楠葵先輩は頼られたい

黒姫百合

文字の大きさ
17 / 78

第十七話

しおりを挟む
 四月中旬。

「中村じゃん。おっは~」

 朝、昇降口で外靴から上履きに履き替えていると、同級生のギャルに話しかけられる。
 陽キャか陰キャかと聞かれたら間違いなく陰キャ側の優は朝からテンションが高いギャル、愛音のテンションについて行くことができなかった。

「どした~中村~。もしかして具合でも悪いのか~」

 あいさつがなかった優に愛音は優のおでこを触り、熱を確認する。

「う~ん、熱とかはなさそうだけど……ちょ、どうしたの中村、急に顔が赤くなってるんだけど」

 いきなりおでこを触られた優は照れと恥ずかしさのあまり顔が赤くなる。
 そんな優を見て愛音は心配の声を上げる。

「……おはよう木村さん……べ、別に大丈夫」
「全然大丈夫には見えないんだけど、具合悪いならあたし肩貸すよ。それでも辛いならおんぶしてあげるから」

 愛音はギャルだが、物凄く優しいギャルのようだ。
 別に具合が悪くなかった優は愛音の申し出を断ろうとするが、愛音も一歩も引かない。
 愛音は優しいが、押しも強い。

「大丈夫だから木村さん。具合悪くないから」
「……中村がそこまで言うならもうなにも言わないけど無理はするなよ。入学式のように一週間も休むはめになるからね」

 入学式から一週間休んだせいで、友達作りに出遅れた優。
 だから誰も優のことを覚えていないと思っていたが、愛音はちゃんと覚えていたらしい。
 それが嬉しかった。

「あたしたちもう友達だから変な我慢はするなよ」
「うん、ありがとう木村さん」
「中村さん、愛音ちゃんおはよう。……二人ともずいぶん仲良くなったんだね」

 優の肩に腕を回している愛音を見て、実乃里は微笑ましそうな表情を浮かべている。
 愛音には二度、『友達』と言われたがなんだかこそばゆかった。
 愛音からは、優しいフローラルの匂いが漂ってきてドキッとした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...