楠葵先輩は頼られたい

黒姫百合

文字の大きさ
上 下
1 / 78

第一話

しおりを挟む
 四月は始まりの季節でもあり、出会いの季節でもある。
 高校生一年生は三年間過ごした中学を卒業し、中高一貫校でもない限り皆環境がガラリと変わる。
 入学初日はよそよそしかったクラスメイトたちも一週間も経てば、中学とはまた違うグループができる。

「あっ、私、一人だ」

 一年二組の教室で、新入生の中村優は自分の席で頭を抱えていた。



 どうして優がグループに入れず孤立しているのか。
 それは入学式から今日までの約一週間、風邪で寝込んでいて学校を休んでいたからである。
 優は完全に友達作りに乗り遅れてしまったのである。
 これはかなり致命的で、一度グループができてしまうとなかなか入りづらい。

「入学式の時、風邪さえ引かなければ……」

 優は一人、風邪を引いたことを後悔する。
 もし、入学式の時風邪を引かなければ、ボッチにはならなかったはずだ。

 多分。

 入学式の朝から熱っぽかったのは自覚していたが、最初学校を休んでしまうと孤立してしまうのは中学の時から分かっていたため、無理して学校に行ったのだがそれが間違いだった。
 無理して学校に行ったせいで余計に体調が悪化し、一週間も寝込んでしまった。

「……一旦、教室の外に出よう」

 なんとなく感じる居心地の悪さに耐えられなかった優は、教室の外に出る。

 中村優(なかむらゆう)は高校一年生の男の娘である。
 男の娘と言っても創作で出てくる男の娘と同じようで違う生き物である。
 この世界には男子である男の娘と女子である女の子の二種類しかいない。
 だから、顔だけで見ると男の娘なのか女の子なのか分からない。
 男の娘の特徴は胸がないことと、男性器がついており、女性は胸が発達し女性器が付いている。
 だから体つきは男の娘の方がゴツゴツしており、女の子の方が丸みを帯びているが、パッと見はあまり大差はない。

 閑話休題。

 身長百五十五センチ、黒髪のミディアムのストレートである。
 体型も結構華奢である。
 制服は男子は紺色のブレザーに黒のチェックのスラックス。
 女子は紺のブレザーに黒のチェックのスカート。
 首に付けるリボンは学年ごとに違う色をしており、今年は一年生が赤、二年生が黄色、三年生が青色である。
 教室の外に出た優だが、もちろん行く当てもない。
 適当に校内を歩いて、時間ギリギリになったら教室に戻るだけだ。
 教室の机に一人でいるよりかは、校内を一人で歩いていた方が精神衛生上、優的には良い。
 当てもなく校内を歩いていると、曲がり角で誰かにぶつかる。

「いたっ」
「ごめんなさい。大丈夫?」

 体格差のせいで優は尻餅をつく。
 そんな優に手を差し伸べ心配そうに顔を覗きこんで来る少女がいた。
 ボッチの優でもこの少女が誰なのか一発で分かった。

 生徒会長の楠葵である。
 楠葵(くすのきあおい)は高校三年生の女の子で、この学校の生徒会長である。
 身長百七十二センチ。
 紺色がかった黒髪のロングでストレート。
 前髪は眉でキッチリと切りそろえられている。
 いわゆる姫カットである。
 大きいのは身長だけではなく胸もなかなか大きい。
 推定Fカップはあるだろう。
 アイドルにも負けない容姿に勉強も運動もできるらしい。
 まさにパーフェクト生徒会長である。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好感度MAXから始まるラブコメ

黒姫百合
恋愛
「……キスしちゃったね」 男の娘の武田早苗と女の子の神崎茜は家が隣同士の幼馴染だ。 二人はお互いのことが好きだったがその好き幼馴染の『好き』だと思い、恋愛の意味の『好き』とは自覚していなかった。 あまりにも近くにいすぎたからこそすれ違う二人。 これは甘すぎるほど甘い二人の恋物語。

柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合
恋愛
「何度も言うが私は青春が嫌いだ」 高校一年生の男の娘、柊瑞希は青春が大嫌いだ。 理由はそんな安っぽい言葉で自分の人生や苦悩を語ってほしくないからである、 青春なんていらない。 瑞希はそう思っていた。 部活も時間の無駄だと思った瑞希は帰宅部にしようとするものの、この学校には帰宅部はなく瑞希はどこかの部活に入るように先生に言われる。 それと同じタイミングで瑞希と同様部活は時間の無駄だと考える少女が先生と言い争っていた。 その後、瑞希は部活をしない部活を創立し、二人の女子と交流を持つようになり……。 ひねくれ男の娘が少しずつ大切なものを知っていく物語が今、始まる。

完結【R―18】様々な情事 短編集

秋刀魚妹子
恋愛
 本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。  タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。  好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。  基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。  同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。  ※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。  ※ 更新は不定期です。  それでは、楽しんで頂けたら幸いです。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ウザい先輩と可愛げのない後輩

黒姫百合
恋愛
「本当に君は可愛げのない後輩だな」 高校一年生の春、北野真希(きたのまき)は高校三年生の鈴木紗那(すずきさな)に絡まれる。 紗那は真希と仲良くなりたいと思うものの、他人に興味がない真希は紗那をウザがる。 でも何度も話しかけられるたびに真希の方も無視するよりも適当に相手にする方が、時間を浪費しなくて済むことに気づき、少しずつ紗那との交流が増えていく。 そんなある日、紗那とキスをしてしまい……。 ウザイ先輩と可愛げのない後輩が紡ぐ、ラブコメが今、始まる。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

処理中です...