。
利き手ではない手で箸を使うのは難易度が高い。
「中村さんは一人暮らしだから毎日一人でご飯食べているのよね」
「はい。一人暮らしなので一人で食べてますね」
「でも一人だと寂しくない。毎日一人だったら少し寂しいかも」
学生寮に一人で住んでいるのだから夕飯はいつも一人で食べている。
葵は一人で食事をするのは寂しいと思う人間らしい。
それが一般的な人の考えなのだろう。
でも優にとって一人で食べることが日常になり、今は寂しく思うことはなくなった。
「もう……慣れましたから」
「中村さんは慣れるのが早いわね。まだ二週間ぐらいしか経っていないのに」
葵は優の慣れの早さに驚いているが、それは葵の勘違いだ。
優が一人なのは二週間どころではない。もう何年も一人だ。
でもこれは葵に教えなくても良いことだ。
だって葵はただの先輩だから。
だから優はあえて、葵の言葉を訂正しなかった。
「それは良かったです」
髪を乾かしてきた葵は、シャワーを浴びた直後ということもあり蒸気していた。
まだ少し湿っている髪。その髪からは優と同じトリートメントの匂いがする。
まるで同棲中の彼女みたいで、少しだけエッチだった。
葵のパジャマはピンクと白のモコモコしたパジャマだった。
制服と違い、胸の締め付けがない分、胸の膨らみが顕著に現れている。
男子の目にはあまりよろしくないが、意識してないと目が行ってしまう。
「どうしたの中村さん。急に首を振り出して」
「いえ、なんでも……ありません。大丈夫です」
急に首を振り出した優を心配した葵は優の顔を覗き込む。
葵の顔が目の前にある。
お風呂上がりの葵は今まで葵とは違い、完全にプライベートな葵だった。
無防備で微かに火照っている葵。
初めて見る葵に優はまた意識してドキドキする。
改めて思うが葵はやっぱり美少女だ。
こんな美少女と一つ屋根の下、パジャマ姿でいることが未だに信じられない。
微かに葵の吐息がかかっている。
「ち、近いです」
「ご、ごめんね」
あまりの近さに、優は葵を女子と意識してしまい目をそらす。
葵は優が嫌がって目をそらしたと思い、謝罪する。
気まずい空気が流れる。
その時、タイミング良くご飯が炊き上がる音が鳴る。
「ご飯が炊けたみたいね。唐揚げとか温めましょうか」
「そうですね。みそ汁はインスタントで良いですか」
「良いよ」
「分かりました。ケトルでお湯温めますね」
「私、料理分けるから中村さんは運んでちょうだい」
二人は気まずい空気を払しょくさせるかのように、夕飯の準備に取り掛かる。
みそ汁も一から作るのは面倒なので、こういう時インスタントみそ汁は助かる。
葵も優の怪我を慮って、できるだけ片手でもできるものを頼む。
こういうところからも葵の優しさが伝わってくる。
その後、テーブルにご飯とお惣菜の唐揚げ、カットサラダとインスタントみそ汁、麦茶を用意して今日の夕飯は完成である。
ちゃんと野菜もあるし、栄養バランス的には問題ないだろう。
「「いただきます」」
二人は手を合わせて食事のあいさつをする。
優は左手にフォークを持つ。
利き手ではない手で箸を使うのは難易度が高い。
「中村さんは一人暮らしだから毎日一人でご飯食べているのよね」
「はい。一人暮らしなので一人で食べてますね」
「でも一人だと寂しくない。毎日一人だったら少し寂しいかも」
学生寮に一人で住んでいるのだから夕飯はいつも一人で食べている。
葵は一人で食事をするのは寂しいと思う人間らしい。
それが一般的な人の考えなのだろう。
でも優にとって一人で食べることが日常になり、今は寂しく思うことはなくなった。
「もう……慣れましたから」
「中村さんは慣れるのが早いわね。まだ二週間ぐらいしか経っていないのに」
葵は優の慣れの早さに驚いているが、それは葵の勘違いだ。
優が一人なのは二週間どころではない。もう何年も一人だ。
でもこれは葵に教えなくても良いことだ。
だって葵はただの先輩だから。
だから優はあえて、葵の言葉を訂正しなかった。
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